ドラマ「あなたの番です」第3話は、ただの悪ふざけだった“交換殺人ゲーム”が、住民たちを縛る“ルール”として動き始める決定的な回です。
山際の生首、匿名の脅迫、宇宙人マスクの動画――現実離れした不気味さが藤井を追い詰め、彼はついに“最初の実行犯”として線を越えてしまう。
一方で、手塚夫婦は相変わらずの甘い日常を送りながらも、菜奈の胸には「言えない秘密」が少しずつ積もり始める。
平穏と狂気が同じマンションで同時進行する、この作品の本質が一気に立ち上がるのが3話だ。
ドラマ「あなたの番です」3話のあらすじ&ネタバレ

3話はざっくり言うと、山際を“殺してもらった”藤井が 「タナカマサオを殺せ」という強制的な圧力 に追い詰められ、ついに 初めて“ゲームのルールに従って殺人を実行した人物” になってしまう回です。
翔太と菜奈の“犬コロ夫婦の甘さ”と、藤井の精神崩壊が同時進行する強烈なコントラストも印象的でした。
山際の生首が消え、残されたのは「投票用紙」
2話ラスト、洗濯機から山際の生首が転がり出るという悪夢の場面。その直後から物語は再開します。
洗濯機を前に錯乱した藤井は部屋を飛び出し、エレベーターへ逃げ込もうとしますが、なぜかドアが開かない。非常階段に回ると、そこには 巨大クーラーボックスを運ぶ佐野豪(501号室) の姿。
運んでいる中身は不明ですが、視聴者には“嫌な想像”だけが残される形です。
さらに3階で尾野幹葉(301号室)と遭遇。動揺する藤井に尾野が軽いノリで、
「Dr.山際の生首でもあったんですか?」
と告げると、藤井は反射的に「ある」と漏らしてしまいます。
しかし尾野は、
「もし本当にあったなら、逆に犯人じゃないですよね」
と天然スマイルで畳みかける。この“冗談の境界が曖昧な怖さ”は、尾野のキャラクター性をさらに不気味に際立たせます。
慌てて戻った藤井が洗濯機を確認すると、生首は跡形もなく消えている。そのかわりに残されていたのは、藤井がゲームで書いた 「山際祐太郎」 の投票用紙。
つまり、
- 生首を運び出せる人物が部屋に侵入した
- 洗濯機を止め、証拠だけを置いていった
という“絶対に1人ではどうにもならない現実”が藤井にのしかかるわけです。
手塚夫婦の日常と、最初の“隠し事”の違和感
一方302号室では、翔太が山際殺人ニュースをワクワクしながら読み込み、すっかり“犬コロ探偵モード”。
「首を落として指紋を焼くって怨恨だよね!」
と推理を楽しむ翔太に対し、菜奈は交換殺人ゲームを思い出して顔が曇る。
動揺した菜奈は、うっかり翔太の歯ブラシを使ってしまい、翔太はそれを“夫婦の進展”と勘違いして喜ぶ。
さらに翔太は、
- 「お腹の音が聞こえるくらいくっついてたい」
- 「隠し事はしない。絶対」
と甘く抱き寄せるのですが、菜奈はその言葉に胸が痛む。
ここは単なるラブコメではなく “この夫婦にとって隠し事とは何を意味するのか” を象徴する重要なシーンでもあります。
マンション日常に忍び込む“悪意の種”
3話は、マンションの“普通の生活”に小さな殺意や悪意が混じりはじめる回でもあります。
●ゴミ置き場:木下あかねの不気味な忠告
藤井が山際の記事をチェックしていると、木下(清掃員)が現れ、
「分別しないと呪いますよ」
と真顔で警告。冗談にも聞こえない温度で視聴者の不安を煽ります。
●エレベーター:久住のドライバー
久住が何かをいじっていた痕跡を残したまま田宮に遭遇し、慌てて隠す。
この「何をしていたのか説明されない不穏さ」は後々の伏線に。
●北川親子の距離
妹尾あいりがそらを見つけ、母・澄香は仕事に夢中で育児を放置気味。
“子どもの孤立”が静かに描かれ、のちの展開とシンクロします。
●赤池家の“車椅子事件”
姑・幸子がわざと車椅子のストッパーを外し、坂道で転がすパフォーマンス。
周囲には“嫁を庇った”ように取り繕う姑の異常性が、早くもあらわになります。
こうした日常のカットはすべて、
「このマンションには、殺意のタネがそこら中に落ちている」
という実感を生むための布石になっています。
3回目の住民会:「殺人教唆」という爆弾ワード
田宮の招集で開かれた3回目の住民会。
ここではじめて、
- 藤井に複数の脅迫文が届いている
- その中に“殺人教唆”の説明書まで入っていた
ことが共有されます。
