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CRISIS(クライシス)5話のネタバレ&感想考察。“潜入の嘘”と“国家の正義”が人を壊す瞬間

CRISIS(クライシス)5話のネタバレ&感想考察。“潜入の嘘”と“国家の正義”が人を壊す瞬間

第4話で描かれた「国家と個人の救済の対立」から一転、第5話は“国家の正義”そのものの腐食に踏み込みます。


特捜班に下されたのは、暴力団フロント企業・仁愛興業への潜入任務。

政治家への恐喝証拠を押さえる――そう聞かされていたはずの任務は、やがて裏で進行していた“もっと黒い取引”のための“おとり作戦”へと変わっていく。

現場で人を騙す嘘、上層で仕組まれた嘘。

その二重構造の中で、稲見は“正義を信じたい気持ち”と“人としての痛み”のあいだで揺れ続ける。

2017年5月9日(火)夜9時放送のドラマ「CRISIS〜公安機動捜査隊特捜班〜」5話のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。

※以後ネタバレ注意

目次

CRISIS(クライシス)5話のあらすじ&ネタバレ

CRISIS(クライシス)5話のあらすじ&ネタバレ

第5話は、「潜入=嘘」と「運用としての正義」が真正面からぶつかる回。

暴力団フロント企業・仁愛興業に稲見(小栗旬)が潜入し、政治献金を梃子にした恐喝の証拠を押さえる――はずの任務が、気づけばもっと黒い目的のための“おとり”にすり替わっていきます。

公式と放送当時の一次・レビュー情報を突き合わせ、事実線を整理します。

留置場から始まる“初”潜入――沢田という“情”の相手

暴行罪を装って留置場に入った稲見は、仁愛興業の沢田(杉本哲太)に同郷・同中学を装って接近、出所後の“仕事口”を取り付けます。

表の任務は政治家恐喝の証拠収集。

ただ、稲見は接触を重ねるほどに、彼らに“狡猾さ”が足りない違和感と、“弟分”として可愛がってくれる沢田に対する罪悪感を募らせていく――この情動の揺れが、第5話の心臓部です。

仁愛興業の中枢へ――USBは“捨てる”判断

田丸(西島秀俊)から託されたハッキングUSBを忍ばせ、沢田に連れられて事務所の身分確認を通過……のはずが、徹底したボディチェックに稲見はUSBをトイレで廃棄。

トップの仁科(神尾佑)と会い、“携帯ナシ”の稲見は連絡用端末を渡される。

帰路、タクシー運転手に扮した吉永(田中哲司)へ報告――物理侵入は非現実的、建物ごと制圧するしかない、そして「ここまで狡猾には見えない」と違和感を共有します。

田丸の“灯台の光”――潜入が侵す境界線

球場での短い面談。田丸は自らの潜入経験を引き、「人を騙す罪悪感を消そうと“役になり切る”と、今度は“裏切り”の罪悪感に蝕まれる。正気を保つ鍵は“本当の人生に帰りたいと思える灯台の光”だ」と助言。

並走して描かれる教会の千種(石田ゆり子)のパートは、“潜入が日常を食い破る”現実を観客に返します。

“上”との直通――鍛冶と神谷

一方、鍛冶局長(長塚京三)は官房長官・神谷(石黒賢)に呼ばれ、今後は逐一報告し“指示を仰げ”と直通番号を手渡されます。

ここで初めて、特捜班の任務が政治の回路につながっていることが明確化。以後の不可解な采配に影が差します。

“今日が取引だ”――当日、尾行は白バンに潰される

沢田は「ヤクの取引が近い」と稲見に耳打ち。

特捜班は現行犯を狙うが、“なぜか”逮捕は見送りの上命。最小限の追尾に切り替えるも、白いバンの割り込みで車列は分断――稲見は孤立します。

地下駐車場の銃声――“壊滅”という結末

地下駐車場。取引の刹那、正体不明の2人組が乱入し無差別に発砲。

沢田を含む複数が倒れる。稲見は2人を制圧しながら、沢田の最期の吐息を聞く――「うまいもん、食いたかったな」。遅れて駆けつけた特捜班の前で、稲見は我を失い、田丸に腕を掴まれてかろうじて現実へ帰還する。

料亭の対峙――“すべてフィクションとして”語られる真相

鍛冶は高級料亭で神谷に詰め寄る。「私の部下をおとりに使ったな」。

神谷は「これはフィクションの話だが」と前置きし、要旨を語る――ある大企業が政治家との太いパイプを得るため裏金づくりに“薬物密輸”を用い、仲介に仁愛興業を立てた。

だが仁愛が独自の仕入れを広げ始め、もし摘発されれば芋づるで“大企業の犯罪”が露呈する。だから“外の人間に殺させた”。力なき者が欲をかくと酷い目に遭う――、と。つまり初めから壊滅させる標的だった。

稲見と鍛冶――「薄汚い仕組み」と「しなやかに動け」

神谷が去ったのち、鍛冶の前に稲見。「さっきのが黒幕ですか」。

稲見は「私が流した情報で人が殺された」と自責し、「薄汚い仕組みに加担した」と怒りを露わにする。鍛冶は静かに返す――「仕組みを変えたいなら、正義感で動きを不自由にするな。

