別々に暮らし始めてからの方が、かえって相手の存在が大きくなる。
第10話は、そんな矛盾を抱えたまま進んでいく夜から始まります。
第10話「最後の恋」は、恋が始まる回ではありません。
夢と結婚という“未来の選択肢”が同時に差し出され、もう誤魔化せなくなった気持ちに、ふたりが静かに観念していく回です。
言葉にできなかった想いが、行動としてこぼれ落ちる瞬間までを、あらすじとネタバレを交えて追っていきます。
ドラマ「ロングバケーション」10話のあらすじ&ネタバレ

第10話のタイトルは「最後の恋」(1996年6月17日放送)。物語としては“恋が始まる回”というより、“逃げてた気持ちに観念する回”です。
瀬名(木村拓哉)はコンクール予選へ、南(山口智子)は杉崎(豊原功補)からのプロポーズへ。それぞれの「未来」が、同時に押し寄せてきます。
それぞれの夜、やるせなさだけが残る
冒頭は、どこか胸の奥がざわつくような“同時進行の孤独”から始まります。杉崎に送ってもらった南。
クラブ「テアトロン」には真二(竹野内豊)と“るう”(りょう)。そして瀬名のマンションを訪れる涼子(松たか子)。みんな、誰かと一緒にいるはずなのに、どこか満たされていない。
特に南と瀬名が切ないのは、会えば会ったで、素直になれないところ。別々に暮らし始めたことで“自由”は手に入れたのに、心は逆に不自由になっている感じがするんですよね。そっけない態度で距離を保つくせに、相手の様子を気にしてしまう。たったそれだけの仕草が、もう恋の証拠みたいで。
予選会場へ。南が買ったお守りと、瀬名の背中
この回の南は、カメラに夢中です。中古のカメラを手に入れて、桃子(稲森いずみ)をモデルに撮ってみたり、ファインダー越しに“世界の見え方”を変えようとしている。けれど、どこか必死で、焦っていて――それがまた南らしい。
そして、地味に胸がきゅっとなるのが「お守り」。
南は神社でお守りを買って、コンクール予選会場で瀬名に渡します。口数は少ないのに、行動だけは嘘がつけない。応援してる、気になってる、放っておけない――その全部が、あの小さなお守りに詰まってる気がしました。
ちなみに、予選会場として描かれるホール(「葉山南がコンクールの様子を見に来た会場」)がロケ地情報でも示されています。こういう“現実にある場所”の空気感が、ロンバケの恋をやけに本物に見せるんですよね。
小田島が感じた『誰かのため』—瀬名の演奏が変わった
瀬名の演奏は、前回(9話)までの迷いを抜けて、明らかに“変わって”います。
指導者の小田島(津嘉山正種)も「誰かのために演奏している」と評するほど。要するに、瀬名のピアノに“人の匂い”が戻ってきたんです。
予選当日、南は会場で瀬名の演奏を聴きながら、同居していた日々を思い出します。ふたりの生活って、派手な事件より、くだらない口喧嘩とか、何気ない会話とか、そういう細部が積み重なって“特別”になっていたんだなって。この回の南は、観客席でその事実を突きつけられる。
私はここ、南が泣くシーンじゃないのに泣きそうになるんですよ…。言葉がなくても、「好き」を認める瞬間ってある。瀬名の音が、南の中の“戻りたい時間”を勝手に開けてしまうから。
予選突破、そして二つの告白—ボストンとプロポーズ
後日、瀬名は予選を突破。
おめでとう、なんだけど、この回の恐ろしいところは「おめでとう」の直後に“人生の分岐点”をぶつけてくるところです。瀬名は南に、「最優秀になったらボストンに行く」と告げます。夢が現実になる一歩手前の話で、まぶしいはずなのに、どこか寂しい。
そこへ南も、同じくらい重たい事実を返します。杉崎からプロポーズされた、と。――この「告白の交換」、残酷なくらい対等なんです。瀬名が“未来の夢”を差し出した瞬間、南は“未来の結婚”を差し出す。ふたりとも、相手の反応を見ないふりをしながら、心の奥では致命傷をくらってる。
杉崎は、返事を数日待つと言います。待つ、って優しさにも見えるけど、南にとっては「保留期間」という名の拷問でもある。決めなきゃいけないのに、決められない。決めたら、どちらかが終わるから。
杉崎の『大人の優しさ』と、南の胸に残るモヤモヤ
杉崎は、いわゆる“ちゃんとした大人の男”なんですよね。仕事もできて、押し付けない優しさがあって、しかも誠実。さらに彼には子どもがいることも、南は知っている。状況だけ見たら、南が杉崎に惹かれるのは自然です。
実際、南はプロポーズを受けた後も杉崎と食事したり、出かけたりして距離を縮めていく。でも――そこで南の心にずっと残るのが、瀬名の影。杉崎といても笑えるのに、ふとした瞬間に“物足りなさ”が顔を出す。
ここで桃子が言うんです。カメラに凝る南に対して、「心の中の穴を埋めるためじゃない」と。
