『あなたの番です』の最終回。
黒島逮捕でひと息ついた直後、突然現れた“無人の車椅子”と、屋上の幸子の姿に多くの視聴者が凍りつきました。
ドラマ開始からひっそりと存在していた赤池おばあちゃんは、なぜラストであんな形で物語の中心に浮かび上がったのか。
本記事では、物語を揺るがすその意味と、幸子という人物に隠されていたもう一つの顔を丁寧にひも解いていきます。
赤池のおばあちゃん=赤池幸子とはどんな人物だったのか

まず整理として、「赤池のおばあちゃん」がどんな立ち位置の人物だったのかをおさらいしておきます。
赤池幸子は、キウンクエ蔵前502号室の住人・赤池美里&吾朗夫妻と同居している姑。車椅子に座った“物忘れの激しい、どこかトボけたおばあちゃん”として物語の序盤から登場します。
しかし実際には、
・マンション前で美里と激しく口論している姿を住民に目撃されていたり
・交換殺人ゲームで「赤池幸子」と書かれた紙が存在していたり
と、“ただの弱い高齢者”では片づけられない不穏さが、かなり早い段階から漂っていました。
決定的なのは反撃編終盤。
最終回で、幸子は黒島沙和の祖母(正確には夫の隠し子の娘=血のつながらない孫) であり、黒島の危険な性質を知りながら黙認してきた人物だと判明します。
水城刑事に
「黒島が殺人を犯していたことを知っていたのではないか」
と問われるシーンでは、その推理をほぼ認めながらも、奪われた命への罪悪感をほとんど見せません。
ここで視聴者が一気にザワつくんですよね。
「え、黒島だけじゃなく、黒島を“野放し”にしてきたおばあちゃんこそ真の黒幕なんじゃ……?」
という視点が、一気に現実味を帯びてくる瞬間です。
赤池おばあちゃんは「真の黒幕」なのか?

「黒幕=黒島」で物語は一応決着がつきますが、ラストで存在感を増したのが赤池幸子。
ここでは 事実ベース と 視聴者の考察ベース を分けて整理します。
公式で描かれた“事実”だけを並べると…
ドラマ本編とスピンオフを踏まえて、幸子について“確定情報”として押さえられるのはこのあたりです。
- 幸子は赤池吾朗の母で、502号室に同居していた
- 黒島沙和は、幸子の夫が外で作った子どもの娘(=血の繋がらない孫)
- 幸子は黒島の危険な性質・過去の問題行動を把握していた
- それでも黒島を“かわいがり”、202号室に住まわせていた
- 水城刑事に追及され、黒島の殺人を“知っていたこと”をほぼ認める
- 交換殺人ゲームでは、赤池美里が「赤池幸子」と紙に書き、その紙を浮田が引いていた
- 最終回で、幸子は施設の屋上の縁に縛られた状態で座らされていた
(その直前、翔太・二階堂の元には「あなたの番です」と書かれた紙を乗せた車椅子が到着)
映画・インタビューでも、
「幸子は黒島の危険性を知りながら目をつぶってきた、ある意味“真の黒幕”」
という評価がなされています。
ここまでは“公式寄り”の情報。
黙認という罪 ― 「黒幕」=直接手を下した人だけじゃない

個人的に一番ゾッとしたのは、水城刑事に追及されるシーンです。
黒島がどれだけ多くの人を殺してきたかを突きつけられても、幸子は心の底から反省しているようには見えない。
- 「孫だから」という甘さ
- “自分の家の問題”として押し込み、外に助けを求めなかったこと
- 多数の被害者が出てもなお、他人事のような態度
これを見ていると、
“ナイフを握ったのは黒島だけど、そのナイフを棚に戻し続けたのは幸子”
という感覚に近いです。
ドラマはあえて、
- 黒島=「生まれつきのサイコパス」
- 幸子=「それを知りながらも守り続けた大人」
という二重構造にしていて、「誰が一番悪いのか」という単純な図式に落とさせてくれません。
交換殺人ゲームとの関わりと、幸子の“業”

交換殺人ゲーム目線で見ると、幸子はさらに複雑な位置にいます。
- 美里は「殺したい人」として姑の幸子の名前を書く
- その紙を引いたのは201号室の浮田
- しかし実際に殺されたのは、美里と吾朗
- 黒島は「自分の番だから」と美里を殺害。ついでに吾朗も殺す
- 幸子だけは「服が似合っていて可愛かったから」という理由で生存
この「幸子だけが生きている」という事実が後半で効いてきて、
“名前を書かれた人の中で、最後まで生き残ったのが幸子”
という強烈な重さを持ち始めます。
視点を変えると、
- そもそも美里が紙に書くほど追い詰められていた姑=幸子
- その幸子が、危険な孫・黒島を「家族」として守り続けていた
という二重の“家庭内の歪み”が、マンション全体に飛び火していった構造にも見えてくる。
結論として、赤池幸子は黒幕…!?

