第2話で“逃げる理由”を見つけたふたりは、第3話で“守る対象”と出会います。

結以(ハチ)と大介(リンダ)、そして4歳の星。
この小さな三人組が、世間の懸賞金サイトという“見えない檻”に囲まれながら、家族のふりをし、家族の作法を学んでいく——。
「逃げる」とは、愛する手順を覚えること。第3話は、逃亡の中で生まれた“愛の定義”を問い直す回でした。
ESCAPE3話のあらすじ&ネタバレ

第3話は、“にわか家族”になったハチ(結以)・リンダ(大介)・星の三人が、追われる側から狩られる側へ一気に転落していく回。
父・慶志が懸賞金サイトを開設し、世間を“捜査員”化していくことで、二人の逃避行は「逃げ道を選ぶ物語」から「正体を問われ続ける物語」へ加速します。以下、主要ラインを順にまとめます。
母代わりだった晶との決別、そして“星”を連れ出す必然
結以は、母のように慕ってきた元家政婦・晶に裏切られた現実を直視します。
晶はお金のために結以を八神家へ“売る”計算をしており、さらに4歳の息子・星を放置していた。
この二重の傷に、結以は星を置いていけないと決意。ハチとリンダは星を連れて逃げる“家族ごっこ”を始めます。ここで物語は、「誘拐犯と人質」から「子どもを間に置く仮初めの家族」へと関係の名を塗り替えていくのです。
1億円の懸賞金サイトと#八神結以を探せ——“日本中が敵”になる
父・慶志は警察に断りもなく「八神結以を探しています」というサイトを立ち上げ、情報提供者に最大1億円を支払うと発表。
SNSではハッシュタグ「#八神結以を探せ」が瞬く間に拡散し、インフルエンサーたちまでが目撃情報を募り始めます。懸賞金という制度のスイッチひとつで、一般人が“追う側”に変わる怖さがぞっとするほどのリアリティで描かれました。
素顔で外食という“甘さ”と、スマホに届く“現実”
事の重大さをまだ知らないハチとリンダは、素顔のまま飲食店で作戦会議をするという無防備さ。
ところがリンダのスマホに“ある人物”から捜索サイトの情報が届き、自分たちに懸賞金が懸けられている事実を知ります。ここで二人はようやく「逃げ切れない」現実を認め、人目を避けるルートに舵を切る——行動の質が入れ替わる転回点でした。
万代×晶——寝顔写真と“現金の匂い”/警察線への情報流入
一方、目付け役の万代は宇都宮にまで足を運び、晶からリンダの特徴や“リンダ”という呼称を吸い上げ、さらには寝顔写真までも確保。
晶が「見つかったらお金を…」と平然とねだる場面に、関係の汚れと利害の生々しさが滲みます。
得た情報は即座に警察へ。ハチとリンダは“家族の敵”だけでなく、“社会システム”そのものにも包囲されていくのです。
キッズスペースと“捨てられる”という言葉——星の心に火傷を残す
逃避の途中、星が遊ぶキッズスペースで、二人は「星を連れて逃げるのは無理かもしれない」という現実を吐露します。星はその言葉の“刃”を拾い、「邪魔なら捨てられる」と思い込んで姿を消す。
ネグレクトの傷が反応してしまうトラウマの再演でした。公園で見つかった星をリンダが抱きしめ、「生き延びろ」と声をかける場面は、彼にとっての赦しであり、ハチとリンダにとっても自分たちがまだ“人間”である証となります。
“ヤバいヤツ”に賭ける——ガン登場の衝撃
日本中を敵に回した二人は、リンダが過去に“逮捕のきっかけ”を作られた因縁の人物へSOSを送る決断をします。
登場したのは裏社会に通じるガン。小柄ながら空気を一変させる圧を持つ人物です。三人をキッチンカーに匿う一方で、ガンは「ガキは置いていけ」と冷酷な線引きを突きつける。ここで二人は、逃げ延びるか、人間でいるかの究極を迫られるのです。
“預ける”という選択——未来へ手紙を託す
星を置いていけないハチに対し、リンダは信頼する少年課の小宮山に星を託す案を示します。
公園での別れ、手紙、抱きつく星、約束の言葉。「逃げること」と「守ること」は両立しない現実の中で、二人は“親のふり”ではなく“大人の責任”を選び取る。ここが第3話のエモーショナルな頂点でした。
視聴トピック——サプライズの端役も物語を押し出す
SNSでは、志田未来の強烈な存在感に加え、内博貴のドラマ出演(第3・4話)にも話題が集まりました。
彼らの“点”の登場が、ハチとリンダの“線”の逃避行に横風を入れる構図が印象的です。追う側と逃げる側の役者が増えるほど、二人の選択は厳しく、そして美しくなっていく——第3話はその緊張と優しさのバランスが際立つ回でした。
ESCAPE3話の感想&考察