つまり、交換殺人ゲームに参加した住民は、全員“殺人教唆”で犯罪者になる可能性があるという現実が突き付けられるわけです。
住民たちは一気に青ざめ、浮田は「この場にいない奴が怪しい」と言い出し、疑心暗鬼が爆発寸前に。
田宮は正論で場を収めようとするものの、感情的に机を叩き、自分がケガをしてしまう。
田宮の“完璧さの崩壊”も、ここから始まります。
住民会の後、眼帯姿の黒島が現れ、その痛々しい姿に菜奈が声を掛けると、早苗が“SM疑惑”の噂を笑って話す。後から振り返ると、この笑いも相当ブラックです。
藤井を追い詰める“宇宙人”動画と脅迫の連鎖
藤井のもとには紙の脅迫だけでなく、メールでの脅しも飛んできます。
添付された動画には、
- 山際への殺意を語った藤井本人の音声
- “グレイ型宇宙人”の面をかぶった人物が、山際のタオルを持って脅してくる映像
が映し出される。最後に不気味な声で、
「さあ、あなたの番ですよ!」
藤井は完全に精神が崩壊し、住民全員に筆跡を書かせて回るという異常行動へ。
ここまでの流れで、“交換殺人ゲーム”が、藤井ひとりでは抗えない“システムとして動き始めた”ことが決定的になります。
タナカマサオの正体=ブータン料理店の店長・ドルジ(田中政雄)
藤井の頭を占拠していく「タナカマサオとは誰なのか?」という謎。住民たちは誰も該当者を知らず、藤井自身も完全に袋小路に。
しかし、彼の“偏った執念”がついに正解を掘り当てます。
病院勤務中、看護師・るりが「次の患者さん、タナカマサオさんです」と呼び入れると、診察室に入ってきたのは ブータン料理店の店長・ドルジ。
実は彼の本名が 田中政雄(タナカマサオ)。
関西出身の日本人で、店の雰囲気づくりのために外国人名を名乗っていただけでした。
さらに藤井は、
- シンイーの恋人・クオンが不法滞在者であること
- それをネタに、ドルジがシンイーへパワハラ・セクハラを続けてきたこと
を知り、“シンイーが書いた死んでほしい相手=田中政雄だ”と確信を強めていきます。
この「タナカマサオ=ドルジ」への到達シーンは、藤井の“自分は悪くない”という歪んだ正義感と、ゲームの“線でつながる構造”が一致する瞬間でもあります。
ガス爆発の夜:藤井は“殺したのか、殺していないのか”
その夜。閉店後のブータン料理店に藤井はこっそり侵入。
酔って眠り込んでいるドルジを横目に、藤井は厨房へ向かい、ガス管のホースを包丁で切断 します。
- 直接刺したわけではない
- しかしガス漏れに気づかれず、火をつければ爆発することはわかっている
という“未必の故意”のラインに、藤井はついに足を踏み入れてしまいます。
同じ頃、シンイーは寮で同居人から「藤井が店長について聞き回っていた」と知らされ、慌てて店へ電話。ちょうど目を覚ましたドルジは、酔い混じりの乱暴な口調のままタバコに火をつけます。
次の瞬間──店は大爆発。田中政雄(ドルジ)は死亡。
藤井が“直接手を下した”わけではないが、“死ぬ可能性を理解したうえでガス管を切った”のは紛れもない事実。
この“グレーな殺し方”こそ、交換殺人ゲームの倫理をさらにねじ曲げるポイントになっていきます。
翌朝:シンイーのベランダに突き立った包丁と「あなたの番です」
翌朝。
シンイーの部屋のベランダに置かれた植木鉢には、店の包丁が深々と突き立ち、刃には「あなたの番です」の文字。
- シンイーの書いた“タナカマサオ”は“処理”された
- 次に殺す番は“あなた(シンイー)”
という、恐ろしいバトンが確実に渡されたことを示す演出です。
2話ラストで藤井に向けられた“あなたの番です”は、ここでついに “チェーン構造の呪い”として住民同士を巡り始める。
「名前を書いた者 → 引いた者 → 殺された者」
この三角形の構図が、ゲームではなく“現実のシステム”として動き始めた瞬間です。
ドラマ「あなたの番です」3話の伏線

3話は、“タナカマサオ事件”がひとつのエピソードとして成立しつつ、後半の大事件に繋がる伏線が非常に多い回です。
ひとつずつ丁寧に整理していきます。
「タナカマサオ」の構図:書いた人/引いた人/殺した人
のちに住民が整理するように、
- 「タナカマサオ」と書いたのはシンイー
- その紙を引いたのが藤井
- 実際に田中政雄(ドルジ)を死なせてしまうのも藤井
という、交換殺人ゲームの“完全な動線”が3話で初めて成立します。
ここで重要なのは、この事件が
