シーズン3の幕開けとなる第1話は、「密室の謎」という王道タイトルを掲げながら、鍵やトリック以上に厄介なもの――言葉そのものが人を縛る恐怖を突きつけてきます。
舞台は長野県・蛾眉村。森の開発を巡る対立の中心にいるのは、「口にした言葉が現実になる」と信じられている男・芝川玄奘。
彼の“自殺宣告”を受けた開発会社社員が、密室で命を落としたことで、村の空気は一気に呪いへ傾いていきます。
真相は次回へ持ち越される前後編構成。第
1話は、逃げ道のない状況だけを丁寧に積み上げる、胃の重い導入回です。
※この記事は、木曜ドラマ『TRICK』第1話「密室の謎 言霊で人を操る男」で描かれた範囲の“がっつりネタバレ”です。なお、この事件は前後編構成のため、真相の核心は次回(解決編)へ持ち越されます。
トリック(シーズン3)1話のあらすじ&ネタバレ

まず舞台と事件の匂い|長野県・蛾眉村に“言葉が現実になる男”が現れる
シーズン3の幕開けを飾る第1話は、タイトルからして「密室の謎」。
なのに出てくるのは鍵のかかった部屋だけじゃなく、“言葉で人を操る男”という、オカルトの王道みたいな存在だ。
舞台は長野県蝨郡蛾眉村(がびむら)字虻(あぶ)。地名からして虫だらけで不穏なのに、実際に村の名物も「ガッツ石松蟲」や致死性の毒虫など、ネーミングセンスが相変わらず悪ふざけの極み。笑わせに来ているのに、笑っていいのか怖いのか分からない、TRICKの温度感が戻ってくる。
この村では森のリゾート開発計画が進む一方で、開発反対派の“信者集団”が森に居座っている。
その中心にいるのが芝川玄奘(しばかわ げんじょう)。口にした言葉がそのまま現実になる――そう信じられている男だ。彼が何かを言うと、人は意志とは関係なく“その通り”に動き、自然現象や景色さえ変わったように見える。開発関係者が次々と事故に遭う中で、ついに調査が始まる。
山田奈緒子、人生の底からスタート|家賃値上げと“323円”が突き刺さる
シーズン3の第1話がまずやるのは、事件の導入より先に「奈緒子の生活の詰み具合」を更新すること。
池田荘で暮らす奈緒子に容赦なく降ってくるのが、家賃の値上げ。これまででも十分ギリギリだったのに、ここで追い討ちをかけるのがTRICKだ。視聴者が「また貧乏ネタか」と思った瞬間、そこに重ねてくるのが“給与323円”という数字。冗談みたいなのに、言い逃れできない具体性が妙にリアルで、笑いが一段冷える。
ここで登場するのが上田次郎。
新刊を引っ提げて(いかにも上田が言いそうなタイトルのやつ)、奈緒子に「リゾートに連れていく」的な甘い餌をぶら下げる。もちろん、そんな好意で動く男じゃない。奈緒子も分かっているのに、分かっていても生活が苦しいから、つい“釣られてしまう”。この「分かってるのに、引っかかる」構図が、後でこの回のテーマときれいに重なる。
依頼人・相沢の焦り|「インチキを暴いてくれ」なのに、先に“自殺宣告”される
今回の依頼人は、開発会社勤務の相沢。森の開発が止まって困っている側の人間だ。彼は玄奘の信者集団に潜入するが、そこで玄奘からとんでもない言葉を投げられる。
「お前は自ら命を絶つ」――“予言”というより“宣告”。
TRICKの霊能力者(自称)たちはいつも「信じさせる」ために脅しも使うが、玄奘は言葉の圧が一段違う。しかも玄奘は、ただの怪しい宗教家ではなく、元国語教師という経歴を持つ。言葉の扱いに“職業としての手触り”があるのが嫌だ。
相沢は当然パニックになる。潜入調査のつもりが、いつの間にか“自分が実験台”にされている。
だからこそ、彼は上田に泣きつく。「あいつのインチキを暴してくれ」。上田としては、こういう“権威からの依頼”は得意分野だ。しかも相手は「言葉で現実を変える男」。物理学者のプライドを刺激するには十分すぎる題材である。
