『離婚しない男』というタイトルは、強い意志の宣言に見えます。
けれど原作と続編を最後まで読むと、それが単純な“我慢”や“執着”の物語ではなかったことに気づかされます。
妻の不倫、親権争い、復讐、冤罪、托卵。
原作では新聞記者・岡谷渉が、CASE2では俳優・永瀬丈(ナガジョー)が、それぞれ別の地獄に放り込まれながら、共通して「父であること」を試されていきます。
そしてどちらの物語も、皮肉にも最終話のタイトルは「離婚した男」。
なぜ“離婚しない男”は、最後に離婚という結末へ辿り着いたのか。それは敗北でも逃げでもなく、壊れた関係の先で選び直した「責任」の形でした。
この記事では、
原作『離婚しない男』全3巻と、続編『離婚しない男 CASE2』全7巻を通して、
物語のネタバレ・伏線・最終回の結末を整理しながら、
このシリーズが一貫して描いてきたテーマ──夫婦は壊れても、父であることは終わらないという答えを読み解いていきます。
ドラマ版をきっかけに原作が気になった人も、CASE2まで読んで胸に何か引っかかりが残った人も、一度ここで、物語全体を振り返ってみてください。
漫画「離婚しない男」とは?(原作情報)

原作『離婚しない男』は、大竹玲二先生による漫画で、「ヤンマガWeb」で連載された作品です。連載期間は2022年9月21日から2023年7月19日まで。コミックスは全3巻で完結しています。
物語の核はとてもシンプルですが、その分、深く刺さります。
- 主人公・岡谷渉は、妻の不倫を目撃して離婚を決意する
- しかし現実は、「父親が親権を取れる確率はかなり低い」
- だからこそ娘を守るために、“離婚しない”という戦術で戦う
この「離婚したいのに、離婚しない」という矛盾が、読み進めるほど胸を締めつけてきます。
【ネタバレ】漫画「離婚しない男」全巻あらすじ(1巻〜3巻)

ここからは、巻ごとに「何が起きたのか」を整理しつつ、登場人物たちの感情の動きもあわせて追っていきます。
1巻ネタバレ:完璧なイクメンの“仮面”が始まる
岡谷渉は新聞社のエース記者。家庭も順調に見えていましたが、ある日、妻・綾香の不倫現場を目撃してしまいます。
そこで突きつけられるのが、「父親が親権を取るのは厳しい」という現実。
渉は娘を手放したくなくて、仕事のキャリアすら捨てる覚悟で、育児の実績を積む方向へ舵を切ります。
この1巻で特にゾッとするのは、渉が「気づいていないフリ」を完璧に演じるところです。
怒りも屈辱もすべて飲み込み、笑って、優しい夫を続ける。
この我慢は、恋愛のすれ違いではなく、「親権」という現実のためだからこそ、余計に痛い。
さらに渉は証拠集めにも動き始めます。探偵・三砂、弁護士・財田といった協力者の存在が見え始め、「戦い」が本格化する巻です。
2巻ネタバレ:ハニートラップ疑惑と“揺さぶり”の連続
2巻は、とにかく揺さぶりが多い巻です。
渉が離婚に向けた準備を進める一方で、不倫相手・司馬真斗(マサト)が、渉の神経を逆撫でするように近づいてきます。
しかも“偶然を装った仕掛け”が増えていき、疑念と緊張感が積み重なっていく。
さらに渉の周囲には、距離を詰めてくる女性たちが現れます。
「これは全部ハニートラップなのでは?」と疑心暗鬼になりながらも、渉は自分を律し続け、“夫”を演じることをやめません。
ここが本当にしんどいポイントです。
浮気された側は、本来なら怒っても泣いてもいい立場なのに、渉は親権のために感情を表に出せない。感情を押し殺すほど、相手に主導権を渡してしまう――そんな冷たいルールの中で、必死に耐える姿が胸に刺さります。
3巻ネタバレ:真斗の正体、そして親権争いの決着
3巻は、一気に“真相回収”が進む巻です。
渉は罠にかけられ、浮気の証拠を作られそうになります。
不倫相手・真斗は、渉が離婚に踏み切るよう誘導し、社会的に追い詰めるための罠を張り巡らせていました。
ここで、ただの不倫劇ではない“悪意の濃さ”がはっきりしてきます。
そして最大の爆弾が、真斗の正体です。
- 真斗は渉の中学・高校時代の同級生で、かつては親友だった
- さらに2人は腹違いの兄弟
- 真斗は、渉の父の不貞によって生まれた子で、渉に強い恨みを抱いていた
この事実が明かされた瞬間、物語の温度は一気に変わります。
「不倫相手」だと思っていた存在が、家族の闇そのものだった――この反転は、かなり強烈です。
そして離婚・親権の局面では、綾香側も反撃に出ます。
渉は追い詰められながらも、最後は決定的な局面へとたどり着き、最終的に娘の親権を獲得します。
漫画の最終回(最終話)の結末は?最後はどうなる?
