シーズン3第2話は、「言霊で人を操る男」というオカルトを完全に解体しながら、それ以上に救いのない現実を突きつけてくる解決編です。
芝川玄奘の予言は能力ではなく、“当てるための段取り”。毒、匂い、視覚トリック、そして村全体を巻き込んだ共犯構造によって、言葉は現実にされていきます。
トリックは暴かれても、失われた命は戻らない。笑いと不穏が同時に残る、TRICKらしい重たい決着回です。
※ここから先は、シーズン3第2話(「言霊で人を操る男…解決編」)の結末まで触れるネタバレ記事です。未視聴の方はご注意ください。
トリック(シーズン3)2話のあらすじ&ネタバレ

今回の舞台は、長野県の山奥・蛾眉村(がびむら)。
“言葉”で人の運命を決める男・芝川玄奘(しばかわ げんじょう)と、その側近・鬼頭理三(きとう りぞう)が居座り、開発を妨害している――という構図から始まった前編の続きが、ここで一気に「解体」されていきます。
前回の引きから:黄色いカードを“取らされる”二人
前編ラスト、奈緒子と上田は“ゲーム”めいた儀式に巻き込まれます。信者たちが取り囲む中、玄奘が言い放つ「お前たちは黄色いカードを取る」。
反発しながらも、奈緒子はまんまと“黄色いカード”を手にしてしまい、周囲は「玄奘様の言葉が当たった」と沸騰。上田も、科学者として否定し続けてきた「超常」を、いま目の前で“証明された”形にされてしまう。
ここが嫌らしいのは、当たった/外れたの話じゃない点です。
儀式の空気、信者の目、逃げ場のなさ、そして「自分の手で選んだ」と錯覚させる構図。言葉が先にあり、行動が後から従ってくる。玄奘の「言霊」は、最初からその順番で組まれている。
奈緒子と上田は信者たちを振り切り、森へ逃走。追いすがる足音が遠ざかると、奈緒子はちゃっかりカードの中身を確認してしまう。――そこに入っていたのは、妙に現実的な“景品”。
この時点で、視聴者は薄々こう思うわけです。「予言じゃなくて、仕掛けじゃない?」と。
「このままじゃ井上兄弟が危ない」:逃げ切れない上田の“責任”
逃げ切って終わり、にはならないのがTRICK。
今回、玄奘の言葉で最も危険なのが、井上兄弟に向けられた予言です。
- 兄・井上真一(しんいち)には「お前は弟を殺す」
- 弟・井上真二(しんじ)は体が弱く、兄に依存している
この兄弟の関係が、すでに“言霊の餌”になっている。だから上田は、逃げながらも腹の底では分かってしまう。「ここで退いたら、実害が出る」と。
そしてもう一つ、上田に火をつける要素がある。
玄奘の側近・鬼頭が、上田の“著作の熱狂的ファン”であること。鬼頭は「始めに、言葉あり」と前口上を述べてから玄奘の予言を引き出す。まるで“宗教の司会”のように。
学者として言葉を扱ってきた上田ほど、「言葉が人を縛る装置にされている」状況が許せない。
翌朝、上田と奈緒子は再び蛾眉村へ向かう。対決のために。――しかし、ここからがTRICKらしい。勇ましく殴り込むのではなく、村の空気にもう一度どっぷり沈められ、さらに状況が悪化していくのです。
村へ戻る二人:信者の視線が“物語”を固定する
蛾眉村に戻ると、信者たちの目がまず怖い。
彼らは玄奘を「信じている」のではなく、「当てさせたい」側に回っている。予言が当たれば当たるほど、自分たちの選択(信仰)が正しかったと証明されるから。
この共同体の熱が、予言を現実に引きずり下ろす。
TRICKはいつも、オカルトを否定しながら、同時に「人間の弱さはホラーだ」と突きつけてくる。そのホラーの中心が今回は“言葉”です。
上田は玄奘に食らいつくが、玄奘は余裕の笑みで「言葉は世界を決める」とでも言うように、淡々と“御言葉”を積み上げる。鬼頭はそのたび、儀式の進行役として場を整え、信者は合唱する。
反論の余地が削られ、逃げ道が狭くなる。まさに“言霊の檻”。
奈緒子が森で迷う:母・里見と「神の象の像」
村へ戻る途中、奈緒子は上田とはぐれてしまう。
TRICKの“奈緒子あるある”――転ぶ、落ちる、迷う。けれど今回は笑いだけでは終わらない。森の一角で奈緒子が見つけるのは、母・山田里見の姿だ。
里見がなぜこんな場所に?
