第2話は、恋が壊れるわけでも、進むわけでもなく、ただ少しずつ“噛み合わなくなっていく”感覚が描かれた回でした。
クリスマスという特別な日をきっかけに、同棲の提案、失恋の痛み、他人から向けられる価値観が、文菜の心に重なっていきます。
答えを出せないまま考え続けてしまう人たち。その迷いこそが、この物語のいちばんリアルな温度でした。
※この記事は、ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」2話のネタバレを含みます。
ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」2話のあらすじ&ネタバレ

2話の副題は「考えすぎてしまう人たち」。クリスマスという“みんなが正解っぽい顔をする日”に、それぞれの恋が静かに揺れていきます。
前回までの流れ(軽くおさらい)
主人公の土田文菜(あやな)は小説家で、普段は古着屋で働きながら次の作品を書いている27歳。コインランドリーで出会った美容師・佐伯ゆきおと付き合い始め、1年が経ちました。
ゆきおは優しくて、ちゃんとまっすぐ。
でも文菜は、恋をしているのに「本気になったら失うのが怖い」みたいな癖があって、どこかで自分の心にブレーキをかけてしまう人です。
冬の晴れた日、イスニキャクで始まる“クリスマス”の話
ある冬の晴れた日。文菜は行きつけの喫茶店「イスニキャク」で遅めのランチをとっていました。店員の和地くんと店長のジョーさんとはすっかり顔なじみで、何気ない会話が自然に続く空気があります。
話題はクリスマス。
「恋人と過ごしたい?」という質問に、和地くんは“別に過ごさなくてもいい派”、ジョーさんは“絶対過ごしたい派”。文菜も和地くん側で、「混むから別に…」といった温度感で返します。
ただ今年は、恋人のゆきおが“過ごしたい派”。
文菜は「一緒に過ごす」と話して、クリスマスは仕事も休む予定だと口にします。クリスマスの予定として、ふたりで“おしゃれな椅子を買う”話もさらっと出てきて、生活の中に恋が入っている感じが少しだけ見えました。
その流れで和地くんは、文菜に年末の予定を聞きます。文菜は富山に帰るつもりだと答え、今年の冬が“帰省”へ向かっていくことも、ここでさりげなく置かれます。
出版社へ。担当編集・美波との打ち合わせが、やたら刺さる
文菜は出版社へ行き、担当編集の多田美波と打ち合わせをします。
文菜が書いているのは、恋愛感情はあるけれど性的な欲求を伴わない「ロマンティック・アセクシュアル」を題材にした物語で、主人公のモデルは大学時代からの友人で今は古着屋の同僚でもある“エンちゃん”の存在が重なっていきます。
打ち合わせの空気は、いわゆる“盛り上げて褒めて終わり”じゃなくて、言葉を選びながら丁寧に深く潜っていく感じ。美波は文菜に、恋愛マイノリティの「代表」として描くよりも、目の前の一人の人間として、その人の細部や魅力を文菜の視点で書くことを勧めます。
文菜は“モデルにしていいのかな”という迷いも抱えているけれど、書くことでしか整わない思考がある。
この回は、恋愛だけじゃなく「書くこと」そのものが文菜の体温として描かれていきます。
クリスマスイブ。椅子を買って、ディナーへ行くふたり
そしてクリスマスイブ。文菜はゆきおと一緒に買い物へ行き、あの“椅子”を選びに行きます。ふたりで部屋の未来を想像しながら家具を選ぶ時間って、ちょっとだけ家族の手前みたいで、距離が縮まるはずの時間です。
そのまま、しゃれた店でディナー。
ゆきおはきちんとプレゼントも用意していて、文菜に真珠のついた耳飾りを渡します。こういう“ちゃんとしてる優しさ”は、ゆきおの人柄そのものだなと思わされる場面でした。
夜はゆきおの家で過ごし、文菜はそこで朝を迎えます。
クリスマスの夜を一緒に過ごした事実だけが、あったかいはずなのに、文菜の中では“あったかいだけで終われない何か”が、ゆっくり残っていきます。
翌朝のコーヒーと「夏くらいに一緒に住まない?」という提案
翌朝、ゆきおはコーヒーをいれてくれて、ふたりは同じテーブルで朝を過ごします。
その自然なタイミングで、ゆきおは文菜に「夏くらいに一緒に住まない?」と同棲を提案します。
