シーズン3第3話は、“瞬間移動”という最強クラスの不能犯を真正面から突きつけてくる前編エピソードです。
舞台は長野県・神ヶ内村。
空間にスリットを作り、人や物を移動させる女・スリット美香子が現れ、村は一気に信仰と熱狂に包まれていきます。
土偶を狙う超常の女、群がる村人、裏で蠢くコレクターの欲望。解決は次回に持ち越されるものの、「この不可能犯罪をどう崩すのか?」という宿題だけが重く残る回です。
トリック(シーズン3)3話のあらすじ&ネタバレ

第3話は、episode2「不可能犯罪の謎 ~瞬間移動の女~」。
舞台は長野県の“神ヶ内村(かみがないむら)”。その名の通り(?)村の男たちは、年齢に関係なく薄毛を気にして育毛ブラシをトントン叩き、村全体がどこか変なテンションで統一されている。
そんな土地に、空間を裂いて人や物を瞬間移動させる女――“スリット美香子”が現れたところから、今回の事件は始まる。
いきなり詐欺開幕、そして矢部に追われる奈緒子
オープニングから奈緒子は相変わらず金欠で、街頭で怪しすぎる商売に手を出す。
売っているのは「トレビの水」。値段は1万円。さらに「この水と布があれば、コインを無限に取り出せる=無限の富が得られる」と、いかにも“奈緒子らしい”実演付きで押し切ろうとする。
ところが、相手は大人ではなく、やたら賢くて生意気な小学生たち。
彼らは「先に出してから払う」と主導権を握り、瓶と布を持って集団で逃走。詐欺に失敗して追い剥ぎに遭う地獄絵図が、あまりに奈緒子で笑ってしまう。
そこへタイミング最悪で矢部警部補が登場。「この詐欺オンナ!」とお決まりの追跡が始まり、奈緒子は命がけの逃走へ。逃げる奈緒子を助ける形で現れるのが上田教授だ。上田の“恩着せがましい救助”により、奈緒子は事件の現場へ半ば強制的に合流することになる。
神ヶ内村へ:土偶を守れという依頼
今回、上田が呼ばれた理由は「土偶を守ってほしい」という、オカルト回なのに妙に“文化財警備”っぽい依頼。
神ヶ内村の博物館の学芸員・芥川は、村に現れた“スリット美香子”が、遺跡の出土品である貴重な土偶を狙っていると訴える。
しかも彼女は、盗む方法を“瞬間移動”だと言い張り、通常の警備や警察の常識が通用しない(=不能犯)かもしれない、と。
ターゲットは国宝クラスの至宝とされる「難玉弐高式土偶(なんぎょく にこうしき どぐう)」――通称が“南極2号式土偶”という、ネーミングからしてTRICKらしい一品だ。
芥川は上田に「美香子に“スリット”される前に守ってくれ」と頼み込み、上田は奈緒子を連れて村へ向かう。
スリット美香子登場:「裂けて!」で空間が割れる
神ヶ内村に着くと、事件の中心にいるスリット美香子が姿を現す。
彼女は“空間にスリット(裂け目)を作る”ことで、物体や人間を移動させる能力を持つと主張する。村人たちは彼女を熱狂的に迎え、まるで救世主か女神のように崇める空気が出来上がっている。
そして、村が彼女を信じる根拠がもうひとつある。昔この村には、同じような力を持っていた伝説の娘“ミカリ”がいたという言い伝えがあり、美香子は「ミカリの生まれ変わりなのでは?」と囁かれているのだ。TRICKの“村=共同体=信仰圧”が、今回も最初からフルスロットルで効いてくる。
瞬間移動の実演:上田が理屈を握り直すまでの揺れ
奈緒子は早い段階で「手品でしょ」と言い切ろうとするが、周囲はまったく聞く耳を持たない。むしろ、村人たちの「見たいものだけ見る」空気が強すぎて、奈緒子の指摘は“野暮”として押しつぶされる。
美香子の実演は、ただの“箱から出した”では終わらせないのがポイントだ。上田が自分のコインを箱に入れて封印したはずなのに、それが水槽から出てくる。
しかも合図の「裂けて!」とともに、水面に赤い筋=スリットが走る演出までついてくる。手品の一瞬に、オカルトの“絵”を被せてくるから、疑う側(上田)も一瞬だけ心がズレる。
さらに美香子は、村の外から来た上田と奈緒子を“呼び出す”ように対峙し、彼らの前でも次々と「瞬間移動」を見せていく。
夜の旅館の外で、距離や視線の不意を突くように現れたり、古文書の文字が消えたり移ったりするように見えたり――視覚情報が信用できない状態を積み上げ、上田の“理屈で立つ足場”をじわじわ崩す。
奈緒子側も黙っていない。美香子のことをわざと(なのか本気なのか)呼び間違え、「スリット美香子」を「スキャット美香子」と呼んでキレられる、という“緊張を笑いで中和する”やりとりが繰り返される。恐さの前に笑いを差し込み、視聴者の呼吸をコントロールするのはTRICKの得意技だ。
不穏な影:土偶を狙うのは“美香子だけ”なのか?