第3話は、逃げるふたりが“家族のふり”をしながら、家族の作法をひとつずつ覚えていく回でした。
甘いピント合わせのあとに、現実のピントがキリッと合う。優しいのに痛い、痛いのに優しい。そんな夜の積み重ねが、二人の心に形をつくっていくのを、私はずっと見ていたいと思いました。
「懸賞金」というスイッチが暴いたもの
慶志の懸賞金サイトは、制度で人を動かすデバイスでした。
1億円という額面は、倫理よりも先に行動を点火する。ハチを見つけたい“父の愛”は、結果として娘を社会の的に晒す矛盾にすり替わっていく。この構造が怖いのは、誰もが“正義”のつもりで動けてしまうこと。
ハチとリンダが敵に回しているのは、個人ではなく社会の熱狂なのだと、あの一文が教えてくれます。
星の涙腺は“言葉の刃”で開く——捨てられる想像力
キッズスペースから公園への流れは、トラウマが言葉を誤読する瞬間の描写として見事でした。
“捨てる”という軽い単語が、星の心では生存の警報として鳴り響く。ネグレクトの子どもは、いつも“次に捨てられる可能性”を計算してしまう。だから、抱きしめる腕の強さや声の温度が必要になる。
リンダの「生き延びろ」という祈りは、逃げる大人の言い訳ではなく、残る子どもの背中を押す責任に変わって聞こえました。
ガンの存在意義——“線を引く人”の必要性
志田未来演じるガンは、道徳の外から線を引く役として現れます。
彼女の「ガキは置いていけ」は冷酷だけど、だからこそ二人の覚悟の輪郭が浮かぶ。やさしいだけの世界では、選べないことがある。誰かが無慈悲に線を引くから、残る者は自分の線を決められる。
第3話のガンは、二人の“人間性を測る物差し”でした。敵でも味方でもない第三項としての立ち方が、物語をさらに刺激的にしています。
ハチの“触れたときに視えるもの”——「さとり」という仮説
オープニングから一貫して示唆されてきた、触れたときに“嘘”や感情が色として視えるハチの能力。
次回情報では、八神家に伝わる特殊能力“さとり”というワードまで浮上します。もしそれが事実なら、能力の有無が人間関係の距離を決めてきた過去の孤独も説明がつく。
彼女がリンダと一緒にいられるのは、彼が“嘘をつかない男”だから。能力は超常の飾りではなく、彼女の生存戦略の副作用に過ぎないのかもしれません。
「預ける」というケア——非同居の親性
星を小宮山に託す選択は、同居の継続=親の証明という古い殻を割りました。大人が守るべきは“自分が一緒にいること”ではなく、“子どもが守られる環境”そのもの。
親性は形ではなく、手順で守れる。手紙、約束、抱擁──最後の手順が美しく描かれたから、別れの画に希望が宿る。これは逃亡劇のスリルを超えて、家族劇の核心に踏み込んだ場面でした。
万代と晶——“お金の臭い”が人を鈍らせる
万代の合理、晶の打算。二人の女がそれぞれの“正しさ”で動くことで、ハチとリンダの逃げ道は塞がれていきます。晶の寝顔写真に潜む悪意を“証拠”という名で正当化する冷たさ。
ここに、情報の所有=力という現代の暴力が見える。第3話は、悪意よりも鈍さが人を傷つけるのだと静かに告げていました。
サプライズの効用——“点”が“線”を変える
第3・4話にわたる内博貴の参加は、過去と現在の“点”をつなぐサプライズでした。
彼の一挙手が、SNSの熱量と物語の密度を同時に上げていく。外から入ってくる“他者の時間”が、ハチとリンダの“走る時間”に圧をかけ、選択の速度を早めていく。逃亡劇は人数が増えるほど、誰の時間を守るかの物語になるのだと痛感します。
まとめ——「逃げる」は、愛の言い換え
第3話の好きなところは、“逃げること”が“愛すること”の別名に変わった瞬間がいくつもあったこと。逃げるからこそ、守る順番を決める。手放すからこそ、届けたい言葉が生まれる。ガンの線、慶志のサイト、万代の報告、晶の打算──すべてが二人に“人間でいる勇気”を迫った夜でした。
来週、二人はさらに誰かの秘密に手を伸ばすらしい。逃げ道は狭くなるのに、心の置き場所は広がっていく。ハチとリンダの家族ごっこが、いつか“家族”になる日を、私はもう少し信じてみたいと思います。
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