第8話で描かれた「国家の運用と個人の倫理」の衝突は、第9話でついに爆発します。

特捜班に下された新たな任務――それは、稲見(小栗旬)の自衛隊時代の同期・結城雅(金子ノブアキ)の“脱柵”捜査。
かつて同じ現場で命を懸けた仲間が、今や“国家の敵”として指名手配された。
「向けられる前に撃て」という鍛冶(長塚京三)の命令。
「まだ救える」と信じる稲見の願い。
同じ訓練、同じ技術、同じ痛みを分け合った二人が、正義の名の下で互いに銃を構える。
そしてその裏で、特捜班の拠点が何者かに襲撃される――。
2017年6月6日(火)夜9時放送のドラマ「CRISIS〜公安機動捜査隊特捜班〜」9話のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
CRISIS(クライシス)9話のあらすじ&ネタバレ

第9話「最強の敵!特捜班、崩壊」は、稲見(小栗旬)の“鏡像”となる男・結城雅(金子ノブアキ)が登場し、物語の根幹である「国家の秩序」と「個人の正義」が真っ向から衝突する回。
導入は後の動機線を示す爆破現場のフラッシュバックから始まり、ラストでは特捜班の拠点が爆破される衝撃のクリフハンガーで幕を閉じます。
以下、公式情報を軸に時系列で構成を整理します。
プロローグ:爆発現場に残る“指輪”という記憶
2016年6月15日。爆発現場に駆けつけた自衛隊の特殊部隊員のひとりが、薬指に指輪をはめた遺体を見て嗚咽する。
たった数カットの回想だが、“何かを失った兵士”というモチーフが、この回の感情の地盤をつくる。後に描かれる結城の情動線と深く響き合う設計となっている。
休日の断面:静かな“空隙”が、戦いの前触れになる
大山(新木優子)と樫井(野間口徹)が将棋を指すシーン。そこへ吉永(田中哲司)が加わり、穏やかなやり取りが交わされる。
一方で、稲見は恋人・松永(野崎萌香)と映画デート、田丸(西島秀俊)は教会で“謎の男”から「あなたの力でこの国を変えてみませんか」と誘われ、その言葉を反芻している。
静かな“日常”の隙間が、のちの崩壊をより際立たせる構成だ。
任務の起点:鍛冶が告げる「結城雅」の脱柵
鍛冶(長塚京三)は稲見に、自衛隊時代の同期・結城雅が脱柵したと報告。行方不明から2週間、もはや犯罪者として捜査対象になっている。
稲見は“何かを仕掛けようとしている”と察し、「真相を探る時間をくれ」と訴えるが、鍛冶は「国家の秩序のために撃て」と命じる。
倫理よりも秩序が優先される瞬間が、緊張の火種として刻まれる。
再会:バーの前で——「ゆがんだ世界を正す」誘い
夜、稲見の前に結城が姿を現す。旧友らしい抱擁のあと、結城は静かに告げる。
「ゆがんだ世界を正すつもりだ。お前も手を貸せ。」
その直後、通りかかった警官を足を撃って逃走し、「3日後にまた会おう」と残して去る。
旧友の“誘い”は、倫理と理想の境界を揺るがす導火線となる。
囮作戦の空振り:鍛冶の「撃て」の命令
翌日、結城の発砲事件を受け、特捜班に正式な逮捕命令が下る。
囮作戦は結城に先読みされて失敗。稲見が「脱柵の理由」を問い詰めても、鍛冶は沈黙したまま「国家の秩序のために撃て」と繰り返す。
現場と国家の倫理が、ついに正面からぶつかる。
サブライン:総理の家の食卓と“帰国したい息子”
物語の並行線として描かれるのが、内閣総理大臣・岸部正臣(竜雷太)の家庭。
アメリカ留学中の息子・大介が「帰国したい」と申し出るが、岸部は冷淡な態度を見せる。
公と私の分断を象徴するこの小景が、最終回へとつながる「政治の私物化」への伏線となる。
“最強の敵”の侵入:特捜班オフィス、人質、USB、爆弾
朝、出勤した大山が背後から制圧される。
侵入者は結城。閣僚全員の個人情報をUSBにコピーさせるよう要求。
吉永・田丸・樫井が応戦し、稲見が駆けつけるが、結城は大山を人質に取り電子ロックを破壊。5人を室内に閉じ込め、時限爆弾を設置。
樫井の解除は間に合わず、稲見は爆弾を抱えて外へ——直後、大爆発。
特捜班の拠点が吹き飛ぶ映像で、画面は暗転。第9話は衝撃のクリフハンガーで幕を閉じる。
CRISIS(クライシス)9話の感想&考察