村の空気が美香子に支配されていく一方で、上田と奈緒子の周辺には、別の不穏も混じり始める。彼らが泊まる旅館には、金庫を持ち込み、室内でもサングラスを外さない怪しい男・三沢が同宿している。
コレクターを名乗り、明らかに土偶を狙っている匂いが濃い。つまり今回の争奪戦は「超常現象vs科学」だけではなく、「超常現象を利用したい者たちの欲望」も同じ土俵に上がってくる。
そして村に呼ばれたのは上田だけではない。矢部も事件の警備側として関わることになり(なのに相変わらずマイペースで、部下をキャディ代わりにしてゴルフをする)、緊張と脱力の振り幅がさらに極端になっていく。
土偶強奪予告:この回の“決着”は次回へ持ち越される
美香子は最終的に、「土偶を博物館から奪う」と堂々宣言する。しかも方法は“スリット=瞬間移動”。鍵も警備も意味がないと言わんばかりの挑発だ。奈緒子は「そんなのトリックだ」と怒り、上田は「ならば、論理で破る」と腹を括る。
第3話のラストは、事件が“解決”するというより、むしろ「この不能犯をどう崩すのか?」という宿題を視聴者の目の前に置いて終わる。
次回の副題が“解決編”であることからも分かる通り、ここからが本番。美香子の「裂けて!」は、村の信仰も、人間の欲も、上田の理屈も、まとめて引き裂こうとしてくる。
トリック(シーズン3)3話の伏線

第3話は“解決編”へ続く前編なので、伏線がとにかく多い。ここでは「この回の時点で目に入る違和感」「次回で回収されそうな仕掛け」を、できるだけ粒立てて整理しておく(※細かい種明かしは次回で効いてくるタイプ)。
①「神ヶ内村=かみがない」ギャグが、妙にしつこい
村名の語呂に引っ張られて、男性陣が育毛ブラシをトントンしている描写が繰り返される。単なる寒いギャグに見せつつ、“村全体が同じ行動をしている”という不自然さが強調されている。TRICKはこういう「笑いの反復」を、後で“仕掛けの反復”に変換してくることがある。
② 土偶の正式名称が、やたら印象に残る
「難玉弐高式土偶(通称:南極2号式土偶)」という言いにくい名前が、わざわざ記憶に引っ掛かる形で提示される。こういう場合、“モノそのもの”より“呼び名のズレ・聞き間違い・伝言ゲーム”が伏線になりやすい。美香子の「スリット」という単語自体も同じで、言葉が独り歩きして現象を補強する構図が見える。
③ 美香子の瞬間移動は「毎回、見せ方が違う」
箱→水槽、夜道の出現、古文書の文字……と、“瞬間移動”の種類が変化していく。ここが重要で、TRICKは「同じ能力に見せて、実は全部違う手口」という形で崩してくることが多い。見せ方が違う=必要な条件も違うはず、という視点が後々効く。
④ 「赤いスリット」が、現象の核心を匂わせる
水面に走る赤い筋は、能力の“ビジュアル証拠”として提示される。
だが、TRICKは「視覚的に派手なものほど作れる」という逆説が基本。赤い“裂け目”は、超常現象の証明ではなく“見せるための装置”である可能性が高い。
⑤ 三沢(怪しいコレクター)という「別軸の欲望」
金庫持参・サングラス常時・土偶狙い……と、三沢は“いかにも”な怪しさで配置される。こういうキャラは、犯人にも被害者にもなり得るし、「ミスリードの塊」としても使える。重要なのは、美香子の能力が本物かどうか以前に、土偶を狙う動機が村の中にも外にも存在している点。超常現象を起点にしつつ、事件が“人間の取り合い”へ滑っていく匂いがある。
⑥ 矢部の“目撃”が、軽く流される不気味さ
矢部が村でゴルフをしている最中、林の古井戸付近で「死体のようなものが裂け目へ引きずり込まれる」場面を目撃する(しかも矢部はその後もゴルフを続ける)。
この異常さはギャグで薄められているが、伏線としてはかなり強い。“死体”が絡むと、瞬間移動は手品から一気に犯罪へ転じる。ここが次回の緊張を引き上げる導火線になっている。
⑦ 芥川が「守りたい理由」を語るほど、逆に怪しい
学芸員・芥川は土偶を守る側として上田を呼ぶが、土偶の価値や危機感を繰り返し強調する。
TRICKでは「守る側の語り」が過剰な時ほど、“守る理由のズレ”が後で刺さることがある。善意の顔をした利害、というテーマに接続しやすい。
⑧ ミカリ伝説が“村の伝承”に留まらない
