『トリック』の“縦軸”を語るうえで、山田奈緒子の父・山田剛三(やまだ ごうぞう)の死は避けて通れません。
「剛三って本当に死んだの?」「誰かに殺されたの?」「黒門島と関係ある?」――シリーズを見進めるほど疑問が増えるのは、作品が意図的に“答えの輪郭だけ”を残しているからです。
ここでは、作中で確定している事実と、作中で強く示唆される“真相”の層を分けて整理しつつ、「生きてる説」「殺された説」がなぜ生まれるのかまで解説します(ネタバレあり)。
結論:山田剛三は生きてる?→“生きていない”が答え

まず、検索で一番多い疑問から
剛三は基本的に“故人”として描かれています。
設定上も、奈緒子が幼い頃に亡くなった父であり、奈緒子自身も長らく「事故死だった」と信じていた人物です。
シーズン1終盤(黒門島編)で“父を名乗る”連絡が入って奈緒子が動揺するのは、まさにその死が彼女にとって未整理の傷だから。実際、終盤の事件では「父の名を語る男から電話が入る」形で奈緒子が揺さぶられていきます。
そして、いわゆる「剛三が現れた/蘇った」ように見える揺さぶりも、物語上は黒門島側の策略として処理されます。
“死者が帰ってきた”のではなく、死者を帰ってきたように見せる。ここが『トリック』らしい第一段階です。
山田剛三とは何者?奈緒子の“原点”を作った天才マジシャン
剛三は、奈緒子の父であり、著名な天才マジシャン。幼い奈緒子に手品を教え、奈緒子の「超常はトリックで説明できる」という根っこの思想にも影響を与えた人物です。
面白いのは、剛三が徹底した合理主義者だったこと。
自称超能力者とテレビで対決するようなタイプで、「超常現象は全部マジックで説明できる」という姿勢を貫いていた――のに、死に際には霊能力者の存在を認める“言葉”を残したとされています。
この矛盾が、後の「剛三の死は事故じゃないのでは?」という疑念の燃料になります。
【確定】死因は“水中脱出トリックの事故(溺死)”として語られる

作中設定として押さえるべき核はここです。
- 剛三は、水中脱出トリック(エスケープ系)の実験・練習中に事故で死亡
- その事故はマスコミにも大きく報じられ、奈緒子も長く「事故」と信じていた
つまり、表面だけ見ると「有名マジシャンが水中脱出に失敗して溺死」という、痛ましい事故。
“誰かが刺した”“撃った”のような分かりやすい殺人ではありません。
けれど『トリック』はここからが本番で、次の層として「事故に見せかけた何か」を匂わせていきます。
【示唆①】「霊能力で剛三は死んだ」――里見が口にする“呪いの結論”
シーズン1最終話側では、上田が里見と会い、里見がこう語ったとされています。
- 奈緒子には霊能力があり、その力で剛三が死んだ
これ、ストレートに読むと「奈緒子が霊能力で父を殺した」になってしまう。
だから視聴者はザワつくし、検索も増える。
ただし重要なのは、『トリック』がこの手の“断言”をするとき、たいていそれは――真実そのものというより、誰かが背負わされた物語上の呪い(思い込み/刷り込み)として機能する点です。
里見の言葉は、奈緒子にとって「自分は父を殺したのかもしれない」という最悪の可能性を現実味として突きつける。
上田にとっては「科学で割り切れない領域」が、最も身近な“相棒”に侵入してくる。
ここで作品は、科学vsオカルトではなく、人間の罪悪感vs答えのなさの勝負に持っていくんですよね。
霊能力者についてはこちら↓