「書く」→「引く」→「殺される(に等しい)」
という三段階の“成功体験”になってしまった点。
「名前を書けば、本当に死ぬのかもしれない」という危険な期待が、住民たちの心理を一気に揺らし始める起点になるわけです。
大量の「あなたの番です」、宇宙人動画=“ゲームマスター”の存在
藤井に届いた脅迫の数々は、犯人像を大きく絞るヒントにもなっています。
- 「あなたの番です」という大量の脅迫文
- 住民会での藤井の発言を録音した音声データ
- 山際の生首を包んでいた藤井のバスタオルを持つ“宇宙人”動画
これらは犯人が、
- 住民会の“内部事情”を把握している
- 藤井の部屋に自由に出入りできる
という最低2つの条件を満たしていることを示すもの。この時点で視聴者は、“交換殺人ゲームを俯瞰して見ている人物=ゲームマスターの存在”を強く意識させられます。
のちの“黒幕構造”の理解にも直結する、重要な伏線です。
田宮のスパイカメラ=「記録の人」と「罪悪感」のライン
3話で田宮は、「マンションが不穏だ」という正義感に突き動かされ、あちこちに勝手にスパイカメラを設置し始めます。
背景には、
- 銀行時代に“見て見ぬふり”をして後悔した過去
- 「今度こそ正しい行動をしたい」という強い願望
という人格的コンテクストが伏線として置かれている。
この“記録”という行為は、
- のちに田宮が“証拠を握る側/握られる側”になる展開
- 正義感が暴走していく田宮ストーリー
とも強く結びついていて、10話以上前から仕掛けられた大きな伏線だと言えます。
木下あかね=「ゴミからすべてを知る人」の始動
ゴミ置き場で藤井に絡む木下あかね。3話の時点では「怖い清掃担当のおばさん」にしか見えませんが、
- 住民たちのゴミを定期的にチェックできる立場
- 雑誌の切り抜き跡なども“偶然目撃”できるポジション
という点で、“情報を握る人”として機能していきます。
のちに「扉の向こう」で彼女が“住民取材家”であることが明かされますが、その下地を3話から静かに仕込んでいるわけです。
赤池家の車椅子=“家庭内ホラー”の予告編
赤池美里と姑・幸子の散歩シーンで、幸子がわざと車椅子のストッパーを外して坂道を転がすという恐ろしい“嫁いびりパフォーマンス”が描かれます。
表向きは「嫁を守ったように見せる」
裏では「嫁を追い詰めるために事故を誘発する」
という二重構造の関係性。
これは後に502号室で起こる事件の“縮図”になっており、視聴者に「赤池家はいつか爆発する」という強烈な不安を植え付ける、重要な伏線です。
黒島沙和(眼帯)&SM疑惑=“被害者の顔に潜む違和感”
帰り道、眼帯姿の黒島が登場。
- 1話から続くDV匂わせ
- 早苗が口にする“SM疑惑”
これにより黒島は“ただの被害者”ではない可能性がうっすら提示されます。
後半のどんでん返しを知ってから振り返ると、この「黒島は“弱いだけの人”ではないかもしれない」という違和感は非常に重要です。
児嶋家の違和感:「風邪って言いなさい」の一言
子どもたちが、
「ママに“風邪って言いなさい”って言われた」
と口にするシーン。
これは、
- 本当の理由を隠すよう言い含められている
- 背後に大きな秘密がある可能性
を強く示唆する伏線で、後の「児嶋佳世失踪」ラインとの接続点になります。
何も起きていないのに“不穏”という点が、逆に強く印象に残る描写になっています。
ベランダの包丁=「番はリレー形式」の視覚的提示
3話ラスト、
シンイー宅のベランダに突き刺さる包丁と「あなたの番です」。
これは、
- シンイーが書いた“タナカマサオ”の処理完了
- 次のターゲット(番)はシンイー
という“交換殺人リレー”の明確な可視化。
「ゲームが終わらない仕組み」
を視覚的に理解させる、決定的な伏線です。
伏線のまとめ
3話は、
- 書く人
- 引く人
- 殺される人
- 次に殺す番の人
という“交換殺人の循環構造”が初めて完成した回。
ドラマ「あなたの番です」3話の感想&考察

ここからは完全に僕の視点で。
3話は、「あな番」という作品が単なる犯人当てミステリーではなく、“連鎖する加害”の物語なんだと分かってくる回だと強く感じました。
最初の“実行犯”が藤井だった、という絶妙さ
シリーズ最初に「自分の番」を行使してしまうのが、ポンコツで小心者の外科医・藤井だった──これがとにかく絶妙。
