ドラマ「小さな巨人」の9話が終了しましたね。
『小さな巨人』最終回(10話)は、シリーズ最大の謎である江口殺害と17年前の“絆”の汚職事件がついに収束する濃密な一話でした。
裏帳簿の原本17冊、切れ端、通話記録ーーこれら三つの証拠が複雑に絡み合い、香坂は本庁の圧力と制度の壁の中で“真実の提示”そのものを武器に逆転を狙います。
金崎と富永、山田勲、そして父・敦史。誰の罪がどこまで可視化され、誰が守られ、誰が裁かれたのか。
2017年6月18日(日)夜9時放送のドラマ「小さな巨人」10話のあらすじ(ネタバレ)と9話の感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
ドラマ「小さな巨人」10話(最終回)のあらすじ&ネタバレ

最終回は「事実の所在ではなく、どう提示するかで効力が変わる」というシリーズの主題を、最後の一滴まで抽出した濃密な一話でした。江口警部殺害の真相と、17年前に始まった“絆”の犯罪。
香坂(長谷川博己)は《裏帳簿の原本》《切れ端》《通話記録》という三点を足場に、物語の主導権を奪い返す。
そして“成敗”ではなく、“可視化”を選ぶーーこれが最終回です。香坂は一度すべての手を失い留置場に押し込まれますが、この絶体絶命から逆転の設計図を立ち上げていきます。
プロローグ──横沢と裏帳簿を“一課”に奪われ、香坂は謹慎から留置へ
第9話ラストで裏帳簿17冊を捜査一課に奪われた所轄。最終回はその直後から始まります。身柄も証拠も失い、香坂は留置場行き。山田(岡田将生)も逮捕され、豊洲署は戦力を奪われたも同然です。
そんな中、香坂は小野田(香川照之)の“切り札”と向き合わされますーー裏帳簿の1ページ目、そこに記されていたのは香坂の父・敦史の名前。香坂の倫理を直撃する一撃でした。
小野田の告白が示す“敵の輪郭”──父の名、そして17年前の点と線
小野田は語ります。「17年前、裏帳簿に記されていたのは敦史の名で、金崎玲子(和田アキ子)からの賄賂とされている」。香坂は愕然。しかし同時に、問いを立て直します。
「父は本当に“受け取った側”なのか。それとも“止めようとした側”なのか。」
真実は、事実そのものではなく《事実の来歴》と《提示の順序》に宿る。香坂の逆転はここから始まります。
“36時間の猶予”に相当する最終設計——通話記録という突破口
鍵は通話記録。
事件当夜、富永が誰と通話していたかーーこれが逆転の起点です。
藤倉(駿河太郎)がその通話相手を突き止め、偽装の全体構造を裏返す導線として共有。最終回公式でも「通話相手」が強調されており、ここが勝負のポイントだと明示されています。
【最終報告書①】17年前の真相──教育と癒着、そして“切れ端”の意味
最終回で明かされる17年前の真相はこうです。
- 旧姓“山田”玲子(後の金崎理事長)は、学園設立のため山田勲(当時・刑事局長)へ政治資金を渡していた
- 運転担当の松山義則が関係露見を恐れ裏帳簿を入手
- 金崎と口論になり突き飛ばされ、松山は海へ転落
- 香坂敦史(香坂の父)は切れ端を発見し癒着を把握
- だが当時の山田は揉み消しを指示
- 富永が切れ端ごと退職届も隠蔽し、処理はすべて小野田へ引き継がれた
「父=汚職」という単線的な構図は崩れ、複層的な真相が立ち上がります。
【最終報告書②】江口殺害の真相──実行は金崎、偽装は富永
江口(ユースケ・サンタマリア)は時間切れを感じ、金崎に直接迫ります。
そこで殺意が芽生え、金崎は屋上から鉄骨を落として江口を殺害。直後、富永へ電話し、富永が偽装(横沢犯人説)を実行。
シリーズ序盤から続いた「横沢=犯人」の構図は、ここで完全に覆されます。
可視化の三段跳び──記録→現場→人物
香坂は《記録の可視化(通話記録)》→《現場の可視化(騒音の再現・動線検証)》→《人物の可視化(任意同行)》という、可視化の三段構えで真実へ到達します。
“疑惑→事実→責任”へと変換されるこの順序こそ、芝署編から積み重ねてきた香坂メソッドの完成形です。
逮捕劇──理事長室で決着。金崎・富永の逮捕、横沢の解放
結末はこうです。
- 金崎・富永は逮捕
- 横沢は釈放
- 17年前の件では金崎は黙秘、富永はお咎めなし
- 山田勲は副長官を辞任
- 小野田は一課長を退き豊洲署長へ
- 香坂と山田は捜査一課へ復帰
華々しい完全勝利ではなく、《制度の継続と是正》の狭間で着地する。この“現実的エンディング”が日曜劇場らしさです。
切れ端の行方──“爆弾”であり、“歯止め”でもある
香坂は切れ端の提出を求め、小野田は逡巡しつつも最終的に託します。
切れ端は、
・組織を破壊する“爆弾”
であると同時に、
・今後の腐敗を抑える“抑止力”
としても機能する。
香坂はそれを胸ポケットに戻し、「警察官を守る法はない。己を守るには戦うしかない」と静かに誓うのです。
ドラマ「小さな巨人」10話(最終回)の感想&考察