その答えが、ひどくTRICK的で可笑しい。里見もまた「神の象の像」を探しているというのだ。金の匂いに敏い里見が、何かの“お宝話”に乗っている。奈緒子は呆れつつも、里見の言葉から「この村の異様さ」が単なる事件以上の“縦糸”を帯びていることを察していく。
この「神の象の像」パートは、事件解決に直結するというより、シリーズを貫く“別レーン”の導線として配置されているのがポイント。
奈緒子が「今ここで起きていること」と「自分の背景」を同時に匂わされる瞬間であり、笑いの皮をかぶった不穏さが残る。
「自殺する」と言われた男:相沢即史の死と“密室”の演出
一方、村ではさらに最悪のニュースが広がる。
開発会社から送り込まれた相沢即史(あいざわ そくふみ)が、死体となって発見されるのだ。玄奘に「お前は自殺する」と宣告され、助けを求めていた依頼人が、まるで予言どおりに。
村人は「ほら当たった」と囁き、信者は勝利の顔をする。
ここで嫌なのは、死そのものより、「死を意味づける語り」が先にあること。
相沢は“自殺したことにされる”。「そういう物語」へ押し込まれる。
後から明かされるのは、相沢がすでに“毒”で死ぬよう仕込まれていた可能性だ。さらに、相沢の周囲には「柴咲香(しばさきこう)」という匂いがあり、それが幻覚作用を含む――という説明が入る。
つまり、相沢の死は「言霊が人を殺した」のではなく、毒と心理操作と共同体の演出が“自殺”という形に整えた。
それでも、村の空気は変わらない。
「玄奘の言葉が当たった」という結論だけが、最初から決まっている。
井上兄弟の予言が動き出す:弟・真二の死と、兄・真一の崩壊
そして最も恐れていた事態が起きる。
井上真二が遺体で見つかる。兄・真一は呆然とし、周囲の言葉に追い詰められ、ついには「俺がやった」と口にしてしまう。
ここがTRICKの恐ろしさで、兄が“犯人”だから死んだ、ではない。
兄は弟思いで、過去に弟を守ろうと暴力に出たこともある。そんな背景を知っている村人、あるいは玄奘側は、「真一なら、やりかねない」と周囲に思わせる材料を最初から持っている。
真一自身も、「弟を守りたい」という愛情の裏側にある、怒りや焦り、疲労や罪悪感を抱えている。そこへ予言が刺さる。結果、真一は“自分が殺した”という方向へ思考が収束していく。
後から種明かしされるのは、真二を実際に殺害したのは兄ではなく村側(村長格の人物)だった、ということ。兄が犯人に“なる”ためのシナリオがあったのだ。
「黒い鳥居を潜り死ぬ」:逃亡者を“選ばせる”誘導の手口
さらに玄奘は、追い詰められた真一に別の言葉を与える。「お前は黒い鳥居を潜り、死ぬ」。真一は恐怖で逃げ出す。追う警察、追う村人、追う“言葉”。
真一は死を避けようと、白い鳥居を選ぼうとする。
でも、ここでも「選択」が罠だ。鳥居の色は、樹液と“ガッツ石まっ虫”で見え方を操作されていた。甘いもの好きの虫が樹液に集まり、鳥居は本来の色が分かりにくくなり、真一は意図通りの方向へ誘導されてしまう。
逃げた先に待っているのは、崖。
予言は“当たる”。いや、当てられる。
ここでの救いのなさは、真一が“悪人”ではないことです。
弟を守りたい兄が、言葉に追い詰められ、共同体に押され、最後は「逃げた先の風景」まで用意されたところへ落ちていく。
TRICKはこの冷酷さを、あえて乾いたテンポで描く。視聴者は笑う余裕を奪われたまま、次の場面へ連れて行かれる。
奈緒子と上田も標的に:「火の中で死になさい」へ繋がる局面
村は勢いづき、玄奘は“勝ち筋”を確信する。
そして、上田と奈緒子にも「死」を宣告する側へ舵を切る。2人は捕らえられ、縛られ、火を放たれる場面へ――。玄奘側は“言霊で縛られている”状態の2人を、文字通り「燃える運命」に寄せていく。
この場面がTRICKの妙で、恐怖の中にくだらなさが混ざる。
たとえば「休憩」と言い出すような、あの軽薄さ。死の直前に挟まる“ゆるい言葉”が、逆に不気味さを増幅する。宗教儀式の残酷さって、時々こういう温度でやってくるから怖い。
種明かし:言霊の正体は「言葉」ではなく「段取り」と「共犯」
