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原作「雪煙チェイス」のネタバレと結末!真犯人&女神の正体は誰?ドラマとの違いを考察!

原作「雪煙チェイス」のネタバレと結末!真犯人&女神の正体は誰?ドラマとの違いを考察!

雪煙チェイスは、雪山を舞台にした“追われる側”の視点が際立つミステリーです。

物語は、強盗殺人事件の容疑者にされた大学生が、無実を証明するため、たった一人の証人=通称「女神」を探して雪山を奔走するところから始まります。

犯人当てよりも、冤罪がどのように成立してしまうのか、そして視界の悪い状況下で人はどんな判断を下してしまうのか──そこに本作の核心があります

雪煙が舞い、情報がかき消される雪山という環境は、物理的な追跡劇であると同時に、真相そのものが見えなくなる心理的な舞台装置でもあります。

この記事では、原作の立ち位置や読み味を整理したうえで、物語の全体像と重要ポイントを分かりやすく解説していきます。

ドラマ化を前に「原作はどんな話なのか」を把握したい人にも、すでに読了した人の整理にも役立つ内容です。

目次

雪煙チェイスの原作とは?(作品情報・作者・位置づけ)

雪煙チェイスの原作とは?(作品情報・作者・位置づけ)

「雪煙チェイス」は、ドラマ化の話題から逆流入で原作にたどり着く人も多い作品です。

ここではまず、“原作は何か”“シリーズのどこに当たるか”“どんな読み味なのか”を、ネタバレに踏み込む前に整理します。

原作は東野圭吾の“雪山シリーズ”第3作

実業之日本社
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原作は、東野圭吾の長編小説『雪煙チェイス』。いわゆる“雪山シリーズ”の三作目に位置づけられており、前作として『白銀ジャック』『疾風ロンド』がある流れです。

ポイントは「シリーズもの」といっても、ガチガチに続き物というより、雪山(スキー場)という舞台性と、そこに関わる人物の“顔見知り感”が、作品同士をゆるくつないでいるタイプだということ。なので「第3作」と聞くと身構える人もいますが、基本はこの一冊からでも読み始めやすい設計です。

ただし、前作を知っているとニヤッとできる要素があるのも事実で、余裕があれば順番に読むと楽しみが増します

発売日・ページ数・出版社(信頼性の土台)

書誌情報を押さえておくと、記事としての信頼性も高まります。

  • 出版社:実業之日本社
  • 発売日:2016年11月29日
  • 判型/ページ数:文庫・416ページ
  • ISBN:978-4-408-55323-8

また、近年は新装版も刊行されており、こちらも文庫・416ページです。内容に大きな違いはないため、「どの版を買うか」で迷う人は、装丁や流通状況で選んで問題ありません。

どんなジャンル?(ミステリ+チェイス+コメディ寄り)

ジャンル感を一言で言うなら、ミステリ要素を持った追跡劇(チェイス)が主軸です。

物語の核は、「殺人の容疑をかけられた大学生が、アリバイを証明できる“たった一人の人物”=スキー場で出会った女性を探し出し、無実を証明できるのか?」という設定にあります。

つまり、読者が意識すべき軸は大きく2本です。

  • ミステリ軸:なぜ疑われたのか/何が起きたのか
  • チェイス軸:追われながら“証人=鍵となる人物”を探す疾走感

この作品は「名探偵が謎を解く」タイプではなく、「追われる側が必死に状況をひっくり返す」方向に振れているため、推理の快感よりもスピード感と緊張感を楽しむ作品として入るのが正解です。

また、雪山シリーズ全体の特徴として、シリアス一辺倒ではありません。

追う側・追われる側・周囲の人間関係が絡むことで、会話や状況のズレが少しコミカルに転ぶ瞬間もあり、重さと軽さのバランスが取られています。三作目となる本作は、特に“何かを捜す話”として構造が明確で、タイトル通り「チェイス」に重心が置かれています。

ドラマ版との関係|放送情報と「原作ネタバレ需要」が伸びる理由

ここからは、なぜ今「原作ネタバレ」を求める人が増えているのか、という視点です。

ドラマ化によってライト層が一気に流入し、「観る前に結末を把握したい」「犯人だけ先に知りたい」という需要が発生します。特に放送時期が近づくほど、この傾向は強くなります。