美香子は「伝説の娘・ミカリの生まれ変わり?」と囁かれ、村の空気が一気に宗教化する。ここで重要なのは、ミカリが“物語上の鍵”として提示されていること。土偶が遺跡の出土品である以上、ミカリ伝説は「超常現象の飾り」ではなく、「村の過去(恨み・秘密)」へ繋がる縦糸になる可能性が高い。
トリック(シーズン3)3話の感想&考察

第3話の面白さは、単なる“手品回”ではなく、「不能犯」という言葉で視聴者の想像力を焚きつけ、なおかつ村社会の集団心理を最大火力でぶつけてくるところにある。
ここから先の“解決編”を見たくてたまらなくなる、前編として理想的な煽り方だった。
スリット美香子は「怖いのに笑える」最適解ゲスト
美香子のキャラクター造形がとにかく強い。口癖の「裂けて!」、空間を切る身振り、そして“自分の能力を見せることに快感を覚えている”ようなテンション。
恐怖の演技なのに、どこかコミカルで、視聴者の脳内にフレーズだけ残していくタイプの怪物だ。口コミでも「『裂けてぇ〜』が頭から離れない」みたいな反応が出やすいのが、この回の強さだと思う。
TRICKのゲストは「能力者っぽい」のに「人間臭い」ことが多いけれど、美香子はその両方を極端に振ってくる。能力者としての“ショー”をやりながら、同時に復讐や欲望の匂いも漂わせる。まだ前編なのに、「この人は笑ってるけど、たぶん笑い事じゃない」空気が出ていて、上田の理屈が一瞬揺らぐのも納得できる。
「本物かどうか」より「信じさせる仕組み」が描かれている
今回の前編で印象的なのは、奈緒子が早い段階で“トリックだ”と言っているのに、まったく届かないこと。
美香子の現象がすごいからというより、村の側が「ミカリの生まれ変わり」という物語を先に用意してしまっている。そこに“赤いスリット”の演出が乗ると、もう視覚が証拠になってしまう。
この構造って、TRICKがずっとやってきた「オカルトvs科学」の見せ方の王道で、超常現象そのものより、超常現象を成立させる“権威・信者・場の空気”が怖い。だからこそ、上田が立てるべき仮説は「どうやってやったか」だけじゃなく、「なぜ皆が“見えたこと”にしたがるのか」にも及ぶはずで、前編の時点でその土台がしっかり積まれているのがうまい。
奈緒子と上田の役割分担が、前編だけで完成している
奈緒子は“現場の匂い”を嗅ぐ係で、上田は“論理で言語化する”係。
第3話は解決編じゃないのに、この二人がすでに役割分担できているから、見ていて安心感がある。奈緒子は美香子を「スキャット」と呼んで怒らせるくらい距離を詰め、上田は現象をノートに落とし込みながら、プライド込みで勝負に乗る。
しかも、この回は“上田が少しだけ心を揺さぶられる”瞬間が散りばめられていて、そこに奈緒子が突っ込みを入れる。恋愛的な進展をさせないまま、関係性の温度だけ上げる。TRICKが長く続く理由の一つが、こういう「進まないのに近づく」距離感の描写なんだよな、と改めて思わされた。
伏線の置き方が“前編の理想形”:見返したくなる設計
第3話は、土偶・ミカリ伝説・三沢・矢部の目撃・美香子の実演の種類…と、後で回収できる“フック”が多い。
それでいて、見ている最中は「情報が多い」と感じない。ギャグ(薄毛の村、奈緒子の詐欺、矢部のゴルフ)が“情報の緩衝材”になっていて、笑っている間に伏線が入る。これはシリーズ後半に行くほど洗練されるTRICKの強みだと思う。
そして何より、土偶強奪予告の段階で“不能犯”の入口に立たされるのが良い。
視聴者はすでに「どうせトリック」と思っているのに、同時に「でもあの赤い裂け目は何?」とも思ってしまう。疑っているのに引っ張られる。この矛盾した感情を作れた時点で、前編として勝ちだ。
次回への期待:この“裂け目”は、事件だけじゃなく人間も割く
第3話を見終わった後、頭に残るのは能力の真偽というより、「誰が何を欲しがっているのか」だ。
土偶を守りたい芥川、奪いたい美香子、同じく狙っていそうな三沢、事件に巻き込まれる奈緒子、そして論理で勝ちたい上田。全員の欲望が一点に集まり、そこに“スリット=裂け目”という象徴が乗る。
次回、裂けるのは空間だけじゃなく、人間関係や信仰、そして嘘の膜そのものだろう――そう予感させる締め方が、めちゃくちゃ上手かった。
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