原作漫画の最終話タイトルは、「【最終話】離婚した男」です。
このタイトル自体が、読者の心を強く刺してきます。
散々「離婚しない」と戦ってきた男が、最後は「離婚した男」になる。
この反転は、単なる言葉遊びではなく、渉が失ったものと守ったもの、そのすべてを総括するためのタイトルでした。
最終回の結末ポイント(ネタバレまとめ)
- 最終局面で、渉は切り札となる証拠を持って戦いに出る
- 渉は娘の親権を獲得し、親としての責任を果たす
- 「離婚した男」というタイトル通り、夫婦関係には明確な区切りがつく
ここで印象的なのは、“勝った後”の空気です。
勝てばスッキリ、とはならない。
裁判も、離婚も、親権争いも、勝ち負けが決まった瞬間に「今日から幸せ」になるわけではありません。
さらに、綾香の不倫動機を知った渉が、思わず謝ってしまう描写があります。
綾香も泣きながら、自分の寂しさを吐き出す。
この場面は、「許せる/許せない」という単純な話ではありません。夫婦は、どちらか一方が完全に悪い、で終われるほど単純な関係ではない。
もちろん不倫は許されない行為です。
それでも、渉が仕事優先で家庭を顧みなかったことが、綾香の孤独を育てたという事実も、同時に置かれます。
だからこの最終回は、
復讐を止める話でもなく
夫婦が元に戻る話でもなく
「もう戻れないことを認めたうえで、それでも子どもを守る」
という、現実的で苦い決着に見えました。
そしてもう一つ、真斗の存在。
真斗の復讐の根っこには、「自分だけが不幸だった」という絶望があります。
渉に向けた憎しみは、歪んだ家族関係の出口だった。
渉が真斗を完全に憎みきれない空気が残るのも、つらいけれど、とても人間らしい描写だったと思います。
この漫画は、勝ち負けでは終わりません。
傷を抱えたまま、それでも前に進く人間の物語として、強く記憶に残るラストでした。
「原作」と「ドラマ版」の結末は違う?

ドラマ版の最終回は、かなり派手な事件が重なります。
誘拐や爆弾のトラップといった極端な状況まで描かれ、緊迫感は終始マックスでした。
そして結末として語られるのは、娘の
「パパとママ、両方と一緒にいたい」
という願いを受け止め、渉が綾香と“離婚しない”ことを選ぶ流れです。
一方で、原作漫画の最終話タイトルは「離婚した男」。
「離婚しない男」として戦ってきた主人公が、最後に「離婚した男」になるという、この皮肉な反転が、原作の苦さであり、同時にリアルさでもあります。
ドラマは“再生”を選び、原作は“決別”を選ぶ。
同じ物語を土台にしながら、たどり着く場所ははっきりと違っています。
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よくある質問:漫画「離婚しない男」は完結してる?全何巻?
