第9話のオフィス爆破から直結する最終回。

特捜班は、国家の内部から崩壊し始めた秩序の中で“正義”を選ばされる。
生き残った稲見(小栗旬)たちは、爆破の背後に稲見の同期・結城雅(金子ノブアキ)の存在を突き止める。
かつて同じ戦場に立った仲間が、いまや国家への復讐者となっていた。
鍛冶(長塚京三)の命令はひとつ――「国家の秩序のために撃て」。
しかし稲見が見つめていたのは、“守るべき秩序”ではなく、“救うべき人間”だった。国家の運用と現場の倫理、そのどちらも正しいからこそ、銃口はぶれる。
そして最後に引き金を引くのは、制度か、それとも人か。
2017年6月6日(火)夜9時放送のドラマ「CRISIS〜公安機動捜査隊特捜班〜」10話(最終回)のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
CRISIS(クライシス)10話(最終回)のあらすじ&ネタバレ

最終回は、“国家の運用”と“現場の倫理”が正面衝突するシリーズの総決算。
第9話のオフィス爆破直後から物語は再開し、稲見(小栗旬)の“鏡像”である結城雅(金子ノブアキ)の真意が明かされる。
最後は「誰のための秩序か」という問いを宙に残したまま幕を閉じる。以下、公式情報を基に時系列で整理します。
プロローグ:爆破の“続き”から始まる再起動
前話の爆破直後。
吉永(田中哲司)が「10分休んで反撃開始だ」と仲間を鼓舞し、樫井(野間口徹)は爆弾の構造から「殺傷ではなく“警告”目的」と分析。
稲見は、自衛隊時代の任務で“国家のため”に人を殺めた経験を告白する。国民を守るつもりが、実際は国家の都合のために働いていた――その悔恨が、彼を特捜班へ導いたのだ。
大山の“罠”が噛む:結城の居場所を特定
オフィス爆破の際、大山(新木優子)は結城に強要された閣僚情報のコピーにウイルスを仕込み、接続の痕跡から潜伏先を割り出す。
稲見は単独で現場へ向かい、結城と対峙。互いの過去と信念をぶつけ合い、稲見は命を懸けて止めようとするが、田丸(西島秀俊)が駆けつけ制止する。ここまでが“反撃の第一段”。
「総理狙撃」の報が走る――だが現場には“違和感”
やがて「結城が総理・岸部(竜雷太)を狙撃」という速報が入る。
急行した稲見と田丸は、現場の不自然な状況から“真の標的”が別にあると察知。結城のPC解析から、1年前の“ガス爆発”が総理の息子の起こしたテロ事件の隠蔽だったと判明。
結城の婚約者はその事件で命を落としており、復讐の矛先は“帰国した息子”に向いていた。
“護衛”の再定義:特捜班は総理の息子を守れ
鍛冶(長塚京三)の命令で、特捜班は総理の息子・大介の警護にあたる。だが結城の襲撃が開始され、田丸・吉永・樫井・大山が次々と倒れる。
稲見は一人、結城と対峙。長い格闘の末に拘束するも、銃を撃たない。
「お前はもう死んだ。これからは、俺が羨むくらい生きろ」と告げ、“殺して終わらせない”という稲見の倫理を選ぶ。
力ではなく、赦しの形で決着がつく瞬間だ。
“公式の決着”――護送の刹那、狙撃
拘束直後、何者かが結城の胸を狙撃。即死。
あまりに迅速な“口封じ”に、田丸は「俺たちは囮にされた」と呟く。
総理・岸部と鍛冶は、息子を囮に結城を誘い出し、特捜班に逮捕させた上で彼を“記録から抹消”するつもりだった。
秩序の維持は、真実の消去によって成り立つ――その構図を冷ややかに映し出す。
エピローグ:誰も“元の位置”に戻らない
事件後、特捜班は“表”から外される。
樫井は机に爆弾の設計図を描き、「標的:警視庁」の文字を残す。
大山は再び闇ネットに潜り、禁断のハッキングに没頭。吉永は「評価は高い」と言われても、虚ろな目で天井を見上げる。
田丸は教会の男と再会し、“外の物語”に片足を踏み出す。稲見は部屋にこもり、孤独に拳を握る。
テレビの緊急ニュースが鳴り響き、画面は暗転。“ここから先”は観る者に託され、物語は静かに終わる。
CRISIS(クライシス)10話(最終回)の感想&考察

最終回は、結末を語らず“問いの配置”で終わる構成。
国家の運用と現場の倫理、公の秩序と個の復讐――シリーズ全体が積み上げてきた二項対立を最も緻密に噛み合わせた回でした。
結城=稲見の“鏡像”がもたらしたもの
結城は最強の敵であると同時に、選びそこなった仲間だった。
1年前の隠蔽事件(総理の息子の罪)が「国家のために働く」という信念を空洞化させ、彼を破壊した。
稲見の「お前はもう死んだ」という台詞は、復讐の亡霊から人間に戻れという願い。
倫理を銃弾の“逸れ”で語る演出が、この作品らしい重さを残した。
狙撃の政治学――“誰のために口を塞ぐのか”
護送中の狙撃は、国家が“秩序”を守るために真実を切り捨てる象徴。検証を封じ、正義を見せかけに変える。
「公の安定」は、常に「個の沈黙」に支えられているという冷徹な現実を示す。
現場は囮にされ、語られない真実だけが秩序の裏側に積み上がっていく。
エピローグの5カット――“反旗の予告”か、“疲弊の写し”か
爆弾の図面/ハッキング/虚ろな吉永/教会の男と再会する田丸/部屋にこもる稲見。
この5つの断片は、反乱の兆しか、それとも疲弊した現実の鏡像か。
ラストの「緊急ニュース」は観客に想像の責任を委ね、明確な勝利や敗北を示さない。“何を望むか”を視聴者に返す余白が、クライシスの終わり方の真価だ。
シリーズ総括――“可視化=正義”ではない、という結論
第1話の首輪爆弾から一貫して描かれてきたのは、「可視化=正義ではない」という視点。
最終回ではそのテーマを最大限に拡張し、国家が“見せたい真実”と“隠したい現実”の二層を明確にした。
可視化の政治を疑うまなざし――それがこの作品の倫理的背骨だった。
アクションが倫理を運ぶ――“逸れた一発”の意味
稲見が引き金を外す瞬間、倫理が言葉を超えて伝わる。
身体の動きで“殺さない”を証明するアクションの演出。
クライシスが持つ「肉体が思想を語る」構造の到達点であり、アクションが物語の哲学を運ぶ稀有な例となった。
最終回の“問い”
運用の正しさと倫理の正しさをどう両立させるか。
隠蔽は誰のために、どの程度“必要”とされるのか。現場は永遠に“囮”で終わるのか、それとも語る側に回れるのか。
クライシスは視聴者に答えではなく、想像の責任を託した。
緊急ニュースの向こう側に何を思い描くか――それが、あなた自身の“国家との距離”を映すラストでした。
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