ドラマを観る前に原作ネタバレを読むメリット/デメリット

ネタバレを先に入れるかどうかは、完全に好みです。ただ、判断しやすいよう整理しておきます。

メリット

  • プロセスを楽しめる
    チェイス作品は「どう逃げる/どう追い詰める」「どこで手掛かりが転がるか」が面白さの核なので、結末を知っていても鑑賞が“観察”に切り替わり、むしろ濃くなることがあります。
  • 伏線チェックがしやすい
    原作→ドラマの順に触れると、「どこを残し、どこを変えたか」が分かりやすく、比較の楽しみが増します。
  • うっかりネタバレへの耐性がつく
    放送期間中はどうしても断片情報が流れてくるため、先に把握しておくと精神的に楽です。

デメリット

  • サスペンスの初見の快感が薄れる
    「真相が反転する瞬間」を一番楽しみたい人には、ネタバレは不向きです。
  • ドラマ演出の驚きが減る可能性
    映像ならではの見せ方や編集の驚きを、純粋に浴びたい人には向きません。

結局のところ、「結末を当てたい派」か「展開の勢いを浴びたい派」かで決めるのが一番です。

原作通りになりそうな点/変わりそうな点(予想枠)

ここは断定ではなく、公式情報と映像化の一般的傾向からの予想です。

原作通りになりそうな点

  • 殺人容疑をかけられた大学生が、アリバイの証人を探すために日本最大級のスキー場へ向かうという骨格
  • 所轄刑事に加え、捜査本部が絡む三つ巴の構図

このあたりは物語の軸として崩しにくい部分です。

変わりそうな点

  • 登場人物やサブエピソードの圧縮・統合
    前後編2本に収める以上、原作の寄り道的エピソードは整理される可能性があります。
  • クライマックスの見せ方
    小説では内面描写で積める部分を、ドラマでは視覚的な演出に置き換える必要があるため、同じ結末でも提示順や告白の形が変わる可能性があります。
  • 雪山ならではの映像演出への比重
    ドラマでは、原作以上に雪山のスケール感やスピード感が前面に出る構成になると考えられます。

【ネタバレ】原作あらすじ(結末まで)※時系列で分解

雪煙チェイスの原作あらすじ(結末まで)※時系列で分解

ここから先は、東野圭吾『雪煙チェイス』の結末まで踏み込んだネタバレです。

「原作の全体像を時系列で一気に把握したい」「“女神”探しがどこでどう事件解決に接続するのかを整理したい」人向けに、出来事を分解して追っていきます。

① 事件発生|主人公が“容疑者”にされるまで

物語は“雪山”ではなく、まず東京の事件から始まります。

東京都三鷹市N町の一軒家で、80歳の福丸陣吉が絞殺体で発見され、現金20万円が奪われる強盗殺人事件が発生。現場は荒らされ、犯行は「強盗」を装った形に見えます。

ここで警察が目をつけるのが、開明大学4年の脇坂竜実

彼は福丸家の柴犬ペロの散歩係として雇われていた過去があり、被害者宅に“出入りできた”という一点が、まず疑いの土台になります。

さらに竜実自身にも「心当たり」があるのが厄介です。

彼は以前、散歩中に犬を怪我させて解雇されており、その後、家の近くで用事があったタイミングで福丸宅に“つい”侵入してしまう。しかもその際、犬がすでに死んでいたことを知り、勢いでリードを持ち去り、合鍵にも触れてしまった――