原作漫画『離婚しない男』は、全3巻で完結しています。
さらに、登場人物を変えた続編として
『離婚しない男 CASE2』
も連載されており、こちらは別主人公による新章として描かれました。
「3巻って短くない?」と感じるかもしれませんが、その中には
・親権という現実
・復讐の連鎖
・夫婦関係の破綻
がぎゅっと凝縮されていて、むしろ密度が非常に高いタイプの作品です。
1作目のまとめ:原作の最後は“勝利”だけじゃなく、痛みも残る結末
原作漫画『離婚しない男』は、ただの不倫ざまぁ系作品ではありません。
親権という現実、夫婦のすれ違い、家族が抱えてきた過去の傷。そうした「簡単には逃げられないもの」をすべて抱えたまま、主人公が前に進く物語です。
最後に渉が手にするのは、たしかに“親権”という勝利。
けれど同時に、「もう戻れない夫婦関係」や「癒えない家族の傷」も、はっきりと残ります。
だから読後の感触は、スカッと爽快というより、じわじわと胸に残るタイプ。
もしドラマ版の展開が刺さった人ほど、原作を読むと、また違う角度で深く刺さるはずです。
漫画「離婚しない男 CASE2」とは?前作との違いもざっくり

「離婚しない男 CASE2」は、前作『離婚しない男』とは登場人物を一新して展開する“続編”です。
舞台も関東新聞社から芸能界へと大きく移り、空気感はガラッと変わります。連載は「コミックDAYS」で、2023年10月25日から2025年8月13日まで、全36話で完結しています(最終話タイトルは「離婚した男」)。
主人公は、人気も実力もトップクラスの俳優・永瀬丈(通称ナガジョー)。
良き家庭人としてのイメージを築いてきた彼が、ある日突然“新人女優との密会不倫写真”で炎上し、社会的地位も家族も一気に失います。しかもそれは偶然ではなく、「すべて仕組まれたこと」。
裏切りと策略が幾重にも重なる“リコンエンターテインメント第2弾”として、前作同様に「親権」を軸に、読んでいて胃がキリキリするレベルの泥沼が加速していきます。
単行本は全7巻で刊行され、最終巻となる7巻は2025年10月20日配信開始。
さらに単行本7巻には、描き下ろし第37話「墓参りの男たち」(約8ページ)が収録されています。本編完結後の余韻を、もう一段深く刺してくる追加エピソードです。
【ネタバレ】漫画「離婚しない男 CASE2」全巻あらすじまとめ(1〜7巻)

1巻:嵌められた男――“不倫”で転落、だけどこれは罠
ナガジョーは「家庭を大事にする俳優」として築いてきた信用を、たった一枚の“密会写真”で失います。世間は正義の顔で石を投げ、仕事は止まり、家庭も壊されていく。
ただし、読者だけは気づいている。この転落は偶然ではなく、「仕組まれたもの」だということ。
しかも、その裏にいるのは“まさかの人物”。序盤から「信じた相手が一番怖い」という空気が濃厚で、胃にくるタイプの復讐劇が幕を開けます。
2巻:僕は謝りません――公開処刑みたいな会見で“逆襲”が始まる
事務所の社長に命じられ、謝罪会見を開くことになったナガジョー。普通なら土下座一択の場面で、彼が最初に放った言葉は――「僕は謝りません」。
ここはシリーズ屈指の名シーンです。
自分がやっていないことを「やりました」と認めた瞬間、父としても男としても終わる。世間の空気を敵に回してでも、自分の潔白を自分で証明しようとする姿勢が貫かれます。
CASE2はここから、「ただの不倫泥沼」ではなく、社会VS個人の戦いへと射程を広げていきます。
3巻:冤罪は晴れた、でも黒幕は…(絶望の方向が違う)
ナガジョーは追い打ちをかけるように「不同意わいせつ」という冤罪まで着せられますが、それすらも覆していきます。
ただし、ここで終わらないのがこの作品の残酷さ。
冤罪が晴れた先で待っていたのは、「自分を罠に嵌めた黒幕が“愛する妻”だった」という最悪の事実でした。
家庭の味方だと思っていた存在が、家庭を壊す側だった。
この瞬間の冷え方は、背骨がゾワッとするレベルです。ナガジョーは復讐を誓い、子どもを守るための戦いを“静かに”始めていきます。