最終回の強度は、「正しい物語」と「機能する現実」のねじれを、“証拠の提示順序”で解き直していく点にあります。以下、論点を整理します。
1|“犯人は誰か”より“誰が提示するか”という証拠の政治学
真相は「金崎=実行犯、富永=偽装」。しかし緊張は“誰がそれを提示するか”にあった。原本17冊が一課に渡ると、語り手の主導権は一課へ移動。香坂は可視化の順序設計で主導権を奪還する。
“真実の内容より、真実をどう提示するか”。
これが最終回の核心でした。
2|“父の名”の再解釈──汚名の単線から、矜持の複線へ
切れ端に記された父・敦史の名は「汚職」と単純化できる。しかし最終報告書は、敦史が《止めようとした側》であった可能性を示し、富永と小野田の隠蔽でねじ曲げられた歴史を浮かべる。
香坂が切れ端を保持した意味は、
“父の矜持を未来の歯止めとして継承する”
という選択だったと読めます。
3|小野田という“現実”──断罪ではなく再配置
小野田は倒される悪ではなく、現実として位置づけられる。
辞任→豊洲署長という“再配置”で物語は着地し、香坂と山田を戻す余地を生む。
制度の理屈と現場の熱を共存させるーー最終回の巧さはここにあります。
4|「敵は味方のフリをする」の最終形──抑止力としての爆弾
最終回で標語は反転します。
“味方は敵のフリもする”。
小野田は切れ端を託す味方でもあり、その切れ端が炸裂すれば組織の敵にもなる。
だから香坂は“抑止力”として保持し、破壊ではなく防御のために使う。この倫理の着地が美しい。
5|音と通話記録──見えないものを可視化する到達点
理事長室まで届く騒音の再現、通話の痕跡。
“見えないものを可視化する手続”が、最終回で完全な形になる。日曜劇場の刑事ドラマとしても緻密な演出でした。
6|俳優陣の“熱量”が最終回の構造そのものを押し上げた
香坂×小野田の最終対決は、静と圧のぶつかり合い。
小野田に「殺人犯は逮捕されなければならない!」と言わせた構図が秀逸で、悪役の口から“正しい言葉”を言わせる完成度が高い。
7|“完全解決ではない”という美学
富永お咎めなし、17年前の黙秘。
不完全さをあえて残すことで、物語は現実と地続きになる。
“続きは未来で正す”という余韻こそ、小さな巨人というタイトルが示す矜持でした。
ドラマ『小さな巨人』の関連記事
過去のお話はこちら↓



ドラマのキャストはこちら↓


コメント