9話では、ロイヤルファミリーが有馬記念へ進むための条件を突きつけられ、夢の舞台が決して甘くないことが描かれた。

最終回となる10話は、その先にある「勝つか、負けるか」だけでは語れない結末へと物語を導いていく。
有馬記念という大舞台で交錯するのは、馬の力だけではない。
父・耕造から受け取った夢、ライバルたちの覚悟、そして耕一自身が“何を選ぶのか”という問いが、最後に試される。
この最終回は、単なる勝敗の物語ではなく、「継承とは何か」にひとつの答えを示した回だった。
ザ・ロイヤルファミリー10話(最終回)のあらすじ&ネタバレ

2025年12月14日放送の最終回(第10話)「ファンファーレ」は、ロイヤルファミリー陣営が“最後の最後”で有馬記念に挑み、20年の物語にひとつの決着がつく回でした。
※ここから先は第10話の結末まで含むネタバレです。未視聴の方はご注意ください。
オープニング|「有馬に出る条件」が重すぎる
前話までの“失明の危機”を乗り越え、ロイヤルファミリーは復帰できました。ですが、ここからが本当の地獄でした。
有馬記念は、ファン投票や獲得賞金によって出走馬が決まる世界。故障明けのロイヤルファミリーが“選ばれる側”に入るには、直近の重賞で結果を残す必要がある──という現実が突きつけられます。
つまり「感動の復活」だけでは足りない。“出るために勝つ”という、競馬の残酷なロジックがここで再点火します。
同時に、最大のライバル・椎名善弘が動きます。
椎名は自分の馬ビッグホープで有馬記念に参戦すると宣言し、その鞍上が佐木隆二郎であることも明らかになります。
しかもビッグホープは、ロイヤルホープの血統を徹底的に研究して作り上げた“最高傑作”。
耕一にとっては、父・耕造の夢(ロイヤルホープの系譜)が、別の男の馬に引き継がれていたという現実でもあり……ここが第10話の苦さの核です。
復帰戦→天皇賞→「ジャパンカップで勝つしかない」
ロイヤルファミリーは復帰戦(札幌記念)で2着。さらに天皇賞でも肉薄しながら2着。勝ち切れない状況が続きます。
そして状況はどんどん“詰む”方向へ進み、「ジャパンカップで1着を取るしか、有馬への道がない」というところまで追い込まれます。
ここは冷静に見てもかなり厳しい展開です。
有馬は“最終目標”なのに、その前に「出走権のための決戦」がある。勝負事の世界では当たり前とはいえ、物語としては「夢の入口に立つために、もう一度命を削れ」と突きつけてきます。
ジャパンカップ当日。栗須・耕一・加奈子は、より近くで見届けようと立ち見席へ向かいます。
そこで耕一は椎名に対して、「ここで有馬を掴む」と強い意思を示します。ここで“迷いの目”が消えていくのが印象的です。
レースでは、ロイヤルファミリーがライバルのレインボーキャンプと競り合う展開に。勝ち切って有馬へ──という“次の扉”が、確かに開かれます。
「引退」を先に決めるという、いちばん怖い決断
有馬に進める道筋が見えた一方で、耕一は別の爆弾を抱えていました。
それが──「有馬記念が終わったら、ロイヤルファミリーを引退させる」という決断です。
耕一の理屈は、一見するとすごく馬ファースト。何度も怪我をして手術を乗り越え、それでも十分な賞金を稼いでくれた。しかも“今が最高”だと感じている。だから「勝って終える」。
ただ同時に、これは“人間側が勝手に区切る”宣言でもあります。この判断が、後半で重く効いてきます。
栗須は調教師・広中にその方針を伝え、チームは決起集会へ。
天ぷら屋での場面では、耕一が改めてチームへ感謝を伝え、最終決戦(有馬)への覚悟を共有します。
そして耕造の墓前。
栗須は「マネージャーを辞めたあとは養老牧場で働く」という“次の夢”を語ります。勝った馬も負けた馬も最後まで見守る場所を作る──ここで栗須の人生が、再び前に進み始めます。
耕一は「今は真っ白」と言います。けれど、真っ白という状態は“自由”でもあり、“孤独”でもある言葉でした。
2025年有馬記念、勝ったと思った…その瞬間
2025年、有馬記念当日。
記者・平良は連載「継承」の最終回を、栗須の話で締めると伝えます。物語の外側、つまり視聴者に対しても「これは継承の物語だ」と改めて突き刺してくる演出です。
レース前、耕一と展之は言葉を交わします。
展之は「全部ぶっちぎって勝つ」と煽り、耕一は「夢は父の夢じゃない、俺の夢だ」「継承は押し付けられるものじゃない」と返します。
この応酬によって、耕一が“受け取った側”から“自分の言葉で語れる側”へと変わったのが、はっきりと見えます。
騎乗は、ロイヤルファミリーが翔平、ビッグホープが隆二郎。
さらにソーパーフェクトとルメールも加わり、3頭が因縁ごと並ぶ最終決戦となります。
そしてレース。
ロイヤルファミリーがソーパーフェクトを差し切り、栗須が勝ちを確信した“その瞬間”──最後にビッグホープが迫ります。
結果は、1着ビッグホープ、2着ロイヤルファミリー。写真判定レベルの決着でした。
つまりロイヤルファミリーは“最強のライバル”に敗れた。ただ、そのライバルは、耕造の夢から生まれた馬だったのです。
封筒の真相と、終わりじゃない「その後」
ここで回収されるのが、ずっと引っかかっていた“封筒”の謎です。
椎名が耕造に渡した封筒の正体は、ロイヤルホープの種を買い、いつか来る勝負(有馬)で「若い力の壁」になる馬を作りたいという申し出でした。
耕造はその話に乗り、そこから生まれる希望に“ビッグホープ”と名付けた──という真相が明かされます。
レース後、椎名は耕一に「耕造の馬に有馬を取らせる約束があった」と告げます。勝ったのは椎名の馬ですが、叶ったのは耕造の夢でもありました。
耕一が悔しさと感情を爆発させるのも当然で、ここは“勝敗以上の決着”が描かれた場面です。
さらに山王家との距離も変化します。
京子は耕一に言葉を残し、優太郎は「正月うちに来て」と“家族”として迎える姿勢を見せます。
耕一がずっと欲しかったのは、血統の証明よりも、この居場所だったのかもしれません。
そして最後の大きな揺れ。
レース後、ロイヤルファミリーは嘶き続けます。耕一は「引退させるのも自分のエゴなのか」と迷い、栗須は“ファミリーに決めてもらう”という方向へ背中を押します。
ここで終わりにしない──という余白が、物語を未来へと繋ぎました。
エピローグでは時が進み、耕一は改めて馬主資格を得て、栗須と加奈子が働く養老牧場を訪ねます。
そして示されるのは、「夢は続く」という事実。
ロイヤルファミリーの“その後”まで含めて、この物語は静かに、しかし確かに完結します。
ザ・ロイヤルファミリー10話(最終回)の感想&考察