この一連の行動が、後から見れば
・下見
・侵入の痕跡
・証拠隠滅
として積み上がっていく構造になっています。

つまり竜実は、実際に殺していなくても、「疑われるためのピース」だけは自分で揃えてしまっていた。ここが本作の一番意地悪で、同時にリアルな入口です。

② 唯一の希望|「女神(女性スノーボーダー)」との出会い

ただし、竜実にはアリバイがあります。

犯行推定時刻、彼は新潟の新月高原スキー場にいた。問題は“ひとりで行っていた”ため、それを証明してくれる相手がいないこと。

唯一、証言者になり得るのが、ゲレンデで出会った正体不明の女性スノーボーダー。竜実にとって彼女は、冤罪を解く「鍵」そのものです。

手がかりはわずか。
・「里沢温泉スキー場がホーム」
・赤と白が印象的なウェア
・黒いヘルメット
・ピンクの星型シール

名前も連絡先もわからない。

この時点での物語の面白さは、“推理”より“人探し”が前に出ている点です。

犯人当てではなく、「この女性を見つける」というチェイスの目的が最初に提示される。だから読者は、「犯人は誰?」より先に「見つかるのか?」でページをめくらされます。

③ 舞台は里沢温泉スキー場へ。逃げながら探すチェイス開始

竜実は親友・波川省吾(法学部)に事情を打ち明け、二人で“女神”を探しにいく決断をします。

向かうのは長野の里沢温泉スキー場。
日本有数の広さを誇る“最大級”のスキー場で、シリーズでもおなじみの舞台です。

人が多い=見つかりにくい。でも、ホームゲレンデなら来る確率は上がる。竜実の選択は合理的で、同時に無謀でした

ここから、追跡劇が二重に走り始めます。

  • 追われる側:竜実+波川
  • 追う側:所轄刑事・小杉敦彦+白井(上司の手柄争いも背負う)