ここから上田の反撃が始まる。
結論から言うと、玄奘の「言霊」は超能力ではない。むしろ、超能力よりも汚い現実の集積だ。
上田が解体していく要点は大きく4つ。
1)“当たる言葉”の前に、情報が集められている
玄奘は元国語教師らしく、言葉の選び方がうまい。相手の恐怖や弱点を引き出す言い回しで、心の中に「そうなるかもしれない」を植え付ける。
さらに鬼頭を含む周辺が情報を拾い、言葉が刺さるように整える。
2)毒・匂い・暗示で、判断力を削る
相沢の死は、毒で“死ぬ未来”を先に仕込んだ上で、匂い(柴咲香)や集団の掛け声で「自殺」に見える物語を完成させる。
言葉は引き金、実際の弾は別にある。
3)村人全員が“共犯”になることで、予言は現実化する
一番えげつないのはここ。
村の誰かが「当たった」と言い、みんなが頷く。逃げようとすれば追う。疑えば排除する。
共同体が一つの装置になった瞬間、予言は「未来の説明」ではなく「今から作る予定表」になる。
4)“現象”は物理トリックで作れる
「山よ消えよ」のような超常現象も、実はクレーンで小屋を持ち上げ、窓の向きを変えるだけで成立する。山が消えたのではなく、見せる角度が変わっただけ。
同じように、鳥居の色すら操作できる。
樹液と虫(ガッツ石まっ虫)という馬鹿馬鹿しい小道具を、命取りの誘導に使う。笑えるのに笑えないのは、これが“集団の悪意”と繋がった瞬間に、単なるギャグを越えるからだ。
エピローグ:終わったのに、後味が悪い。だから忘れない
上田の推理で“超常”は崩れ、玄奘の正体は暴かれる。
ただ、事件が解決したところで、死んだ人は戻らない。井上兄弟の悲劇は「トリックでした」で処理できない。相沢も救えない。
TRICKが毎回残す後味――「タネが分かっても救われない」――が、この回は特に強い。
そして奈緒子の足元には、母・里見と「神の象の像」という別の影が残る。
“今回の事件”は終わったのに、奈緒子の縦糸は終わらない。
だから視聴後、妙に胸の奥がざらつく。あの村の湿度は、画面の外にまでまとわりつく。
トリック(シーズン3)2話の伏線

第2話は「解決編」なので、派手に回収される伏線が多い一方で、シリーズ全体へ伸びていく“縦の仕込み”も混ざっています。ここでは「この回で提示される/この回で意味が確定する伏線」を整理します。
伏線1:黄色いカード=“予言”ではなく「小道具」
- 黄色いカードを「取らされる」構図自体が、玄奘の手口(選択の誘導)
- カードの中身が現実的な“景品”であることが、予言のからくりを疑う入口になる
- 奈緒子の金への反応が「餌で釣られる主人公」を再確認させる(=上田との関係性の装置)
“当たった”という事実より、「当たったことにできる」構造が重要だと示す伏線。
伏線2:「柴咲香(しばさきこう)」=判断力を鈍らせる匂い
- 相沢の死が「自殺」と結びつけられる前に、匂い(=感覚)で空気を作っている
- “言葉が効く”状態を作るための下準備がある、という示唆
- 後半の種明かしで、言霊が心理操作+物理トリックの合成だと納得できる布石
伏線3:村人の掛け声=「共犯化」のサイン
- 「自殺しろ」と唱えるような集団の振る舞いは、信仰ではなく“演出の参加”に近い
- 玄奘が一人で超能力を使うのではなく、村全体が装置になっていると分かる
- この“共犯化”が、井上兄弟の悲劇にも繋がる(犯人が誰であれ、村の空気が殺す)
伏線4:鳥居の色と“ガッツ石まっ虫”=選択を奪う仕掛け
- 鳥居が白黒で分かれている時点で「選択ゲーム」が始まっている
- 樹液と虫で視覚情報を汚し、「白を選んだつもり」を崩す=言霊の実現装置
- コメディ小道具(虫・殺虫剤)が、死に直結するほど残酷な装置になり得るというTRICKの思想
伏線5:「山が消える」=“自然現象”に見せた工事トリック
- 開発が絡む事件で、重機(クレーン)が使える状況がそもそも伏線
- “景色”という曖昧なものをトリックにするのがTRICKの上手さ
- ここが回収されることで、玄奘の“奇跡”は物理に落ちる