桃子、ふわふわしてるのに、こういう時だけ刺さる言葉を投げてくるの反則…。南は趣味に逃げているようで、逃げ切れていない。桃子にはそれが見えちゃう。
そして10話には、南と桃子がドライブして橋に立ち寄る場面も出てきます。恋の話を“真正面から”はしないけど、景色の中で心を整えようとする南の姿が、すごくリアルでした。
真二と涼子の亀裂、そして『捨てられない人』の影
一方で、真二と涼子の関係も雲行きが怪しくなっていきます。
真二は涼子を気遣うことに疲れ始め、るうといる時の“居心地の良さ”に気づきかけている。恋人に必要なのって優しさだけじゃなくて、同じ温度でいられる安心感だったりもするから。
涼子は涼子で、真二の“るうへの態度”を責めてしまう。真二が困るのも分かるけど、涼子の不安も分かる。だって、真二って根本的に「捨てられない」人なんですよね。誰にも嫌われたくないし、誰のことも傷つけたくない。でもその優しさが、結果的に誰かを傷つけてしまう。
さらに、涼子が瀬名のマンションを訪れる描写も入り、恋の矢印が完全に渋滞している感じが増していきます。ロンバケって、“好き”の感情が真っ直ぐじゃないところが、本当に人間くさい。
深夜のモモちゃん、屋上の花火、そして『嘘』
そして、10話のラスト。ここはもう伝説級です。
瀬名が、南が置いていった花火をマンションの屋上でひとりやっている。あの花火って、8話で“ふたりでやるはずだったもの”の残りですよね。つまり、瀬名は“できなかった約束”を、ひとりで片付けてる。胸が痛い。
そこへ、南がモモちゃんの赤い車で現れます。深夜に桃子を呼び出した南は、「先輩が本当に会いたい相手は他にいますから」と言われ、核心を突かれてしまう。逃げ道を塞がれた南が向かった先が、瀬名のもとだった。
南は言います。「瀬名とキスしにきた」。
そして軽くチュッ。……え、そこで終わるの!?っていう空気を一回作ってから、瀬名が「嘘」と言って、花火を背にもう一度キスをする。あの“嘘”の意味が分からなくて、今も語り継がれているの、分かりすぎます。
この「嘘」は“最初の軽いキスが嘘で、本番はこれから”という解釈があると語られていました。
私はこの説明、すごく瀬名らしくて好き。照れ隠しの冗談に見せかけて、実は「もう我慢しない」という宣言みたいにも聞こえるから。
こうして10話は、“恋人になる直前”の一番甘くて危うい地点で終わります。夢(ボストン)と現実(プロポーズ)がぶつかった先に、ふたりはようやく「好き」を行動で認めた――そんな回でした。
ドラマ「ロングバケーション」10話の伏線

10話はラストのキスが強烈すぎて、そこばかりが記憶に残るんですが、実は“最終回へ向けた伏線”がぎゅっと詰まった回でもあります。言葉、選択肢、小道具――全部が次の一手を用意してる感じ。
『ボストン』という未来—夢と恋が同時に動き出す
瀬名が「最優秀になったらボストンへ行く」と口にした瞬間、恋はロマンチックなだけじゃ済まなくなります。
付き合う・付き合わない以前に、“生活が変わる”話だから。夢を叶えることは正しい。でも、正しいことが、必ずしも誰かを幸せにするわけじゃない。この現実味が、最終回の緊張感につながっていきます。
小田島が「誰かのために演奏している」と言ったのも伏線として強いです。瀬名が“誰のために弾くのか”が明確になった時、夢の形も変わってしまうかもしれない。恋が、夢の輪郭を塗り替えていく予感があります。
杉崎のプロポーズ—選ぶのは『安心』か『胸が痛む恋』か
杉崎のプロポーズは、“南の人生をちゃんと未来へ運ぶ選択肢”として提示されます。大人の男の誠実さ、家庭を持つという現実、仕事のパートナーとしての相性。南が30代の女性として“現実を見る目”を持っているからこそ、簡単に蹴れない。
でも南は、瀬名と向き合うことでしか埋まらない感情を抱えている。
杉崎に返事をする=瀬名との可能性を閉じる、という構図ができた時点で、最終回へ向けて「決断のタイムリミット」が鳴り始めています。
カメラとお守り、花火—『思い出』が告白に変わる小道具
10話の小道具って、全部“気持ちの翻訳機”みたいなんです。
- カメラ:南が自分の心から目を逸らすための道具であり、同時に“本当の気持ちを写してしまう”道具。桃子の指摘がそれを暴きます。
- お守り:口ではそっけなくても、瀬名の未来を願ってしまう南の本音。
- 花火:ふたりでできなかった約束=終わったはずの関係。その残り火に南が飛び込むことで、恋が再点火する。
この3つが揃った回だから、ラストのキスは“唐突な爆発”じゃなく、“積み上げの着火”として成立してるんですよね。
真二と涼子のすれ違い—『何も捨てられない』恋の鏡