- 事件の“実行犯としての黒幕”は黒島
- しかし“物語的な黒幕”、つまり「この地獄を長引かせた元凶」としては、赤池幸子も同じくらい重い
そう感じています。
黒島の手を直接動かしたのは黒島本人ですが、“黒島を怪物にしてしまった環境”の一部を作り、“被害を拡大させた要因”を持っていたのは幸子。
だからこそ視聴者は、最終回で幸子が登場するだけで空気が変わるのを感じたのだと思います。
最終回のラスト――屋上の赤池幸子と「無人の車椅子」の意味

視聴者の脳裏に焼き付いたのが、最終回ラストのあのシーンです。
- 翔太と二階堂が302号室で鍋を囲んでいるとインターホンが鳴る
- ドアを開けても誰もいない
- 部屋に戻ろうとすると、廊下の奥からチェック柄の車椅子が自動で走ってきて、「あなたの番です」と書かれた紙を乗せたまま二人の前で停止
- 同時進行で、どこかのビルの屋上。手足を縛られた幸子が、今にも落ちそうな縁に座らされている姿が映る
“黒島逮捕→事件解決”というカタルシスを味わったその直後に、「え、まだゲーム続くの?」と奈落に突き落とす、非常にイヤ〜な終わり方です。
1話から仕込まれていた「車椅子」の伏線
このラストが怖いのは、“いきなり出てきたアイテム”ではない点です。
第1話の段階で、
- 管理人室付近にチェック柄の車椅子だけが倒れている
- その場に幸子の姿はなく、「実は歩けるのでは?」「あのタイミングで何をしていたのか?」という違和感だけが残る
というシーンがサラッと映り込んでいます。
この時点では多くの視聴者がスルーしたはずなのに、最終回の“無人の車椅子”再登場によって、一気に意味が反転しました。
- 幸子は本当に車椅子生活だったのか?
- 「弱いおばあちゃん」というイメージを利用していたのでは?
- 1話からすでに“黒幕の匂い”を漂わせていたのでは?
こうした疑念が、あのラスト数秒で一気に噴き上がります。
誰が幸子を屋上に連れていったのか?三つの有力説

公式には犯人は明かされていないため、ここからはあくまで考察ゾーンになります。
大きく分けると「この3パターン」がよく語られています。
① 水城刑事“復讐”説
- 水城は黒島の凶行と幸子の黙認を追及し、「みんながあなたを恨みますよ」と強い口調で非難していた
- 事件を追い続け、仲間の神谷を失った立場からすれば、幸子への怒りは誰よりも強い
- 「正義感が暴走した末の制裁」として屋上へ…?
という見方。
ただし、
- 警察官としての立場を完全に捨てないとできない行為
- 彼がそこまで一線を越えるキャラとして描かれているか
という点で、説得力はやや弱いという意見も多いです。
② 黒島“再犯”説
- 黒島は最終回で罪を告白したが、「人を殺すことを愛している」とまで言い切るサイコパス
- 逮捕後、どこかで拘束を抜け出し、幸子を「最後の標的」として屋上へ…?
といった極端な説。
ただ、最終回の時間軸や拘束状況を踏まえると、
- 黒島が単独で施設に行き、幸子を屋上まで連れ出す余裕はなさそう
- 逮捕後の“真犯人の動き”を描かないのは不親切
という理由で、ファンの間では少数派です。
③ 江藤“遺産&正義”説(最有力)
最も支持されているのは 404号室・江藤祐樹 黒幕説。
根拠としては、
- 江藤は赤池家と深く関わり、幸子とも親しげ
- スピンオフではIT技術と“世界のためなら何でもする”価値観が描かれる
- 遺産目的で幸子に遺言書を書かせていた可能性
- 水城と幸子の会話を廊下で聞いていて、「黒島を野放しにしていた」事実を知っていた
- 幸子の無反省な態度に、“正義感+遺産狙い”が動機となった可能性
さらに、
スタッフが「江藤はバカっぽく見えるが、それに一矢報いる」と意味深なコメントをしていた
という情報もあり、江藤黒幕説が強く支持されています。
ただし、このあたりはかなり“裏設定寄り”であり、ドラマ本編だけで完結する説ではない点も押さえておきたいところです。
「あなたの番です」は誰に向けられていたのか?