蛾眉村へ|“危険な自然”と“危険な信仰”が同じ顔をしている
上田と奈緒子は蛾眉村へ向かう。村の空気は一言でいうと「閉じている」。
外部の人間が来ること自体を歓迎していないし、森そのものが“神域”として扱われている。開発反対の言い分は一見もっともに聞こえる。でも、そこに玄奘という存在が混ざった途端、反対運動は“思想”から“信仰”へと滑っていく。論点がずれる。理屈じゃ勝てない領域に持ち込まれる。
そしてこの回は、森の脅威を「集団心理」と並走させて描く。
村には危険な虫がいる(しかも名前がひどい)。対策として“蚊・虻・蠅除けの線香”が用意され、殺虫剤の名前もまた悪ふざけ全開。笑わせに来るのに、同時に「この場所はマジで危ない」と思わせる。つまり、視聴者の警戒心が上がった状態で、玄奘の言葉が刺さる仕掛けだ。
この“危険”は、ただの自然リスクじゃない。信者たちの目、距離感、同調圧力……それ自体が虫より怖い。TRICKの村回が怖いのは、妖怪より呪いより、結局「村の空気」だからだと、久々に思い出させてくれる。
芝川玄奘、初登場でやりたい放題|雷を呼び、山を消し、言葉で人を縛る
玄奘は言うだけで雷を呼び、山を消したように見せる。もちろん“見える”だけかもしれない。
でも問題は、村人たちがそれを疑う余地なく信じていること。奇術師の奈緒子は「見せ方」の怖さを知っているし、上田は「信じた瞬間に負ける」構図を知っている。だからこそ、二人にとっては戦いやすい相手のはず……なのに、玄奘の厄介さは“現象”より“言葉の運用”にある。
玄奘は“呪いの言葉”を個人に向けて放つ。たとえば相沢への自殺宣告みたいに。
これがただの脅しなら、無視すればいい。だが村という閉鎖空間では、無視できない。周囲が「あなたは自殺する」と信じ始めた瞬間、その人の行動が変わる。監視され、追い込まれ、逃げ道を奪われる。言葉が現実を動かすというより、言葉が人間関係を歪めて現実を作る――その怖さが、前半から滲んでいる。
“密室”が用意される夜|相沢、閉じ込められ、追い詰められ、そして…
第1話の中盤以降は、相沢の恐怖が軸になる。玄奘の信者集団に潜入した相沢は、外部の人間として浮く。
しかも玄奘から“自殺する”と言われたことで、本人が怯え始める。ここがTRICKの意地悪いところで、相沢が理性的なままなら“予言”は成立しにくい。でも怯えた瞬間に、成立しやすくなる。本人が自分を疑い始めるからだ。
そして迎える夜。相沢は部屋に閉じこもり、扉を閉める。村の空気は、ただの脅しでは終わらない。
外からじわじわと圧をかける。“言葉”で追い詰める。最悪なのは、玄奘本人が直接手を下さなくても成立してしまう点だ。信者が代わりにやる。つまり、玄奘の能力が本物かどうか以前に、「能力があると思わせる運用」が完成している。
翌朝、相沢は遺書とともに死体で発見される。しかも警察は自殺と断定する。ここでタイトルの「密室の謎」が効いてくる。
自殺という結論が一番ラクで、村の空気とも合致する。だからこそ「密室=超常現象かも」という匂いが残る。上田と奈緒子は当然納得しないが、第1話の時点では“反撃の武器”がまだ揃っていない。
黄色いカードの予言|“選べるのに選べない”という地獄の引き
相沢の死で村の空気が決定的に傾いたあと、玄奘は奈緒子に“試験”を仕掛ける。
複数色のカードを提示し、「あなたは必ず黄色いカードを選ぶ」と言い放つ。しかも条件が最低だ。「黄色を選べば上田さんは亡くなる」。普通に考えれば、黄色を避ければいい。色は見える。選択の自由はある。――なのに、玄奘は“避けられない”と言い切る。