藤井は、サイコパスでも天才犯罪者でもない。偏差値の高い職業に就いているが、中身は
- 同期へのコンプレックス
- モテない劣等感
- 見栄とプライド
といった、ありふれた“しょぼい”感情を抱いたまま大人になった男。
そんな人間が、
- 「ルールだから」
- 「殺してもらった以上、お返ししないといけない」
という論理で追い詰められ、ガス管に手を出してしまう。
決して特別な悪ではなく、“どこにでもいる凡庸な人間”が加害者の最初の駒として動き出すことで、
「立場が違えば、自分も同じことをしていたかもしれない」
というイヤなリアリティを観客に突きつける。ここが3話最大のゾッとポイントでした。
「殺人教唆」でマンション全員を巻き込む脚本の攻め方
住民会で“殺人教唆”というワードが落とされた瞬間、物語の見え方がガラッと変わる。
それまでは
- 名前を書いた人
- それを殺した(かもしれない)人
の二者関係だけが議論されていた。
ところが「教唆」という法的概念が追加されるだけで、
「あの場にいた全員が“加害の当事者”に立たされる可能性がある」
という構図が生まれる。
被害者と加害者の線引きが一気に曖昧になり、“全員がどこかで人を追い詰めるかもしれない”という重たい視点に変わる。脚本の攻め方が本当に鋭い。
タイトルが“呪い”になった回:「あなたの番です」の変質
1話の「あなたの番です」はまだテーマ的な合図。
2話の藤井への手紙も、“ゲームの通知”くらいの印象だった。
しかし3話、“宇宙人マスク”が映像付きで
「さあ、あなたの番ですよ!」
と告げた瞬間、
タイトルそのものが“呪いの言葉”に反転した。
- 誰かの死が、次の誰かの「番」の開始
- 安堵した瞬間に「次はお前」
という地獄のバトンリレー。
しかもそれが
- 「ルールだから」
- 「みんなやってるから」
という“もっともらしい理由”で正当化されてしまう。現代の集団心理をエンタメに落とし込むセンスが、ここで一気に噴き出しています。
犬コロ夫婦の甘さが視聴者のメンタルを救う
藤井の精神崩壊、ガス爆発、脅迫の連鎖……。3話はかなり暗いのに、手塚夫婦の“甘さ”が唯一のオアシスでした。
- 菜奈が誤って翔太の歯ブラシを使ってしまう
- 「同じ歯ブラシって好きってこと?」と喜ぶ翔太
- 「お腹の音が聞こえるくらいくっついていたい」
- レタス丸かじりで拗ねる翔太
- 「おいで」と抱きしめる菜奈
この一連の“犬コロ夫婦劇場”が、3話の緊張を中和するクッションになっている。
甘さと地獄の同居。この緩急が、あな番の視聴体験を中毒性あるものにしていると感じました。
日常の隙間にある悪意ラッシュ:地獄はもう始まっている
3話は、事件以外の“日常カット”にも悪意の芽が詰め込まれていました。
- ゴミ置き場で「呪いますよ」と言う木下
- 車椅子のストッパーを外して転がす赤池幸子
- 不法滞在をネタにセクハラする店長ドルジ
これらはすべて、
「誰でも誰かの“死んでほしい相手”になり得る」
という空気を作るための布石。
殺意の正体って、必ずしも劇的事件から生まれるわけじゃない。こういう小さな歪みが積み重なっていくことこそが本質なんだと、脚本が静かに語っている印象でした。
「不参加の人が怪しい」という一言の深さ
浮田の
「ここにいない奴が怪しいんじゃねえの?」
という一言。
ただの住民同士の疑心暗鬼に見えて、実はものすごく意味深。
3話時点で“会合に来ていない人たち”のなかに、
- 黒島
- シンイー
- 児嶋
- 尾野
- 西村
など、“後の重要人物”が多すぎる。
脚本としての仕込みが本当に丁寧。
「誰が黒幕か」ではなく、「どこまで連鎖させてしまうか」
3話まで見てはっきりしてくるのは、あな番の怖さは
黒幕当てゲームだけじゃない
ということ。
- 名前を書く
- 紙を引く
- 脅される
- 実行する
- 次の番が回る
これらの役割が話数とともにシャッフルされ、キャラクターたちが“加害者/被害者/観客”を目まぐるしく入れ替えていく。
3話のタナカマサオ事件は、そのシステムが初めて完成した回。
ここから歯車が止まらなくなる。藤井がガス管を切った瞬間、マンション世界の“不可逆性”が決定づけられたのだと思います。
ドラマ「あなたの番です」の関連記事
過去の話についてはこちら↓



コメント