真二と涼子の問題は、南と瀬名の物語の“鏡”です。真二はるうに対する態度を指摘されて困り、涼子は不安から責めてしまう。ここで描かれるのは「選べない人間の弱さ」。
南もまた、杉崎と瀬名の間で選べずに揺れている。つまり10話は、登場人物全員が「選択」を迫られる回なんです。最終回で誰が何を選ぶのか――その前段として、この回のすれ違いがちゃんと布石になっています。
ドラマ「ロングバケーション」10話の感想&考察

10話を見終わった後、私はしばらく動けませんでした。胸キュンのはずなのに、胸が痛い。
恋って、甘いだけじゃなくて、未来の話を連れてくる。10話はその現実が、いちばんロマンチックな形で突き刺さる回だと思います。
『最後の恋』は、恋の終わりじゃなく『覚悟』の始まり
タイトルが「最後の恋」って、強い言葉ですよね。最終回じゃないのに“最後”。これはたぶん、「もう逃げられない恋」って意味なんだと思います。
南は、モデルとしてのピークや年齢、生活の不安を抱えながら生きている。瀬名は、才能への自信のなさと、夢を叶える怖さを抱えている。そんなふたりが出会ってしまったら、もう“軽い恋”には戻れないんですよ。お互いに人生を背負ってるから、恋が始まる=人生が変わる。
だからこそ、プロポーズとボストンが同時に来る。恋がロマンから現実へ一気に引きずり出される。その瞬間の、瀬名と南の“固まる空気”が、めちゃくちゃリアルで好きでした。
南の『強がり』がほどける瞬間—客席での沈黙
南って、基本ずっと強がってるじゃないですか。冗談で逃げる、怒鳴って誤魔化す、明るく振る舞って場を支配する。あれって、南なりの防御なんだと思うんです。傷つきたくない、置いていかれたくない、見捨てられたくない。
でも10話のコンクール会場では、その武器が使えない。暗い客席で、拍手の音の中で、南はただ瀬名の音を受け取るだけ。そこで初めて、南が“自分の本音を黙って認める”時間が生まれるんですよね。
私はここが、キスより色っぽいと思いました。言葉で盛らない分、感情がそのまま滲むから。南の恋って、いつも声が大きいのに、この回だけ静かで、それが刺さる。
『嘘』の一言が刺さる理由
花火のラスト、瀬名の「嘘」。
この一言が、なぜあんなに胸に残るのか。
「最初の軽いキスが嘘で、本当のキスはこれから」という解釈が語られていました。たしかに瀬名って、照れ屋で不器用で、でも決める時は決める人。だから“冗談の形で本気を出す”の、瀬名らしい。
でも私はもう一段深読みしたくて。
あの「嘘」って、もしかしたら――
- そっけないふりをしていたこと
- 何でもない顔で平気なふりをしていたこと
- 「もう終わった」って、自分に言い聞かせていたこと
その全部が嘘だった、って意味にも聞こえるんです。だって瀬名は、花火を一人でやるくらい、南を引きずっている。南も、プロポーズを抱えながら瀬名のところへ来てしまう。ふたりとも、嘘が下手すぎる。
だからあのキスは、恋の始まりというより、“嘘をやめた瞬間”なんだと思いました。
桃子の『穴』発言が、実は一番ロマンチック
10話の桃子って、地味にMVPだと思うんです。
「心の中の穴を埋めるためじゃない」って、恋愛の核心をさらっと突く。
南は、カメラに逃げてるようで、実は“見てしまってる”。写真って、向き合いたくない現実も写るし、忘れたい感情も残る。つまりカメラは、逃避じゃなくて、むしろ“自分の心を現像する行為”なんですよね。南がカメラに惹かれたのって、もしかしたら、瀬名のことをちゃんと見たい気持ちが先にあったからじゃないかな…って。
桃子の一言で、南はようやく「会いたい人」を認める。恋愛って、相手に告白する前に、自分に告白しなきゃ始まらないんだなって思わされました。
“ロンバケが今も刺さる”のは、恋がきれい事じゃないから
昔のドラマなのに、今見ても全然古く感じないのって、たぶん恋の描き方が誠実だから。キラキラの恋愛じゃなくて、みっともない嫉妬とか、選べない弱さとか、タイミングの悪さとか、そういう“現実の恋”がちゃんと入っている。だから見てる側も、笑いながら苦しくなるんだと思います。
それに『ロングバケーション』は当時「ロンバケ現象」と呼ばれる社会現象になったとも語られていて、恋愛ドラマとしての熱量がそもそも別格。10話の花火シーンが今でも語られるのも、納得しかありません。
10話は、恋が“気持ち”から“人生”へ変わる回。
だから胸キュンなのに、胸が痛い。
でも、その痛さごと抱きしめて、南は瀬名のもとへ行った。
花火の光って、一瞬で消えるのに、目を閉じても残像が残るじゃないですか。10話のラストもまさにそれで。見終わった後もしばらく、心の中で花火が鳴り続ける回でした。
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