小杉は「本庁より先に確保しろ」という思惑を受け、身分を隠して追跡するという、やや特殊な立ち回りでチェイスに参加してきます。

竜実たちも警察の目を恐れて携帯の電源を切り、車で移動し、監視カメラを避けるような動きを取る。ここがまた、無実なのに“逃亡者の行動”に見えてしまう。

追う側にとっては「黒」に見える材料が増えていくのが皮肉です。

④ すれ違いが連鎖|味方と敵が入れ替わる雪山の混乱

里沢温泉スキー場では、別の準備も進んでいます。町おこしのためのゲレンデウェディング計画です。

新郎側にはパトロール隊員の長岡慎太、新婦側には成宮葉月。
その妹・成宮莉央がプロデュースし、瀬利千晶も関わっています。

この“お祭り”が、竜実の人探しをさらにややこしくします。人が集まる。衣装が揃う。企画で目立つ。つまり、「似た人」が大量発生しやすい状況が生まれる。

竜実と波川はゲレンデや周辺で聞き込みを続け、特徴に合いそうな女性を探し回る

しかし相手は“プロ級の腕前”で、見つけても追いつけない。

追っているのは警察だけでなく、竜実もまた「滑走スキル」という別の壁に阻まれます。

一方の小杉たちは、追跡を続けながらも、現場の状況や竜実たちの様子から
「こいつら、ガチ犯人っぽくない」
と感じ始める。

この“疑いが揺らぐ瞬間”が、単なる追跡劇を一段面白くしていて、刑事側にも人間味が入ってきます。

混乱はさらに膨らみます。

竜実たちは服装がバレたと思い、レストラン周辺でウェアを借りて変装を試みるが、別の人間がそのウェアを着てしまい、警察が“誤認”で踏み込む流れが発生

結果、竜実たちは一度確保される方向へ転ぶ。

逃げるほど疑われ、動くほど詰む。雪山が舞台なのに、状況は完全に泥沼です。

⑤ 女神の正体が判明|アリバイの決定打へ

ここで物語は「見つけた!……違う」を何度も踏ませてきます。

  • ヘルメットのピンクの星型シール
  • 赤白が目立つウェア
  • 女性スノーボーダーの技量

この条件だけで、広いゲレンデから“たった一人”を抜き出すのは無理に近い。

だからこそ、ウェディング企画の「全員同じウェア」などが、強烈なミスリードとして効いてきます

転機は瀬利千晶の存在

彼女のヘルメットにも星型シールがあり、そこから「このシールは成宮莉央と関係がある」という線が浮かび、莉央へ接続します。

しかし、莉央本人は女神ではありません。

そこで千晶が指摘するのが、莉央の姉・成宮葉月の可能性

葉月は妊娠中で、本来は滑ってはいけない状況でしたが、どうしても我慢できず、妹のウェアを使って新月高原スキー場へこっそり滑りに行っていた

そしてその日、竜実が写真を撮った女性こそが葉月だったのです。

葉月は体調を崩しつつも、竜実のアリバイを証明するために証言と写真を出す。

この写真の存在が、物語上の決定打になります。

口頭証言だけなら「思い違い」や「偽証」の疑いが残る。しかし写真があることで、「その時、そこにいた」という事実は一気に強固になる。

⑥ 真犯人逮捕へ|事件の真相がひっくり返る瞬間

女神が見つかって竜実の無実が固まっても、事件は終わりません。

強盗殺人事件そのものの犯人を捕まえなければ、冤罪の影は完全には晴れない。

ここで重要なのは、真犯人への扉を開けたのが、竜実の“何気ない観察”だった点です。

竜実は現場写真を見せられた際、仏壇が開いているのを不自然だと感じる。

福丸は「エッチなDVDを観るときは仏壇を閉める癖がある」と語っていたからです。

つまり、仏壇が開いていた=犯行時、デッキに入っていたDVDが“エッチなDVDではなかった”可能性が浮上する。

逆に言えば、犯人が“都合の悪いDVD”を抜いて、別のものに差し替えたのでは?
という推理が成立します。

小杉はこの違和感から東京に戻り、被害者の囲碁仲間など周辺を洗い直す。そして行き着くのが、囲碁仲間の岡倉貞夫

岡倉は囲碁番組の録画DVDを持参して福丸宅を訪れ、借金の相談をして断られ、息子に連絡すると言われたことに焦って首を絞めてしまう。

証拠隠滅のため録画DVDを持ち帰り、代わりに囲碁の教本を仏壇に置いた。

“仏壇”という小さな違和感が、犯人の行動(DVDの入れ替え)を炙り出し、動機(借金)まで一気につながっていく展開です。

⑦ ラスト|事件後の余韻(シリーズとしての締まり方)

事件は決着し、竜実は“女神”にも辿り着き、真犯人も捕まる。

しかしラストは重い後味ではなく、雪山シリーズらしい軽快な余韻で閉じていきます。

象徴的なのがゲレンデウェディング

葉月の体調不良で計画が揺らぐ中、瀬利千晶と根津が代役としてバージンロードを滑り、二人の距離が一気に縮まって婚約に至る

事件の緊張のあとに、雪山が持つ祝祭性が戻ってくる締め方です。

そして竜実は後日、サークル仲間と里沢温泉スキー場を再訪し、パウダースノーを楽しむ。「逃げるための雪山」だった場所が、もう一度「遊ぶための雪山」に戻る

冤罪の恐怖に巻き込まれた若者が、最後に“日常”を取り戻すラストは、派手ではありませんが、きちんと気持ちを整えてくれます。

【ネタバレ核心】雪煙チェイスの真犯人は誰?動機・トリック・決め手を整理

【ネタバレ核心】雪煙チェイスの真犯人は誰?動機・トリック・決め手を整理

ここからは「結局、犯人は誰で、何が決め手だった?」だけを最短距離で回収したい人向けに、要点を一本化します。

本作の結末の快感は、“犯人当て”そのものよりも、些細な違和感が一気に全体をひっくり返す瞬間にあります。

真犯人の名前(ネタバレ)

結論から言うと、真犯人は 岡倉貞夫

被害者・福丸陣吉の「囲碁仲間」として、日常的に周辺に出入りしていた人物です。

警察が最初に疑った脇坂竜実ではなく、もっとも“目立たない位置”にいた人間が、実は事件の中心にいた──という配置が、この物語の意地悪さでもあります。

動機は何だったのか

動機は、きれいな復讐でも、巨大な陰謀でもありません。借金です

岡倉は福丸に借金を頼みに行き、断られたうえに「息子に連絡する」と言われたことで追い詰められ、その場の感情で首を絞めて殺害してしまった、という流れです。

ここが本作のいちばん現実的で、いちばん後味が悪いところ

大事件に見えるのに、引き金は小さくて、みっともない。

だからこそ、読後に残るのは
「人は追い詰められたとき、どれだけ簡単に一線を越えるのか」という感触だったりします。

トリック(やったこと)を図解レベルで言語化

雪煙チェイスのトリック(やったこと)を図解レベルで言語化

岡倉が実際にやったことを、順番に並べるとこうなります。

  1. 福丸宅へ行く理由を作る
     囲碁番組を録画したDVDを持参して訪問。
     “囲碁仲間”という関係性が、自然な侵入経路になる。
  2. 金の相談(借金)で揉める
     借金を断られ、息子に連絡されそうになり、心理的に追い詰められる。
  3. 衝動的に殺害
     首を絞めて殺害してしまう。
  4. 現場を“強盗”っぽく見せる
     家を荒らし、現金が奪われた形にして、
     動機を金銭目的の強盗に見せかける。
  5. 自分に繋がる“DVD”を消す
     もともとデッキに入っていた(=自分が持参した)録画DVDを抜き取り、持ち去る。
  6. その場しのぎの差し替えが、逆に墓穴になる
     囲碁の教本を仏壇に置くなど、現場に“ズレ”を残してしまう。