伏線6:母・里見と「神の象の像」=事件とは別の縦軸
- 奈緒子が森で里見に出会うだけで、物語のレイヤーが変わる
- 「神の象の像」はこの回だけで完結しない匂いが強く、奈緒子の出自やシリーズ終盤の縦糸へ視線を誘導する
- “ギャグの母”が縦糸の当事者でもある、といういつものTRICKらしさ
トリック(シーズン3)2話の感想&考察

解決編なのに、見終わった後が軽くない。
それがこの第2話の強烈さだと思います。笑いは確かにあるのに、笑いの底に「集団の怖さ」が沈んでいて、視聴後もしばらく頭から離れない。
「言葉が人を殺す」のではなく、「言葉が人を殺させる」回
玄奘の言霊は、能力そのものより“運用”が怖い。
「言えば当たる」のではなく、「当てるまでやる」。そのために必要なものは、毒と匂いと段取り、そして“みんなで信じること”。
これ、現代のSNSや炎上にも近い怖さがあります。
誰かが言い切り(予言)を投げ、周りが引用し、空気が固まり、本人が逃げ道を失い、現実が追いつく。
科学vsオカルトの話に見せて、実は「言葉の暴力の構造」を描いている。TRICKが古びない理由の一つは、こういうところにある気がします。
上田が論理で勝つほど、悲劇の回収はできない
上田の推理は痛快です。
小屋が動いた、匂いが仕込まれていた、鳥居の色が操作されていた――全部わかる。わかるのに、井上兄弟の結末は覆らない。
ここがTRICKの美学で、推理ドラマとしては意地悪です。
普通の“名探偵もの”なら、ギリギリで止めたり、救ったりする。
でもTRICKは、救えなかった事実を残し、「超常は嘘だった。でも人間は本物に死ぬ」と突きつける。
だからこそ、奈緒子の表情が刺さる。
彼女はお金に弱くてズルいのに、目の前の人が壊れていくと放っておけない。その矛盾が、主人公の人間味になっている。
井上兄弟の悲劇が示すのは、犯人より「共同体の空気」
真二を殺したのが誰か――という“犯人当て”もある。
でもそれ以上に重要なのは、真一が「自分が殺した」と思い込むところ。ここに言霊の核心がある。
- 兄弟の過去
- 弟への依存
- 兄の疲労と焦り
- 村の視線と噂
- 玄奘の言葉
全部が重なって、真一の中に“物語”が勝手に完成する。
TRICKは「人は嘘に騙される」というより、「人は嘘を完成させてしまう」と描いているように見えます。
それが一番怖い。
ギャグ小道具が、命取りの装置になるブラックさ
ガッツ石まっ虫、殺虫剤「ハネアリイヤーン」、よだれかけ姿の玄奘、鬼頭の儀式口上。
一見ふざけすぎなのに、鳥居の誘導や死の演出に直結する。ギャグがギャグのまま終わらない。
この“笑っていいのか分からない温度”がTRICK3の初手でいきなり来るのは、シリーズの色としても象徴的です。
シーズンが進むほど、作品は「笑い」と「不穏」を同じ画面に置くのが上手くなる。その進化を、第2話ですでに見せつけてくる。
里見と「神の象の像」:事件の外側で動く“奈緒子の縦糸”
今回のもう一つの見どころは、奈緒子が森で里見に会うくだり。
事件と無関係そうで、実はめちゃくちゃ関係ある“気配”最後の余韻が残ります。
里見は基本ギャグ役なのに、奈緒子の秘密や縦糸の匂いが出ると、途端に温度が変わる。
「母親がいるだけで、奈緒子は子どもに戻る」感じもあって、上田との掛け合いとは別の切なさが出るんですよね。
この“奈緒子の背景”が、後のシリーズで効いてくることを知っている人ほど、ここはニヤッとするはず。
見返すならここ:この回の“怖さ”が濃いポイント
- 相沢の死が「自殺」にされるまでの村の空気
- 真一が「俺がやった」と言わされる瞬間の目線の圧
- 鳥居の場面(選択の自由が奪われていく演出)
- 縛られて火を放たれる場面の“ふざけた残酷さ”
TRICKは「トリックが分かったら終わり」じゃなく、分かった後に演出の意味が増える作品です。
この第2話は特に、2周目で怖さが増すタイプ。解体したはずなのに、むしろ現実の方が怖いと気づかされる。
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