第9話は、“最強の敵”を「能力の高さ」ではなく、“近すぎる存在”として描いたことにより、シリーズの倫理構造を決定的に浮かび上がらせました。以下、主要論点を整理します。
結城は“悪”ではなく“選びそこなった同僚”——鏡像としての強度
結城は稲見と同じ自衛隊出身で、同じ訓練・同じ手順を共有する存在。
過去に人を殺めた経験が二人の分岐点となり、稲見は“戻る理由(光)”を握り続けたのに対し、結城は“信じた何か”を失ってしまった。
鏡像としての距離の近さが、彼を単なる敵ではなく、“もし稲見が踏み外していたら”の姿として描く。鍛冶の「向けられる前に撃て」という命令が、ここでかつてない内的暴力として響く。
フラッシュバックの“指輪”——テロの抽象から“個の喪失”へ
冒頭の指輪のカットは、国家とテロという抽象的対立を“個の喪失”に引き戻す装置。
一つの遺体が、理念を超えて感情を突きつける。
結城の行動が理解できても、許されない理由を、ドラマはこの“指輪”で観客の心に焼き付ける。
オフィス爆破の“手順”——位置取り・遮断・猶予なし
侵入→人質→電子ロック破壊→閉じ込め→爆破。
一連の流れは“退路を完全に奪うプロの作法”として描かれる。
樫井の「解除困難」という一言で、結城が時間そのものを支配していることを示し、稲見の“抱えて走る”選択へとつながる。
合理性そのものが恐怖を生み出す設計だ。
岸部家の小景——“私”の政治が“公”の政治に侵入する
総理と息子の会話は、家族という“私”が国家という“公”を侵食する比喩。
息子を守るか国家を守るかという問題が、次回における政治的・倫理的衝突の火種になる。
1話から描かれてきた“個の痛みと公の運用”というテーマが、最終章で合流する布石だ。
田丸と“教会の男”——価値軸の揺さぶりは続いている
「あなたの力でこの国を変えてみませんか」。
この言葉は、維新軍の思想の再演であり、“理想の言葉が暴力に変わる瞬間”を暗示している。国家に失望した者たちを新たな物語へと誘う構図が、田丸の倫理を試す次の段階へ続いていく。
クリフハンガーの機能——“結果”を遅らせ、“問い”を前に出す
拠点爆破で締める構成は、単なるショック演出ではなく、「特捜班は秩序の番人でいられるのか」という問いを観客に突きつけるための装置。
居場所(オフィス)の消失は、秩序の象徴の崩壊を意味する。
最終回への導線として、物語の“答え”ではなく、“問いの継承”を選んだ引きが見事だった。
総括
結城は力でなく“近さ”で描かれた最強の敵。
稲見との鏡合わせが、国家の運用(撃て)と現場の倫理(生かす)の衝突を極限まで研ぎ澄ませた。
爆破の合理は、暴力の快感ではなく「価値の分岐」を照らすための演出。岸部家の小景と教会の男の誘いは、“公と私”“国家と信仰”という最終回の争点を二重に予告する。
第9話は、“正義が崩壊する音”を聴かせた痛烈な一章だった。
8話の最後に田丸は謎の男に会いました。これによって田丸はあっち側の人間になってしまうのでしょうか?
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