ポイントは、
トリックが巧妙だから暴かれたのではないという点です。

むしろ、証拠隠滅の“雑さ”が、
犯人の存在を逆に浮かび上がらせてしまった。


最大の決め手|なぜバレたのか(伏線回収)

決め手は、派手な物証ではありません。仏壇が開いていたという、ほとんどの人が見逃しそうな一点です。

福丸には、
「エッチなDVDを観るときは、仏壇を閉める癖がある」
という日常的な行動パターンがありました。

それなのに、現場では仏壇が開いていた。

ここから浮かび上がる疑問はひとつだけ。

  • もともと入っていたDVDは、福丸が自分で入れたものではない
  • つまり、犯人がDVDを入れ替えた可能性が高い

では、
「DVDを入れ替える必要があり、かつそれが可能だった人物」は誰か。

答えは、
福丸と囲碁仲間として繋がり、録画DVDを自然に持ち込める立場にあった人物──岡倉貞夫。

こうして、仏壇という小さな違和感から、犯人の行動・動機・立場が一本の線でつながります。


女神探しと事件解決が交わる構造の気持ちよさ

この作品の構造が上手いのは、

  • 表の物語:
     脇坂竜実が「女神」を探して無実を証明するチェイス
  • 裏の物語:
     事件現場の小さな違和感から、真犯人に辿り着く推理

この二本の線が、最後に同じ地点で交わるところです。

竜実が見つけたのは、アリバイを証明してくれる女神だけではありません。

彼は、自分の無実を証明しようと必死に動く過程で、結果的に事件の真相へつながる“鍵”も拾ってしまった

だからこの結末は、「運が良かった」ではなく、「必死に動いたから、たどり着いた」と感じられる。

それが『雪煙チェイス』の、静かで気持ちのいいネタバレ核心です。

原作「雪煙チェイス」の主要登場人物・相関図

原作「雪煙チェイス」の主要登場人物・相関図

『雪煙チェイス』は、ざっくり言うと「冤罪を晴らしたい大学生」と「手柄が欲しい刑事」が、雪山という“視界の悪い箱庭”でぶつかり続ける追跡劇です。

登場人物は多いですが、役割そのものはかなり整理されています。

ここで一度、勢力図として整理しておくと(特にネタバレ章が)一気に読みやすくなります。

主人公サイド(主人公/親友)

脇坂竜実(わきさか たつみ)
開明大学の4年生。アルバイト先の老人が殺害された強盗殺人事件の容疑者として追われる立場になります

事件当時、新潟の新月高原スキー場にいたという“鉄壁のアリバイ”はあるものの、一人で行動していたため証明者がいない。唯一の希望が、ゲレンデで出会った正体不明の女性スノーボーダー、通称「女神」です。

竜実は逃げ回る主人公というより、「自分が疑われる構造そのもの」に巻き込まれていくタイプで、無実なのに行動すればするほど怪しく見えてしまう立場に置かれます。

波川省吾(なみかわ しょうご)
竜実の親友で、同じサークル(マウンテン・モンキーズ)のメンバー。
竜実が警察に捕まらないよう助言しつつ、女神探しに同行します。

この物語で波川が担う役割は、単なる相棒ではありません。
竜実が恐怖で思考停止しかけたとき、それを言語化して引き戻す“ブレーキ役”。
感情で暴走しやすい竜実に対し、状況を整理し続ける存在です。

女神(女性スノーボーダー)
竜実が新月高原スキー場で出会った女性。
手がかりは「赤と白のツートンのウェア」「黒いヘルメットにピンクの星形シール」という視覚情報だけ。

彼女が「ホームゲレンデは里沢温泉スキー場」と話したことで、物語は一気に雪山チェイスへと移動します。

※ネタバレになりますが、この「女神」の正体は、のちに 成宮葉月 だと判明します。

追う側(刑事・捜査本部)