最終回というと、どうしても「主人公が勝って終わり」という形を選びがちです。でも『ザ・ロイヤルファミリー』は、そこをあえて選ばなかった。
この10話は、勝敗そのものよりも、“継承の圧”が前面に出た回だったと感じています。
この回のテーマ考察:「継承」は押し付けじゃなく、“自分で選ぶ”もの
耕一が言い切った「継承は押し付けられるものじゃない」「望んで受け取った」という言葉。ここに、この作品の倫理がすべて詰まっていました。
耕造は夢を託した。でも、それを耕一が“自分の夢”として引き受けなければ、継承は成立しない。
だから最終回の勝負は、ロイヤルファミリーが勝つか負けるか以上に、耕一が自分の言葉で夢を語れるかどうかの確認作業だったのだと思います。
そして、それができたからこそ、仮に有馬で負けても「じゃあ終わり」にはならない。“勝てば報われる”。でも、“負けても続ける理由が残る”。この二重構造が、最終回を一段大人の物語にしていました
。
ソーパーフェクト&展之の役割:勝てる者ほど「自由」に酔う
展之という存在は、視聴者側から見るとどこか憎めない。勢いがあって、痛快で、一直線です。
ただ10話で描かれたのは、「勝ち続ける」と豪語できる人間ほど、継承という言葉を“古臭いもの”として切り捨ててしまう危うさでした。
彼の“自由”は確かに強い。
けれど、競馬は自由だけでは勝てない。血統、積み上げ、偶然、怪我、運──すべてが絡み合う世界です。だからこそ「絶対」は簡単に崩れる。
その現実を、椎名がビッグホープという存在で突きつけた構図は、痛快でもあり、同時に残酷でもありました。
展之についてはこちら↓