ここで怖いのは、超能力の有無ではなく、「奈緒子が黄色を選ぶしかない」と感じさせる状況づくりだ。奈緒子は奇術師で、嘘を見抜く側の人間なのに、追い詰められた空気の中では“普通の人”になってしまう。
上田は理屈で止めようとするが、理屈が効かない瞬間がある。第1話は、この最悪の二択(いや一択)を提示したところで終わる。密室の謎も、相沢の死の真相も、玄奘の正体も、まだ全部“未解決”。でも視聴者の胃だけは、ちゃんと重くなる。
サブストーリーの挿入|「神の象の像」を探す男が、別の“縦糸”を持ち込む
この回のもう一つの特徴が、事件とは別に「神の象の像」を探す謎の男が登場すること。
今すぐ玄奘事件を解決しなきゃいけないのに、唐突に別の匂いが混ざる。
けれどTRICKはこういう“寄り道”が、後で急に本線になる。神の象の像は、エピソード5へ続く重要なシーンとして仕込まれている。つまり第1話の段階で、シーズン3の縦軸の入り口がもう開いている。
トリック(シーズン3)1話の伏線

第1話は「解決編に続く前編」なので、伏線の量が多いです。しかもTRICKは、伏線を“事件のため”だけでなく、“人間関係のため”にも撒く。だからここでは「次回で回収される謎」と「後半(最終章)まで残る縦糸」を分けて整理します。
“言霊”は能力ではなく「運用」かもしれない(集団心理の装置)
玄奘の最大の武器は、「現象」そのものより「言葉の流通」だ。彼が何か言う→信者が拡散する→村の空気が一斉にその方向へ向く。
ここまで整うと、本人が動かなくても“現実が寄ってくる”。第1話はこの運用モデルを、相沢への自殺宣告と、その後の村の圧で見せている。玄奘が本物か偽物かはまだ不明なのに、怖さだけは成立している。
相沢の「密室死」は、トリックの材料が揃いすぎている
相沢が死んだ部屋は“密室”。しかも現場は森の中、虫が多い、対策の線香や殺虫剤がある。TRICKはこういう小道具を「ギャグ」で出しながら、後でちゃんと“仕掛け”にすることが多い。
第1話は、まだ答えを言わない代わりに、材料だけは画面に落としているタイプの前編だ。
「柴咲香」「ハネアリイヤーン」などの小道具は“現場のルール”を決める
蚊・虻・蠅除けの線香「柴咲香」や、殺虫剤「ハネアリイヤーン」みたいな“ふざけた名前の道具”は、笑わせつつ「この森ではこうやって身を守る」というルールを視聴者に刷り込むために出てくる。
ルールが刷り込まれると、次回以降そのルールを逆手に取ったときに効いてくる。TRICKの小道具は、だいたい後で裏切ってくる。
黄色いカードは「選択」を偽装する(奈緒子と上田の関係性テスト)
「黄色を選べば上田が死ぬ。それでも必ず黄色を選ぶ」――これは能力テストに見せかけて、実は奈緒子の心理を縛るテストだ。奈緒子が“上田を助けたい”と強く思うほど、黄色を避けようとしてしまう。
避けようとするほど、玄奘の言葉が頭の中で増幅する。第1話のラストでこの罠を置いた時点で、次回は「奈緒子がどう動くか」だけでなく「上田が奈緒子をどう扱うか」まで問われる。
玄奘が“奈緒子の出生”を知っているのが不気味すぎる
第1話の段階で一番背筋が冷えるのは、玄奘が奈緒子の“出生”に触れてくる点だ。
これは事件の謎とは別ベクトルの怖さで、奈緒子がただの巻き込まれ体質ではなく、「狙われる理由がある側」へシフトしていく予兆でもある。前後編の事件が終わっても、この違和感は残るやつ。
伏線6|「神の象の像」が差し込む“縦軸”の入口
第1話は玄奘事件の前編なのに、別口で「神の象の像」を探す男が動き出す。
これ、見てる最中は“コント挟んだ?”くらいの温度で流しがち。でも後で振り返ると、シーズン3の終盤へ繋がる“入口”がここにある。TRICKは、入口がギャグであるほど、後から効き方が怖い。
トリック(シーズン3)1話の感想&考察