小杉敦彦(こすぎ あつひこ)
所轄の刑事。
本庁に先んじて手柄を取りたいという上層部の思惑を背負い、身分を隠して竜実を追跡します。

小杉は分かりやすい正義の人ではなく、
仕事人としての焦り・プライド・現場感覚が入り混じった人物。
その不安定さが、追跡劇にリアルなスピード感を与えています。

白井(しらい)
小杉の後輩刑事。
現場を支える相棒枠で、暴走しがちな小杉を現実に引き戻す役割も担っています。

南原/大和田(所轄側の上層)
小杉の上司(係長)や刑事課長にあたる存在。
現場を煽り、成果を急がせる“政治パート”の象徴です。

この構造があることで、小杉は「慎重に裏を取る」よりも
「先に捕まえる」方向へ押し出されていきます。

花菱/中条(本庁=捜査一課サイド)
本庁側も動いており、所轄との張り合いが発生します。
この「警察内部の競争」が、竜実にとっては“無実よりも先に逮捕されかねない現実”として迫ってくるのが、この物語のえげつなさです。


スキー場サイド(パトロール隊/旅館・地元関係者)

里沢温泉スキー場は、単なる舞台装置ではありません。情報が遅れ、誤解が増幅し、噂が走る場所として機能します。

そこにゲレンデ・ウェディングの準備が重なり、人の動きがさらに錯綜するのがポイントです。

根津昇平(ねづ しょうへい)/長岡慎太(ながおか しんた)(パトロール隊)
根津は、雪山シリーズを通して登場する“現場側の目”。
土地のルールと現場感覚を持つ人物です。

長岡は同じくパトロール隊員で、里沢温泉スキー場で行われるゲレンデ・ウェディングの当事者側でもあります。

瀬利千晶(せり ちあき)(スノーボードクロス選手)
根津とは以前からの顔なじみ。
里沢側の“行動力担当”で、物語を一気に動かす推進力になります。

彼女の存在によって、雪山の人間関係が
「仕事」「競技」「地元の縁」という複数の軸で立体化します。

成宮葉月(なるみや はづき)/成宮莉央(なるみや りお)
葉月は老舗旅館「板山屋」の長女で、長岡の婚約者。
莉央は妹で、ゲレンデ・ウェディングをプロデュースする側。

そしてここが物語の核心で、竜実が探している“女神”の正体が成宮葉月。つまり「冤罪を晴らす鍵」が、スキー場コミュニティのど真ん中にいる、という構造です。

川端由希子(かわばた ゆきこ)(旅館「きなし」の女将)
居酒屋兼旅館の女将で、元アルペンスキー選手。
“雪山の人間”の胆力を象徴する存在で、外から来た刑事たちに対しても土地の論理で牽制できる人物です。


高野誠也/高野裕紀/川端健太 ほか(地元関係者)
ガイド、レストラン店員、高校生など。
彼らがいることで、物語は単なる追跡劇ではなく
「観光地の日常に事件が落ちてくる怖さ」を帯びていきます。

相関図(超ざっくり・文字版)

竜実(冤罪の容疑者)
 └ 親友:波川(逃走&女神探しの参謀)
 └ 探す:女神=女性スノーボーダー(後に成宮葉月)

小杉(所轄刑事)+白井(後輩)
 └ 追う:竜実
 └ 背景:所轄上層(南原・大和田) vs 本庁(花菱・中条)

里沢温泉スキー場(現場側)
 └ 根津・長岡(パトロール隊)
 └ 千晶(競技者/行動力)
 └ 成宮家(葉月・莉央)+旅館・地元住民(由希子ほか)

タイトル「雪煙チェイス」の意味を考察(ネタバレあり)

タイトル「雪煙チェイス」の意味を考察(ネタバレあり)