椎名善弘の正体:ラスボスではなく「次代を鍛える壁」
封筒の真相が明かされた時点で、椎名はもはや単純な“悪役”ではなくなります。
むしろ彼は、耕造の夢を別のルートで叶えるために、長い時間をかけて準備してきた人物でした。
このドラマのえげつないところは、椎名が耕一の夢を奪ったわけではない点です。
耕一が「継承を自分のものにする」ための試練として、ビッグホープを差し向けた。そう見える構造になっていました。
ビッグホープの勝利が意味するのは、
「父の夢は叶う。でも、息子の夢はそこで終わらない」という二段構え。
勝者は椎名に見えるけれど、実は耕造の夢が成就し、さらに耕一が“次へ進む理由”を手に入れる。脚本の勝ち方として、とてもロジカルで印象的でした。
引退宣言の伏線回収:「馬ファースト」がエゴに変わる瞬間
耕一が有馬前に「引退」を決めた判断は、間違いなく誠実さから来るものでした。何度も怪我をした馬を、これ以上酷使したくない。その気持ちは本物だったと思います。
ただ、ラストでロイヤルファミリーが嘶き続けた瞬間に、その誠実さが反転する。
“馬のため”に辞めさせるつもりが、いつの間にか“自分が区切りたいだけ”になっていないか──という疑問が浮かび上がる。
この反転は、現実の仕事や家族関係でも起こり得るものです。相手のためだと思って下した決断が、実は自分の都合だったと気づいたとき、人は変わるしかなくなる。
栗須が「ファミリーに決めてもらう」方向へ導いたのも、マネージャーとしての成熟を感じさせる場面でした。
鞍上が熱い:佐木隆二郎の配置が示したメッセージ
ビッグホープの鞍上が隆二郎だった配置は、ドラマ的にかなり効いていました。隆二郎はこれまで、「誰の馬に乗るか」がそのまま生き方になる騎手として描かれてきた存在です。
最終回で、椎名の“最高傑作”に彼を乗せる。
つまり、あの勝利は椎名ひとりのものではありません。
- 耕造(血統を残した側)
- 椎名(勝つ馬を作った側)
- 隆二郎(勝つために乗る側)
この三点が重なって、継承の三角形が完成していました。
さらに、最終回で実在の騎手が本人役として登場した点も、物語に強いリアリティを与えていました。ドラマの“夢”を、現実の競馬の手触りへと引き寄せる仕掛けとして、非常に効果的だったと思います。
伏線回収まとめ:封筒/ビッグホープの命名/「夢は続く」の着地
10話で最も気持ちよかった伏線回収は、やはり封筒の存在でした。
「なぜ椎名は耕造に封筒を渡したのか」という疑問が、ロイヤルホープの種=未来の勝負(有馬)への仕込みとして回収される。
しかも、それで終わらせない。
有馬で負けた直後に「終わりではない」方向へ舵を切り、時間を進めて“その先”を見せる構成でした。
この選択には賛否があるかもしれません。ただ、夢が現実になるまでにかかる“時間”そのものも、継承の一部だと考えると、この終わり方はとても誠実に映ります。
僕の結論:胸が熱くなったのは、「負け方」が誠実だったから
最後に勝てなかった。悔しい。
それでも、悔しさを抱えたまま前を向ける終わり方だった。そこに、このドラマの品の良さがあります。
耕一は、父の影を背負うために馬主になったわけでも、父を超えるために走ったわけでもない。
受け取ったものを一度抱え込み、自分の足で選び直し、自分の夢へと変えるために走った。
ロイヤルファミリーは負けたけれど、物語は負けていない。
「勝つことでしか報われない時間がある。でも、夢は続く」。
この着地こそが、最終回のタイトル通りの“ファンファーレ”だったと感じています。
ザ・ロイヤルファミリーの関連記事
ザ・ロイヤルファミリーの全話ネタバレはこちら↓

ザ・ロイヤル・ファミリーの原作についてはこちら↓

ザ・ロイヤル・ファミリーの過去についてはこちら↓



ザ・ロイヤル・ファミリーの目黒蓮についてはこちら↓


コメント