善も悪も取り込み、しなやかに動け。蓄えた力で“本物の悪”を叩け」。稲見は「屁理屈ですよ」と噛みつき、「もし私が権力に逆らったら、殺しますか?」と言い残す。

ここで鍛冶は電話を取り、「例の件」を動かす。

“翌日”の報い――官房長官・神谷、少女買春容疑で逮捕

翌日のニュースは、神谷の少女買春容疑による逮捕。第2話で“消されかけた事件”が、政治の貸し借りのテーブルに乗り、一気に公へ反転する。

“貸し”の回収としての逮捕劇は、ただの爽快ではなく、同じ“運用”の論理が逆向きに働いたに過ぎないことも暗示する結末でした。

CRISIS(クライシス)5話を見た後の感想&考察

CRISIS(クライシス)5話を見た後の感想&考察

第5話の核は、「正義の装置は、誰のために回るのか」という問いです。

任務は“暴力団の恐喝”摘発から始まり、終盤で「国家が守るべき資本の都合」へ反転する。そこに挟まれた稲見の「嘘をつく自分への罪悪感」と沢田への情が、感情の推進力になっていました。

潜入=嘘の倫理、そして“灯台の光”

田丸の「本当の人生に帰るための灯台」という比喩は、潜入捜査が主体を二分する危険を具体化する言葉でした。

役になり切るほど“裏切っている罪悪感”に侵される――矛盾する二つの罪悪感が稲見の体温を下げていく。

教会で描かれる千種の“日常の浸食”は、その帰結線をさらに遠くへ伸ばします。職務の倫理が生活の倫理を侵す。その線引きはどこに置けるのか。第5話は問いだけを残し、答えは登場人物の肩に置いたまま走らせました。

任務の“表と裏”――おとりにされた特捜班

公式の骨子では“恐喝の証拠集め”。しかし実相は大企業の裏金スキームの防衛で、仁愛興業の壊滅が「正解」だった。

逮捕の中止、白バンの分断、二人組の襲撃――過程まるごと“段取り”だった可能性を拭えない。ここで浮かぶのは、「秩序維持のための違法」という倒錯です。

「違法」それ自体でなく、誰のために違法が起動されるのか。第5話はその選択権が“市民”ではなく“資本と政治”に偏っている現実を冷たく映しました。

鍛冶の現実主義――“しなやかに動け”は免罪符か

鍛冶のセリフは、耳ざわりの良いリアリズムです。

正義感で硬直するな、善悪まるごと飲み込んで動け――それは一面の真理であると同時に、「いま助けられない」の言い訳にもなり得る。

興味深いのは、その直後に鍛冶が「例の件」を動かし、神谷の“過去の不正”を公へ引きずり出したこと。

“貸し借り”の回路を逆用する形で現実的な制裁へ持ち込む——つまり鍛冶は言葉通り“運用”している。倫理は毀損されるが、結果は確かに生む。この両義性が、彼を“敵”にも“味方”にも決めきれない人物にしています。

沢田という“人間”――悪の中の温度

沢田は、粗暴だが面倒見がよく、“弟分”を可愛がる。

そのささやかな温度が、稲見の潜入に摩擦をつくった。だから銃弾に倒れた瞬間、我を失った稲見の表情は、ただの“失敗”ではなく「嘘の代償」として胸に刺さる。

敵でさえ人である――この当たり前を、乱射という不条理な暴力で叩き付ける脚本の硬度が見事でした。

“正義はどこで可視化されるのか”

最後に逮捕されたのは官房長官・神谷。

だが、それは正義の勝利というより、“同じ運用”を別方向に流用した結果です。

第2話で“消された”少女買春の件が、政治のテーブルに戻り、逮捕という形で一度だけ可視化された。可視化=正義ではなく、可視化=力関係の一時的な結果であることを、物語は隠さない。そこにこそ、クライシスというタイトルの意味が宿ると感じます。

シリーズ構造における第5話の位置

1話は「官を信じたい気持ち」と「国家が嘘をつく現実」の距離を提示し、2話はそのズレを生活の闇で描き、4話は国家と個人の救済の衝突を見せました。

5話はその集約で、特捜班自身が装置に組み込まれる展開を通じて、“現場倫理”の位置(=それでも人を守る)と“運用の正義”の限界を剥き出しにしています。

次話以降の“テロと国家”の直線的対決に、複雑な地盤を敷いた回だったと言えます。

アクションの説得力――“位置取り”で魅せる

派手さ以上に効いていたのは、タクシーでの極秘報告→白バンでの分断→地下駐車場の死角という“位置取りの編集”。

稲見の近接戦もクリンチと重心移動で魅せ、銃撃戦は短く、冷たく。身体×情報×段取りが噛み合う時、このドラマの倫理はアクションで説得されます。

まとめ

潜入=嘘は、正義の装置を回すための潤滑油でもあり、個人の倫理を削る刃でもある。

鍛冶の現実主義は、免罪符にも、現実を動かす具体的な力にもなり得る。可視化された正義(神谷逮捕)は、力学の産物であり、倫理の勝利と同義ではない。

それでも稲見は人を守る――この“現場倫理”が視聴者の拠り所で、シリーズの推進力だ。

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