もうひとつ興味深いのが、“視聴者黒幕説”。
- 翔太も二階堂も交換殺人ゲームには参加していない
- そんな二人に「あなたの番です」と伝えても、本来は意味がない
だとすると、あの紙は “画面の向こう側のあなた(視聴者)” に向けたメッセージでは?
という読み方です。
「この物語を消費し、誰が悪いのかをジャッジし続けたあなたも、赤池幸子の死を望んでいたのでは?」
という、かなりメタなラストの可能性もある。
公式がそこまで緻密に設計したかどうかは議論がありますが、
“ラストがずっとモヤモヤする理由”としては非常にしっくりくる解釈です。
赤池幸子というキャラクターが象徴していたもの

弱者に見える“加害者”という二重構造
幸子は表面的には、
- 車椅子
- 高齢
- 嫁からのモラハラ・介護疲れ
と、“守られるべき弱者”として描かれています。
しかし物語が進むにつれ、
- 黒島の危険性を知りながら受け入れていた
- 暴走を止めず、被害が出ても罪悪感が薄い
という姿が明らかになり、“被害者”から“加害者”へと一気に揺れ戻されます。
現実でも、
- 虐待を見て見ぬふりをする家族
- 家庭内問題を外に出さず被害を拡大させる大人
は存在するため、この構造が妙なリアルさを持って響きます。
黒島との血のつながらない“家族”関係
もうひとつ象徴的なのが、
血がつながっていないのに、価値観がどこか似ている
という点。
- 黒島:生まれつき衝動を抑えられない“サイコパス”
- 幸子:他人の命を軽んじ、孫の暴走を黙認し続けた大人
血筋ではなく、“許されてきた環境”が人を育ててしまう怖さが見えます。
黒島一人の物語で終わらせなかった脚本の意地
黒島の告白だけでも衝撃的でしたが、そこにさらに、
- 黙認していた幸子
- その幸子までも裁こうとする“誰か”(江藤・視聴者・第三の人物)
を重ねることで、
「黒島さえ捕まえればハッピーエンド」には絶対しない
という、脚本の強い意志を感じます。
黒島=“殺人の黒幕”
幸子=“この地獄を長引かせた黒幕”
という二重構造。
個人的な結論:赤池おばあちゃんを「黒幕」と呼ぶかどうか
最後に結論をまとめます。
事件の構図だけ見れば、
黒幕=黒島 で間違いありません。
しかし、
- 黒島の“芽”が見えた時点で医療機関に相談できた
- 外部に助けを求める選択肢はあった
- それでも“家の中の問題”として抱え込み、黙認したまま被害が拡大
という幸子の“選択”にこそ、物語の重さがあります。
「おばあちゃんだから仕方ない」
「家族だから守りたい気持ちも分かる」
――その言い訳の積み重ねが、最終回のあの屋上に幸子自身を連れて行ったようにも見えます。
ラストの
「あなたの番です」と書かれた紙を乗せた無人の車椅子
は、
- 黒島の物語を見届けた“視聴者”に対して
- 「あなたは、身近な“黙認者”になっていない?」
と問いかけているようにも感じました。
赤池おばあちゃんを“黒幕”と呼ぶかどうかは、正直、視聴者それぞれの倫理観次第です。
ただひとつ言えるのは、彼女がいたからこそ、『あなたの番です』は単なる「サイコパスの連ドラ」では終わらなかったということ。
- 加害者と被害者の境界
- 家族という名の箱庭の残酷さ
- 「見て見ぬふり」をした大人の罪
そのすべてを背負わされた存在としての赤池幸子。
最終回の屋上のシーンは、何度見返しても、ただのショッキングな絵面以上の“重さ”を感じさせてくれます。
――あの車椅子が進んできたとき、本当は誰の番だったのか。
今でも、ふとした瞬間に考えてしまう自分がいます。
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