第1話から、かなりキツいです。静かに、でも確実に心を削ってきます。
ドラマ「離婚しない男」第1話では、新聞記者・岡谷渉が、仕事の張り込み中に妻・綾香の不倫現場を目撃するという最悪の始まりが描かれます。
怒鳴ることも、問い詰めることもできないまま、渉は“夫”としての呼吸を失い、代わりに“父親としてどう生きるか”を考え始めます。
しかし、そこで突きつけられるのが現実。
不倫された側であっても、父親が親権を取るのは圧倒的に不利だという事実です。
この瞬間から、渉は「離婚したい男」ではなく、娘を守るために“離婚しない男”になる道を選びます。
この記事では、ドラマ「離婚しない男」第1話のあらすじとネタバレを中心に、渉の決断、隣室不倫という異常な状況、そしてこの物語が“親権ドラマ”として走り出す瞬間を丁寧に振り返っていきます。
ここから始まるのは、不倫の復讐劇ではありません。父親が、娘を失わないために感情を殺していく物語です。
ドラマ「離婚しない男」1話のあらすじ&ネタバレ

第1話は、タイトルからしてもう痛い。「あんたがしてくれなくても」という言葉は静かなのに、胸の奥を針で刺してくるような響きがあります。
ここからはネタバレありで、岡谷渉が“離婚したいのに離婚できない男”になっていく最初の一歩を、丁寧に追いかけていきます。
仕事の張り込み中に見た、妻の「裏切り」
大手新聞社・関東新聞の社会部エース記者として働く岡谷渉(伊藤淳史)は、ある日、妻・綾香(篠田麻里子)が男と二人でホテルへ入っていく不倫現場を目撃してしまいます。
それも、渉が仕事の張り込み中に“偶然”踏んでしまった、逃げ場のない瞬間でした。
仕事の顔で息を殺してきた男が、次の瞬間には「夫」として息ができなくなる。この落差が、初回から強烈に突き刺さります。
渉のすごいところは、その場で取り乱して妻を問い詰めないところです。怒りや悲しみの前に、現実的な計算が先に走ってしまう。
「離婚したい。でも、娘は絶対に守りたい」
感情よりも先に、渉の中で優先順位が決まっていくのが、あまりにも切ない。
渉が選んだのは「離婚」より先に、親権を取る道
この瞬間から渉は、会社に「育児に専念する」という名目で部署異動願を出し、在宅ワークへと切り替えます。けれど本音は別でした。妻と離婚し、愛娘・心寧(磯村アメリ)の親権を得るために、養育実績を積み上げるという作戦です。
ここが、見ていて胸が締め付けられるポイントです。
仕事のキャリアを捨てると言葉にするのは簡単でも、渉にとってそれは“負けないために自分を削る選択”。父親が親権を望むだけで、最初から「勝率が低い」とされる世界に踏み込む覚悟は、想像以上に重いものでした。
でも現実は非情…財田トキ子に突き放される
渉は、離婚や親権問題に強い弁護士・財田トキ子(水野美紀)のもとを訪れます。ホテルの写真や、綾香と不倫相手のやり取りといった証拠を揃え、「これでいける」と思っていた渉。しかし、トキ子から返ってきたのは、想像以上に冷たい現実でした。
父親が親権を取れる確率はわずか1割。
さらに渉の証拠についても、「それでは弱い」「まだスタート地点にも立っていない」と言わんばかりに突き放されてしまいます。
財田先生の口調や言い回しは独特で、思わずクスッとする瞬間もあるのに、言っていることはあまりにもリアル。笑えない現実を、笑えるテンポで投げつけてくる。このギャップこそが、このドラマの怖さだと感じました。
渉はここで初めて、「不倫=即、親権」ではないことを思い知ります。裏切られた側なのに、守りたいものを守るには、もっと泥臭く、もっと長い戦いが必要なのだと。
味方か敵か…探偵・三砂裕が“相棒”を名乗り出る
財田に突き放され、心が折れかけた渉の前に現れるのが、探偵・三砂裕(佐藤大樹)です。
距離感がバグっているタイプで、年上の渉にもズカズカ入り込んでくる。正直うるさいのに、その馴れ馴れしさが、渉にとっては救いになる瞬間があります。
裕は、裁判で戦える証拠集めを一緒にやろうと提案します。渉は戸惑いながらも、その手を取る。
この時点で渉は、もう一人で戦える状態ではありません。強がっても、平常心を装っても、心は限界ギリギリ。その弱さを見透かしたように「こっち来いよ」と引っ張る裕の存在が、妙に頼もしく映ります。
不倫相手は“まさか”の人物…司馬マサトの顔が怖い
さらに地獄に追い打ちをかけるのが、綾香の不倫相手の正体です。
彼は、心寧が通う芸能事務所の統括マネージャー・司馬マサト(小池徹平)。つまり、娘の未来にも直接触れられる立場の男でした。
表向きは「オーディションの相談」など、子どもの夢を盾にして綾香を呼び出し、二人きりになると一気に距離を詰める。主導権を握り、焦らし、支配し、綾香をその気にさせていく。この関係は恋愛というより、「操縦」に近く、見ていて背筋が寒くなります。
マサトのセリフ回しも強烈で、軽いノリの言葉の中に、人をモノのように扱う冷たさが混じっている。笑うより先に、背中が冷えるタイプの怖さでした。
綾香は“悪嫁”としての顔も容赦ない
綾香は、不倫相手の前では欲望のままに溺れる一方で、家庭では容赦ない“鬼嫁”の顔を見せます。
