糀谷夕希子は、『アンナチュラル』の中で最初から「いない人」です。それでも彼女の存在は、最後まで物語の中心から消えません。
中堂系がUDIラボにいる理由。
赤い金魚事件という縦軸。
そして最終回で突きつけられる、「分かっているのに裁けない」という現実。
それらすべての起点にいるのが、8年前に殺された糀谷夕希子です。彼女は被害者であり、恋人であり、そして“証拠にならなかった死”の象徴でもあった。
この記事では、糀谷夕希子という人物が物語の中で何を意味していたのかを整理しながら、中堂系の8年の執着と、『アンナチュラル』が最後に描いた喪失と決着について掘り下げていきます。
アンナチュラル「糀谷夕希子」はいつ死んだ?

糀谷夕希子(こうじや・ゆきこ)が亡くなったのは、物語開始時点から「8年前」です。
作中でも人物紹介や台詞の端々で「8年前に何者かに殺害された」という事実が繰り返し示されています。
この“8年前”という距離感が絶妙で、ただの過去の事件では終わりません。現在の中堂系の言動や価値観を規定し続ける生傷のような時間として機能しています。
中堂は夕希子の事件の犯人を追い続け、その執着がUDIラボの空気を変え、やがてミコトたち全員を縦軸に巻き込んでいく。夕希子の死は、物語の起点というより、ずっと止まったままの時計なんですよね。
アンナチュラル「糀谷夕希子」の死因は?中堂系の恋人はなぜ死んだ?

まず死因から整理すると、夕希子の死因はニコチンを体内に注入されたことによる中毒死とされています。
人物紹介では「殺害された」とだけ示され、詳細は物語後半で徐々に補完される構造です。
では「なぜ殺されたのか」。
ここが『アンナチュラル』のいちばん残酷なところで、夕希子は誰かの恨みを買った被害者というより、連続殺人犯・高瀬の“ルール(A〜Z)”の中で選ばれた存在に近い。
夕希子は中堂の恋人である以前に、犯人にとっては「N(Nicotine)」という一文字だった。
この不条理さが、中堂の8年分の怒りと、視聴者に残る苦さを決定づけています。
さらに、夕希子の遺体の口の中に残されていた“赤い金魚”のような印。これは装飾でも象徴でもなく、犯人の犯行の癖――支配の形そのものです。
被害者の声を奪う行為が、皮肉にも決定的な手がかりとして残り、最終的に真実へ繋がっていく。この構造こそが、『アンナチュラル』らしい救い方だと思います。
A~Zについてや赤い金魚については以下記事で詳しく解説しています。

中堂の恋人「糀谷夕希子」を殺害した犯人は?

結論はシンプルで、夕希子を殺害した犯人は高瀬文人(たかせ・ふみと)です。
最終話では、夕希子をはじめ複数の女性を殺害した疑いがある人物として高瀬が登場し、物語の中心人物として位置づけられます。
ここで押さえておきたいのは、夕希子殺害が「中堂個人の因縁」だけで終わらないという点です。
高瀬は夕希子だけを狙った犯人ではなく、若い女性を標的に連続殺人を行っていた加害者で、夕希子はその“連続の一部”として組み込まれていた存在でした。
だからこそ、中堂の怒りや執着は単なる私怨に回収されず、「連続殺人をどう裁くか」「真実をどう社会の言葉に変えるか」という問題へ広がっていきます。
中堂の復讐は、個人の感情を超えて、社会の側が向き合うべき課題に変換されていくんですよね。
糀谷夕希子の犯人はなぜ捕まった?

犯人・高瀬が決定的に追い詰められた理由を一言でまとめると、「再解剖できたから」です。
最終話の時点で、高瀬は警察に出頭していますが、遺体損壊は認めても殺害は否定します。殺人を直接立証できる証拠がなく、「犯人は分かっているのに裁けない」という状況に物語は追い込まれていきました。ここまで高瀬は、ほぼ逃げ切れる位置にいたと言っていい。
それを覆したのが、夕希子の遺体が火葬されておらず、アメリカで土葬されていたという事実です。
土葬であれば、時間が経っていても再解剖が可能になる。これによって、夕希子の遺体を改めて調べる道が開けました。
さらに決定的だったのは、8年前には検出できなかった技術によって、夕希子の口腔内(歯の裏側など)から高瀬のDNAが検出され、一致したこと。この物証によって、ようやく「真実」が「法で裁ける証拠」に変換されます。
加えて、法廷でミコトが高瀬の感情を揺さぶり、彼自身が語り出してしまう流れも描かれました。
つまり最終的には、
・物証(DNA一致)で逃げ道を塞ぐ
・法廷で“言い逃れの物語”を崩す
この二段構えによって、高瀬はようやく“捕まる側”に落ちたわけです。
『アンナチュラル』が描いたのは、犯人を見つける物語ではなく、真実を証拠に変えるまでの、長くて苦しい戦いだった。その象徴が、この決着の仕方だと思います。
糀谷夕希子を演じるキャストは橋本真実
糀谷夕希子を演じたキャストは、橋本真実(はしもと まみ)さんです。
公式のゲスト紹介や人物相関の整理でも、夕希子役として橋本真実さんが記載されています。
夕希子は、物語開始時点ですでに亡くなっている人物です。それにもかかわらず、作品全体の重心を担っているのは、橋本真実さんの芝居が「儚い被害者像」に留まらないからだと思います。
彼女の存在は、事件の説明要素ではなく、中堂が本当に失った“生活そのもの”として描かれている。だからこそ、赤い金魚事件は単なる連続殺人ではなく、「喪失の物語」として観る側に残るんですよね。
夕希子は多くを語らない。それでも、橋本真実さんの表情や佇まいが、中堂の過去を“温度のある記憶”として成立させていて、物語にとって欠かせないピースになっています。
アンナチュラルの糀谷夕希子のまとめ
・糀谷夕希子が亡くなったのは、物語開始時点から8年前。
・死因は、作中情報としてニコチンを体内に注入されたことによる中毒死とされる。
・夕希子を殺害した犯人は高瀬文人。最終話で事件の中心人物として描かれる。
・高瀬が追い詰められた決定打は、夕希子の遺体が火葬されておらず再解剖できたこと、そして新たな技術によってDNA一致が確認された点。
・糀谷夕希子を演じたキャストは橋本真実さん。
夕希子の死は、単なる“事件の起点”ではありません。
「証拠がなければ裁けない」という不条理を、中堂と視聴者の両方に刻み続ける装置だった。だから最終回の決着は、気持ちよくは終わらない。
でも、その割り切れなさこそが、『アンナチュラル』という作品の強度であり、忘れがたい余韻になっているのだと思います。
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