2016年夏の注目ドラマの1つに毎週日曜日夜9時よりフジテレビ系列で放送されるドラマ「HOPE〜期待ゼロの新入社員〜」。
第1話は、「夢が終わった翌日にどう生きるか」という問いから始まる。
幼い頃から囲碁に全てを懸けてきた一ノ瀬歩(中島裕翔)は、最後のプロ試験で落選し、夢を失う。進学も就職もせず、夢だけを追ってきた彼の前に残ったのは、現実という新しい盤だった。
母の支えで偶然掴んだチャンス――総合商社・与一物産の1ヶ月インターン。“期待ゼロの新入社員”として迎えられた歩は、コピーも取れず、英語も話せず、ただ叱られ、打ちのめされる。
それでも彼は、自分の手で「働く意味」を見つけようと立ち上がる。
夢の続きではなく、現実の中での再挑戦が静かに動き出す。
ここからドラマ『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』第1話のあらすじと感想・考察を紹介します。
※以後ネタバレ注意
HOPE(ドラマ)第1話のあらすじ&ネタバレ

囲碁に賭けた青春の終わり
一ノ瀬歩(中島裕翔)は幼い頃から囲碁に夢中で、将来はプロ棋士を目指し青春の全てを囲碁に費やしてきた。
しかし高校時代に父が他界し、家計を支えるためにアルバイトをしながら勉強を続けるも、大学進学は諦めざるを得なかった。
日本のプロ棋士採用試験には「23歳未満」という年齢制限がある。22歳の歩は最後の挑戦に全てを懸け、アルバイトを辞めて試験に臨むが、試験前夜に母・一ノ瀬夕紀(朝加真由美)が過労で倒れ動揺。そのまま敗退し、夢は終わりを告げた。
新たな道へ――“働く”という現実
夢を失った歩を見かねた母は、自らの負い目を抱えながらも知人のつてを頼り、総合商社・与一物産の専務・鷹野義郎(風間杜夫)に接触。
その結果、歩は採用最終段階として1ヶ月のインターンシップに参加できることになる。現場での働きぶりが採用に直結する実戦型の試験だった。
営業三課での初日――現実の壁
配属先は営業三課。課長・織田勇仁(遠藤憲一)、主任・安芸公介(山内圭哉)のもと、歩は初日から苦戦する。
コピー機のトナー交換もわからず、英語での電話対応もできず、同じインターンの桐明真司(瀬戸康史)や香月あかね(山本美月)に助けられる。
さらに“高卒”であることや、専務コネで採用されたという噂が広まり、同期の人見将吾(桐山照史)にもその話が伝わってしまう。
「明日から来なくていい」――織田の叱責
外回りに同行した打ち合わせで何もできなかった歩に、織田は「明日から来なくていい」と突き放す。
理由を問う歩に、織田は静かに問い返す。
「今まで一度でも何かに必死になったことがあるか」
「夢を追いかけてきました」と答える歩に、織田は言う。
「夢に挫折したからここに来たのか? 夢の代わりに会社を選んだのか? 今ここで必死に戦ってる奴らに失礼だ。」
この一言に、歩は何も言い返せなかった。
母の言葉が支える再起
日本棋院の師匠に「悪くはなかった」と声をかけられた夜、帰宅した歩の部屋には、母からの新しいスーツとメモが置かれていた。
「これから一ヶ月、これ着て頑張って。あんたなら大丈夫! 母」
歩は囲碁盤を片付け、「与一物産で本気を出す」と決意する。
現場で試される覚悟――コンテナの夜
営業三課にインドネシアからの鉄鋼不良の連絡が入り、織田は手の空いたインターンたちを連れて現場へ。
不良鉄パイプを選別する作業で、歩はなぜか一人残されてしまう。作業を終えた頃には周囲に誰もおらず、スーツは汚れ、携帯は壊れていた。
夜、会社に戻ると香月あかねが驚きの表情を見せる。その後、桐明たちが飲み会に呼び出され、織田が現場が完璧に片付いていたことを報告。「あれをやったのは歩だ」と知った桐明は、静かに頭を下げる。
見えないところで働くことの価値を、歩は体で知る。
誰かのミスをかぶる――“関係の責任”
後日、ロビーで営業三課の資料が落ちているのを専務・鷹野が発見。織田は激怒し、歩は自分のミスとして謝罪。
「出て行け、二度と顔を見せるな」と叱責を受けるが、実際に書類を落としたのは別のインターン・長井(加治将樹)だった。
歩はそれを知りながらも黙っていた。
後に織田と安芸が真相を知り、歩を呼び戻して無罪を告げる。歩は「誰かの役に立ちたい」「誰かと一緒に働きたい」という想いを初めて言葉にする。
プレゼン試験へ――“自分の意思で選ぶ”一歩
最終試験のプレゼンパートナー指名で、歩は複数の誘いを受けるが、「高卒と組めば引き立て役になる」と安芸に言われ落ち込む。
それでも歩は、戦略的な人見をパートナーに選ぶ。
そして第1話は、囲碁盤を片付けた青年が“働く盤”に再び座る姿で幕を閉じた。
HOPE(ドラマ)第1話の感想と考察

「夢の代わりに会社へ来たのか」――現実と誠実の対話
第1話で織田が放つこの言葉は、ドラマ全体のテーマを凝縮している。
会社は夢の避難所ではなく、今を生きる戦場。敗者復活の物語でありながら、“甘えを許さない現実”が物語の骨格を支えていた。
コンテナの夜——“過程に宿る尊厳”
一人残された現場作業で、歩は「働く」とは誰かのために体を動かすことだと知る。
スーツを汚し、報われなくても、最後までやり切る。その“過程の誠実さ”こそ、会社で生きる第一歩だった。
公平より“関係”を選ぶ勇気
書類事件で他人の過失をかぶる歩の行動は、正しいとは言えない。
だが、組織の中で信頼を得るのは「正義」よりも「誠意」だと教える。
公平は正しいが、関係は強い。 この関係性の哲学が、のちの人間ドラマを支えていく。
織田という“現場の哲学”――怒りの中の温かさ
織田の厳しさは排除ではなく教育。
怒りの裏には、歩の本気を引き出す狙いがある。
結果を求めながらも「努力を拾い上げる上司像」が、このドラマの現場の信頼を象徴していた。
同期4人の布陣と“働き方の四象限”
桐明(能力×矜持)/あかね(才色×実務)/人見(要領×戦略)/歩(覚悟×伸びしろ)。
それぞれが会社の中の異なる矢印を担い、歩の成長物語に厚みを与えている。
ローカライズの妙——『ミセン』が日本で鳴らす音
原作『ミセン—未生—』をベースに、日本版では「人に借りて、人に返す」という関係の物語として再構築されている。
母のスーツや身代わりの謝罪など、“情の連鎖”を強調した演出が印象的だった。
主題歌「コメット」——希望は過程の中にある
スピッツの主題歌「コメット」が流れる瞬間、歩の再起が音楽に重なる。
希望は結果ではなく、日々の努力の過程に宿る。第1話は、“期待ゼロ”の主人公が初めて自分の一手を打つ物語として、静かに力強く幕を閉じた。
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