義父が用意したハンバーグを「味が濃い」と言って、食べる前に流し台へ捨てる場面。短いシーンなのに、破壊力は抜群でした。
家族の好意を“なかったこと”にできる人の怖さ。
渉が言い返さないのを分かっていて、わざと踏みにじっているようにも見えるから、余計に刺さります。
尾行の先は「意外すぎる場所」…隣室という悪夢
裕はマサトを張り込み、綾香と逢引しているところを発見して尾行します。普通ならホテルへ向かうと思う流れですが、二人が入ったのは、なんと渉が住むマンションの“隣室”。
壁一枚。距離は近いのに、心は遠い。
夫婦が本来眠るべき場所のすぐ隣で、綾香は別の男に支配されている。しかも鈴の音が鳴るたびに、渉の家庭が壊れていくようで、あまりにも残酷でした。
マサトの「No or Yes?」という言葉に、綾香がためらいながらも「…Yes」と答える場面も印象的で、それは夫婦の会話ではなく、主従関係の確認のように見えてしまい、息が詰まります。
第1話はここで、視聴者の心をぐちゃぐちゃにかき回して終わります。
渉はここから、証拠を集め、父親としての実績を積み、それでも折れないよう踏ん張らなければならない。
離婚したいのに、離婚できない。その戦いが、静かに始まりました。
ドラマ「離婚しない男」1話の感想&考察

第1話を見終えた直後の正直な感想は、「しんど…!」でした。
テンポは軽快で笑えるのに、心は全然笑っていない。
むしろ、じわじわ泣きたくなる。ここからは筆者視点で、刺さったポイントを感情多めに整理します。
「親権」って、こんなに“勝ち取りにいくもの”なんだ…
このドラマの核は、不倫そのものよりも「親権」です。
渉は裏切られた被害者なのに、法の世界では自動的に守られる側ではありません。父親の親権獲得率は低く、スタート地点からすでにハードモード。
だから渉は、怒りを爆発させる前に、会社での立場もキャリアも捨て、在宅勤務を選びます。この選択は、派手さはないけれど、ものすごく苦しい。
仕事を頑張って稼ぐだけでは足りず、「毎日子どもとどう過ごしたか」を証明しなければならない。愛は数字にできないのに、裁判では数字が求められる。その現実が重すぎます。
それでも私は、渉のこの“計算高さ”を冷たさだとは思いませんでした。泣き叫ぶより、勝つために耐える。父親として、娘の未来を守るための選択に見えたからです。
綾香は悪女だけど、どこか“痛いほど人間”
綾香は、行動だけを見れば最低です。家族の好意を踏みにじり、夫を裏切り、快楽に溺れる。
けれど、彼女が“ステージママ”になっていく背景には、娘をスカウトしたマサトの存在があります。そこで承認を与えられ、燃えるように求め合う関係に落ちていく。
これは単なる恋ではなく、「承認」に溺れているようにも見えます。
出産後の不安や寂しさ、社会から取り残された感覚。そうしたものを抱えた人間として見ると、綾香の姿は少し違って見えてきます。
不倫の免罪符にはならないけれど、彼女の中にも確かに“満たされなさ”がある。だからこそ、マサトのように欲望を肯定してくれる男に吸い寄せられてしまったのかもしれません。
マサトの怖さは「爽やかさ」と「支配」が同居しているところ
マサトは、最初はただの不倫男に見えます。ところがすぐに、支配者の顔をのぞかせる。綾香に選択を迫る言葉、主導権を握り続ける関係、鈴の付いた首輪。
私が一番怖いと感じたのは、そのすべてを“爽やかな顔”でやっているところでした。
しかも彼は、娘の芸能活動に関わる立場にいる。家族の未来の入口を握れる場所にいるという点で、これはただの不倫ではなく「生活侵略」です。
財田先生と裕が、渉の“心の支柱”になる予感
第1話の財田先生は、渉を助けてくれません。むしろ突き放す。でも私は、その冷たさを「現実を教える優しさ」だと感じました。証拠の甘さを指摘しない弁護士のほうが、よほど無責任です。
そして裕。距離が近すぎて正直うるさいのに、渉が一人で潰れそうな瞬間に現れ、戦い方を提示してくれる。
この二人がいるからこそ、渉は“壊れずに戦える”のかもしれません。裏切られた人間に必要なのは、正論よりも「一緒に怒ってくれる味方」なのだと思いました。
「隣室」という設定が、エモいくらい残酷
第1話のラスト、綾香とマサトが向かったのは、渉のマンションの隣室。
この設定は、単なる刺激ではありません。
壁一枚の距離。近いのに、決して届かない。
夫婦であるはずの二人の間に、決定的な断絶があることを、これ以上なく分かりやすく示していました。
第1話は、渉の復讐劇の始まりというより、父親が親権を勝ち取るために、感情を削り取っていく物語のスタートに見えます。
泣いている場合じゃない。でも泣きたい。怒りたい。でも怒れない。
その矛盾の中で、それでも娘を守ろうと動く渉を、私はもう放っておけません。
次回以降、渉の証拠集めがどこまで過激になるのかも気になりますが、それ以上に、渉の心が最後まで持つのかが心配です。
このドラマは、笑わせながら、平気で人の心を刺してくるから。
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