4巻:親権を狙う=妻に読まれる(そして味方も揺れる)
不倫妻と離婚し、子どもの親権を獲る。ナガジョーが立てる計画は、ことごとく妻に見透かされていきます。
親権争いは、愛だけでは勝てない。
どれだけ父として努力しても、社会や制度、世間の偏見、そして相手の策略が立ちはだかります。
さらに、近しい人の裏切りの気配も漂い始め、「守りたいものがあるほど、人は弱くなる」という現実を、ナガジョーは突きつけられていきます。
5巻:事務所からの独立計画、そして“司馬”が動く
子どもの親権を勝ち取るには、世間体も経済力も、そして“安定”も必要。そこでナガジョーは、事務所からの独立まで視野に入れた動きを見せ始めます。
この巻で印象的なのが、「過去を悔い、協力する司馬」の存在です。前作を読んでいる読者ほど、ここは強く刺さるポイント。
かつて敵だった人物が、“父としての苦しみ”を理解する側に回る。
許す・許さないとは別の次元で、心が揺さぶられる展開です。
6巻:托卵の真実――鑑定書が突き刺す“父”のアイデンティティ
ここからは本当に胸が痛い展開が続きます。
ナガジョーは「息子が他人の子である」という鑑定書を突きつけられ、妻の托卵を知ることになります。愛して育ててきた時間を、紙一枚で否定されるような地獄。
それでも「息子は息子」と言い切れるのか。
父としての覚悟は、血縁より重いのか。
ナガジョーが苦しみ、悩み、結論を出していく巻です。
7巻(最終巻):離婚裁判が開廷、“相応しい父親”を証明せよ
最終巻は、ナガジョーと不倫・托卵妻・真白との、親権をかけた離婚裁判がクライマックス。
日本では父親の親権が簡単に認められにくい現実を前提に、ナガジョーは「負けるわけにはいかない」と立ち向かいます。真白が張り巡らせた策略を打ち破り、“相応しい父親”であることを証明しろ――という形で、物語は堂々と完結します。
そして単行本7巻には、描き下ろし第37話「墓参りの男たち」も追加収録。
本編で後ろ姿だけが描かれていた“例の男”と、マサトの関係に触れるエピソードとして、完結後の余韻をさらに深く突き刺してきます。
漫画「離婚しない男 CASE2」最終回の結末は?最後はどうなる?
最終回は、最終話タイトルが「離婚した男」。
つまりナガジョーは、“離婚しない”という選択ではなく、最終的に離婚という形に辿り着く結末を迎えます。
ただし、ここで物語が断ち切られるわけではありません。
作品全体を通して示されるのは、「それですべてが終わるのではなく、家族は続いていく」という感触です。
要するに、
“夫婦”という関係は終わっても、“父として守り続ける関係”は終わらない。
CASE2は、そんな余韻の残し方を選んだ作品でした。
結末のポイントは大きく2つ
親権をかけた裁判の決着
ナガジョーは裁判の場で、「父親として何を守ってきたのか」「何を選び続けてきたのか」を突きつけられます。勝ち負けの話ではなく、“父であること”をどう証明するか、という問いに向き合う局面です。
離婚後も“家族は続く”というテーマ
離婚によって一件落着、ではありません。
勝って終わりでも、断罪して終わりでもなく、人生はその先も続いていく。CASE2は、その現実をきちんと描いて終わります。
最終巻まで読み終えたあと、残る感触はスカッと爽快というより、「勝ち負けじゃないんだよな……」と、思わず息が漏れるような後味でした。
真白が悪い、許せない。
それは大前提としてある。
それでも、その“悪”が生まれてしまった背景や、そこに至る歪みがちらつく瞬間があって、簡単に断罪だけで終われない。その引っかかりが、読後もずっと胸の奥に残ります。
CASE2の最終回は、
誰かが完全に救われる話でも、完全に裁かれる話でもない。壊れた関係のあとでも、人は「父」として生き続ける――その事実だけを、静かに置いて終わる結末だったと思います。

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