【示唆②】「鍵」の存在が、“事故”を“事件”に変える
剛三の死が「ただの失敗」から「何かされたのでは」に変わる最大のポイントが、いわゆる脱出用の鍵です。
後年の考察・整理では、剛三は水中脱出の際に「隠していたはずの鍵」を見つけられず溺死した、という筋が語られています。さらに、奈緒子が実家で父の手紙を見つけ、その中に“脱出用の鍵”が同封されていた、という流れも紹介されています。
この「鍵」は、トリック的にめちゃくちゃ残酷で、
- 鍵が無い=脱出できない
- でも、鍵が“後から出てくる”=誰かが持っていた/隠していた可能性が生まれる
- その結果、「事故」から「誰かに殺されたのでは?」へ跳ぶ
という、疑念のスイッチになっている。
しかも『トリック』が上手いのは、“誰が鍵を隠したか”を綺麗に確定させないこと。
だから視聴者は延々と考えるし、「奈緒子が子どもの頃に隠した?」「黒門島の人間?」「里見?」と“犯人探し”が始まる。
【示唆③】黒門島の因習と恨みが、剛三の死に“人間の動機”を与える
黒門島編で明かされる大枠は、
- 里見は沖縄の黒門島でシャーマンとして過ごしていたが、剛三と島を抜け出した
- 黒門島側(黒津一族など)が絡み、奈緒子を島へ引き戻そうとする動きが起きる
さらに人物設定の整理では、里見が「夫を殺害した黒津分家一族ら黒門島の人々」に恨みを秘め、復讐の機会を窺っていた、という方向まで踏み込んだ説明もあります。
ここまで来ると、剛三の死は単なる事故じゃなくなる。
「黒門島の因習(共同体の論理)」「奪われたものへの恨み」「外の世界へ逃げた者への制裁」――
そういう人間の動機が、剛三の死にまとわりつく。
つまり、「誰かに殺されたのか?」という問いに対して、作中が最も強く示す答えはこうです。
刺殺や毒殺みたいな“犯罪の形”より、
共同体の恨みが作った“事故に見せかけた死”として語られている。
この“汚さ”が、黒門島編の後味を決定づけています。
じゃあ結局、誰が殺した?――『トリック』が残す“答えの出し方”

ここ、視聴者が一番欲しいところなんですが、『トリック』はあえて言い切りません。
だからこそ、記事としては「確定」と「読み取り」を分けるのが誠実です。
- 確定していること
- 剛三は水中脱出トリック中に死亡(事故として扱われていた)
- 黒門島編で「奈緒子の霊能力が関係した」という語りが出る
- 強く示唆されること
- “鍵”が絡み、誰かの関与が疑われる構造になっている
- 黒門島側の因習・恨みが、剛三の死を「事件」に寄せる
- 作品がわざと残す余白
- 霊能力が本物だったのか?
- 奈緒子は本当に“何かさせられた”のか?
- 里見は復讐のためにどこまで意図的だったのか?
この余白があるから、剛三の死は“過去の出来事”で終わらず、奈緒子の人格とシリーズ全体にずっと影を落とし続けます。
剛三の死がシリーズに残したもの:奈緒子の「暴く動機」が“復讐”と溶け合う
剛三は、奈緒子に「超常を否定する姿勢」を残しました。
でも同時に、黒門島編以降の奈緒子には、理屈では割り切れない“個人的な痛み”が混ざっていく。
だから奈緒子は、ただの正義の探偵じゃない。
インチキ霊能力者を暴くときの彼女は、どこかで「父の意思を継ぐ娘」でもあり、一方で「父を殺したかもしれない娘」でもある。
この二重底が、奈緒子という主人公を“コメディの人”で終わらせず、シリーズを通してちゃんと苦くしてる。
剛三の死は、そのための最強の縦軸なんです。
まとめ:剛三は生きていない。だが“死に方”は、最後まで綺麗に終わらない
- 山田剛三は生きていない(故人)
- 死因は表向き「水中脱出トリックの事故」
- ただし黒門島編で、霊能力・鍵・島の恨みが絡み合い、“事故に見せかけた死”の匂いが濃くなる
- 作品はあえて断言しないことで、奈緒子の罪悪感と物語の余韻を永続させている
もし「剛三の死の真相」を本気で追いたいなら、黒門島編(シーズン1終盤)を“答え探し”ではなく、奈緒子に植え付けられた呪いの構造を見るつもりで見返すと、いちばん刺さります。
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