第1話は、シリーズの“型”に忠実なのに、見終わった後の胸糞(と言ったら言い過ぎかもしれないけど)の残り方がちょっと強い回でした。
笑えるのに、笑いが救いになり切らない。だからこそ「解決編を見るまで落ち着けない」引きが上手い。
“言霊”は超能力じゃなく、言葉が持つ「支配の技術」
玄奘の怖さは、「雷を呼ぶ」「山を消す」みたいな派手な奇跡より、「人が人を追い詰める仕組み」を言葉で作るところにある。言葉が現実になる、という言い方はロマンチックだ。でも現実の言葉は、もっと地味に、もっと陰湿に人を縛る。
誰かが言う。「あいつは自殺する」。周囲が言う。「自殺する顔をしてる」。本人が思う。「自分は自殺するのかもしれない」。――ここまで来ると、超能力がなくても、現実は動く。第1話はその“怖い方の言霊”を、相沢で見せてきた。
奈緒子の貧乏ギャグが、今回だけは「笑ってられない」
いつもなら「また貧乏か〜(笑)」で済む奈緒子の生活描写が、この回は妙に刺さる。家賃値上げで追い出される、って現実にあり得るし、323円みたいな数字を出されたら「いやそれはないだろ」と笑いながらも、胸の奥がちょっと痛い。
この“生活の弱さ”があるからこそ、上田の餌に釣られるし、村の空気にも飲まれかける。つまり奈緒子の貧乏は、単なる設定ではなく「揺らぎやすさ」を作る要素になっている。TRICKって、ギャグ装置をちゃんとドラマの弱点にしてくるのがずるい。
ガッツ石松蟲のインパクトが、ホラーの緊張を一瞬だけ破ってくれる
SNSっぽい反応で言えば、やっぱりこの回は「ガッツ石まっ虫」が強い。顔の圧がバカすぎて、そこだけ別番組みたいになる。殺虫剤をかけた羊羹を口にする奈緒子(みたいな“食べちゃう系の無敵さ”)も含めて、TRICKの「命が軽い笑い」が一瞬挟まる。
ただ、その笑いがあるからこそ、相沢の死が重く見える。ギャグで油断させて、次に不穏で殴る。TRICKの悪趣味な編集感覚が、シーズン3の冒頭から加速している気がした。
黄色いカードは「選ぶ/選ばない」じゃなく「選ばされる」恐怖
第1話ラストのカード予言、あれは事件解決のための謎というより、視聴者の心を縛るための装置だと思う。
色が見えているのに、選べない。選べるように見せて、選ばせる。これって、宗教や共同体の同調圧力がやっていることと同じだ。村の信仰もカードも、形式は違うけど、構造が同じ。
そしてそれを奈緒子にやらせるのがえげつない。奈緒子は奇術師で、普段は“見せ方”で相手を操る側。でも今回は逆に操られる側に立たされる。だから怖い。
上田と奈緒子の関係が「事件の一部」になる回は、やっぱり強い
TRICKの面白さって、事件のトリックだけじゃなくて、上田と奈緒子の関係そのものが“事件の装置”になる瞬間にあると思う。今回のカードもそう。
上田は論理で止める。奈緒子は感情で揺れる。二人の欠点が噛み合った時、第三者(玄奘)に隙を渡す。つまり「二人の関係が完成していない」こと自体が、毎回事件の穴になる。
でも、完成しないからこそ続くのもTRICKで、エンディングで“近づきそうで近づかない”余韻を置くのも、分かっていて悔しいくらい上手い。
「神の象の像」は、笑いの皮を被った“縦軸の爆弾”
最後にもう一つ。第1話の段階で「神の象の像」を探す男を出してくるの、普通に考えたら過積載なんだけど、TRICKはそれをやる。
で、やっておいて「はい、次回は玄奘解決編ね」って戻す。視聴者の脳内に“未処理フォルダ”を増やして、いつかまとめて回収(あるいは回収しない)する。これが後の黒門島だとか、奈緒子の縦糸だとか、シリーズの深みへ繋がっていく予感がして、1話目から期待値が上がる。
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