「雪煙(せつえん)」とは、スノーボードやスキーでターンした瞬間に舞い上がる、あの白い雪の煙のことです。

視界が一瞬ふさがれ、前が見えなくなる。体感としては爽快だけど、同時に不安定でもある。

このタイトルが秀逸なのは、雪煙がただの“雪山らしい情景”ではなく、物語全体の構造そのものを表している点にあります。

雪煙=視界不良=「真相が見えない」状態の比喩

主人公・竜実は無実です。しかし、彼の行動の断片だけを見ると、

  • 夜中に被害者宅に入っている
  • 犬のリードを持っている
  • 合鍵に触れている

といった“疑われても仕方がない材料”がそろってしまう。

これらは一つ一つ見れば説明がつく事実なのに、雪煙のように舞い上がって重なることで、周囲の判断を曇らせていく。

正確な全体像が見えないとき、人はどうしても「それっぽいストーリー」に飛びついてしまう。その怖さが、この作品の地面にずっと埋まっています。

つまり雪煙とは、真相そのものを隠すものではなく、真相にたどり着く視界を奪う存在なんです。

チェイス=追跡だけじゃなく「証人探し」「真相探し」

表面上の構図は、「警察に追われる大学生」という逃走劇です。けれど同時に、竜実はもう一つの追跡をしています。

それが、“女神(=唯一の証人)”を探すチェイス。

警察から逃げる一方で、冤罪を晴らすためには、たった一人の人間を見つけなければならない。この二重構造があることで、物語は単なる逃走劇では終わらず、

  • 追われる
  • 探す
  • すれ違う
  • 間に合わない

という緊張が常に重なり続けます。

作者自身が、雪山シリーズは共通して「何かを捜す物語」であり、三作目では“それを人に置き換えた”という発想で作ったと語っている通り、『雪煙チェイス』は構造そのものが 捜索=チェイス に寄った作品です。

犯人を当てる話ではなく、「真実にたどり着けるかどうか」を走りながら賭け続ける話。

だから“チェイス”という言葉が、追跡以上の意味を持ちます。

冤罪の構造を、雪山の環境が増幅する

雪山という舞台設定も、偶然ではありません。

  • 広い
  • 人が多い
  • 移動が早い
  • 天候で状況が変わる
  • 連絡が遅れやすい

これらはすべて、
確認が遅れ、伝言が歪み、誤解が膨張する条件です。

つまり雪山は、冤罪が成立しやすい地形でもある。

竜実の無実を晴らす鍵が、たった一人の証人に依存している時点で、世界の作りがすでに残酷なんですよね。

タイトルの「雪煙チェイス」は、雪山のスピード感と爽快さを示しながら、同時に「真相は、簡単には見えなくなる」というテーマ宣言でもある。

僕はそう受け取りました。


雪山シリーズとのつながり|読む順番・前作を読むべき?

雪山シリーズとのつながり|読む順番・前作を読むべき?

『雪煙チェイス』は、東野圭吾の雪山シリーズ第3作にあたります。ただし、いわゆるガチガチの続き物ではありません。

舞台と空気感、そして一部の人物がゆるやかにつながるシリーズなので、この作品から読んでも物語は問題なく成立します。

雪山シリーズの順番(初心者向け)

基本的な流れは以下の通りです。

  1. 白銀ジャック(第1作)
     舞台:新月高原スキー場
  2. 疾風ロンド(第2作)
     舞台:里沢温泉スキー場
  3. 雪煙チェイス(第3作)
     舞台:里沢温泉スキー場

「順番に読むべき?」への答え

目的別に整理すると、こうなります。

『雪煙チェイス』だけを楽しみたい人
→ この作品からでOK。主人公も事件も独立しているので、初見でも置いていかれません。

雪山シリーズの世界観を味わいたい人
→ 順番に読むのがおすすめ。里沢温泉スキー場という舞台に“馴染み”が出て、現場側の人物たちがただの脇役ではなく、“シリーズの横軸”として効いてきます。

共通する舞台・キャラ要素

雪山シリーズがシリーズとして成立している理由は、事件そのものより 「現場の人間が残り続ける」 ところにあります。

  • 根津昇平と瀬利千晶という、雪山側の人物が横断的に登場
  • スキー場が“場所”ではなく“閉じた社会”として共有される

一作目は新月高原、二作目以降は里沢温泉。

場所が変わるというより、雪山という閉じた世界が続いていく感覚が強い

さらに、里沢温泉スキー場を舞台にした別作品とのゆるやかなつながりもあり、シリーズ読者向けのサービスは控えめながら、確実に用意されています。

『雪煙チェイス』は、単体でも読める。
でもシリーズとして読むと、
「雪山という舞台が、どれだけ人を狂わせ、巻き込み、すれ違わせるか」が
より立体的に見えてくる一冊です。

よくある疑問Q&A(ネタバレあり)

ここからは、検索されがちな疑問を結論先出しでまとめます(ネタバレあり)。

雪煙チェイスの原作は小説?漫画?

原作は小説です。
文庫版は実業之日本社から刊行されています。

なお、雪山シリーズ全体で見ると、コミカライズが確認されているのは『白銀ジャック』『疾風ロンド』あたりまでで、『雪煙チェイス』自体は小説のみという整理になります。
そのため、物語をしっかり追いたい場合は原作小説を読むのが前提になります。

女神の正体は誰?

竜実が探している「女神(女性スノーボーダー)」の正体は、成宮葉月です。

物語の中で提示される手がかりはかなり断片的で、

  • 赤と白のツートンのウェア
  • 黒いヘルメット
  • ピンクの星形シール

といった“見た目の記憶”だけ。
名前も連絡先も分からない状態で、雪山という人の多い環境に放り込まれるため、
「人違い → すれ違い → 見失い」を何度も繰り返す構造になっています。

だからこそ、正体が明かされる瞬間は「やっとつながった」というカタルシスが強いです。

犯人は誰?動機は?(福丸陣吉殺害事件)

真犯人は岡倉貞夫。被害者・福丸陣吉の囲碁仲間です。

動機は、復讐や計画的犯行ではなく、
借金の相談を断られたことからの口論と衝動

ここがこの作品の嫌なリアルさで、

  • 巨大な陰謀ではない
  • 明確な悪意の積み重ねでもない
  • 追い詰められた末の“瞬間風速”

で事件が起きてしまう。

だから読後に残るのはスッキリ感よりも、
「人は追い詰められた瞬間に、取り返しのつかない一線を越える」という後味です。

※細かい流れや心理の変化は、要約より原作を追ったほうが納得しやすい部分でもあります。

どこが伏線だった?(決め手のポイント)

最大の伏線は「仏壇が開いていた」という違和感です。

作中で語られる福丸の生活習慣として、
「あるDVDを見るときは仏壇を閉める癖がある」という情報があります。

ところが、事件現場の写真では仏壇が開いている。
このズレから、

  • DVDが入れ替えられている可能性
  • 犯人が“そのDVDを持ち込める立場”だった可能性

という別の線が浮かび上がる。

派手なトリックではなく、
生活の癖と現場の違和感が噛み合うことで真相に届く構造が、この作品らしい決め手です。

もう一つの重要なポイントは、
女神の外見情報(特にヘルメットのシール)を「いつ思い出すか」「誰が気づくか」で、
追跡劇の緊張感が大きく変わる点です。

ドラマは原作通り?改変はある?

骨格は原作通りになる可能性が高いですが、細部の改変はあり得ます。

NHKで
2026年1月2日・3日の2夜連続(前後編)
としてドラマ化が予定されています。

  • 冤罪にかけられる
  • 女神(証人)を探す
  • 雪山でのチェイス

という軸は原作の要なので、大きくは崩しにくい構造です。

一方で映像化では、

  • 登場人物の整理
  • 展開テンポの調整
  • 見せ場の再配置

といった変更は十分考えられます。
放送後に「原作との違い」を追記すると、記事としても強くなります。

雪山シリーズは順番に読むべき?

どこから読んでもOK。ただし、順番に読むと味わいは深くなります。

『雪煙チェイス』単体でも物語は成立します。
主人公も事件も独立しているため、初見でも問題ありません。

ただ、根津昇平と瀬利千晶という“雪山側の人物”がシリーズを横断して登場するため、
順番に読むと、

  • スキー場という場所の“生活感”
  • 現場側の人間関係の積み重なり

がより立体的に見えてきます。


まとめ|「雪煙チェイス(原作)」ネタバレを踏まえて残るテーマ

『雪煙チェイス』の面白さは、犯人当てよりも冤罪が生まれるプロセスと、その中で人が“どんな判断をしてしまうか”にあります。

雪煙のように情報が舞い、視界が悪い状況ほど、人は強いストーリー(=決めつけ)に飛びつく。

だからこの作品は、爽快なチェイスでありながら、読後に少し苦い。

そして雪山シリーズとして見ると、根津や千晶がいることで、スキー場がただの舞台ではなく。人が生きている「場所」として残り続ける。ここがシリーズの強さです。

原作を読んでからドラマを観れば、犯人や女神の正体を知った上で「どこをどう映像で見せるか」に集中できる。
逆に、ドラマで初見のスピード感を味わいたいなら、ネタバレは踏まないほうが楽しい。

自分が結末重視派か、プロセス重視派かで、いちばん気持ちいい入口を選ぶのが正解だと思います。

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