ここが2話の大きな分岐点でした。
文菜は笑顔をつくろうとするけれど、即答できない。喜びがないわけじゃないのに、未来の話を出された瞬間に、心が一段引いてしまう感じが、表情の端に出てしまいます。
同棲って、好きかどうかの話だけじゃなくて、“生活を一緒にする”っていう現実がいきなり立ち上がる言葉です。
文菜はその重さを受け止めきれず、答えを保留したまま、その場の空気だけが少し薄くなるような時間が流れます。
エンちゃんの相談。「好き」だけじゃ進めない恋がある
同棲の提案を受けたあと、文菜はエンちゃんとカフェで会います。
エンちゃんは、自分がロマンティック・アセクシュアルであることを文菜に打ち明けながら、好きになってくれた男性との関係に悩んでいました。
エンちゃんは恋愛感情はあるし、一緒にいる時間は楽しい。
それでも、手をつなぐことやキス、ましてや性的な関係が伴う未来を想像できない。相手が“それでもいい”と言ってくれても、結局は相手に我慢をさせ続けるだけなんじゃないか、という罪悪感が膨らんでいきます。
エンちゃんは、「解放してあげたほうがいいのかな」と自分から別れを考えます。
好きなのに、好きだからこそ手放す。エンちゃんの悩みは、恋愛を“成立させる条件”が世の中の当たり前とズレてしまう人が抱える、すごく切実な現実として描かれました。
文菜はエンちゃんの話を聞きながら、同じ“恋愛の悩み”でも、自分の悩みとは種類が違うことを受け止めます。
そして、違う種類の悩みだからこそ、余計に自分の中の曖昧さが浮き彫りになるようにも見えました。
家に帰って、文菜は小説を書く。梢の物語が、現実の鏡になる
帰宅後、文菜は小説の続きを書きます。
主人公の梢は、一緒に住むことも結婚もできるかもしれないのに、「触れること」がどうしてもできない。触れられないという一点が、恋の未来を止めてしまう。そういう文章が、文菜の手で積み重なっていきます。
文菜は、エンちゃんの悩みを“ただ聞いて終わり”にできない人でもあります。
人の悩みを受け取って、自分の中に入れて、言葉にして、物語として吐き出す。だからこそ文菜は、書きながら自分自身の感情にも触れてしまう。
この時の文菜の中には、ゆきおの同棲提案もまだ残っている。
エンちゃんの「真剣に悩んでいる姿」を見て羨ましさが湧く一方で、自分はもし今ゆきおに別れを告げられても、本気で悲しめないかもしれない――そんな冷たい自己認識が、じわじわ浮かび上がります。
和地くんの失恋。まっすぐな痛みが、文菜に突き刺さる
ある日、古着屋で働いていると、和地くんが死んだような顔でやって来ます。
話を聞くと、彼女から別れを切り出されたと言う。理由は「好きな人ができた」。クリスマス当日、彼女はその相手と会っていたことも明かされます。
ジョーさんは和地くんの話を聞き、落ち込む和地くんに「明日休むなら連絡して」と声をかけて帰っていきます。
「失恋は時に、死ぬよりもつらい」という言葉が残り、店内の空気が一気に“慰めようのない痛み”へ寄っていくのが分かります。
和地くんは、文菜に「もう諦めたほうがいいのか」「文菜だったらどうするか」と問いかけます。
文菜は簡単には答えられず、曖昧な返事をするしかない。けれど和地くんの感情は、そこから別方向にねじれていきます。
「余裕のある恋愛って楽しい?」和地くんの言葉が止まらない
和地くんは、文菜の恋愛が“安定して見える”ことに噛みつき始めます。
「相手のほうが自分を好きで余裕がある恋愛って楽しいのか」「不安の中で揺れるのが恋愛の醍醐味なんじゃないか」そんなふうに、嫉妬と羨望が混ざった言葉が次々に飛び出していきます。
さらに和地くんは、「彼氏のこと本当に好きなのか」と踏み込んでしまう。
たぶん和地くん自身が、失恋の痛みで自分の足元が崩れてしまっていて、誰かの“余裕”を見た瞬間にそれが許せなくなった。そんな状態が、言葉の荒れ方に表れていました。
和地くんは途中で「嘘です」と言い、最後は「単純にうらやましかっただけ」とも言う。
でも、その“うらやましい”をそのまま抱えられず、相手を責める形で出してしまうところに、和地くんの弱さも、まっすぐさも、両方が見えます。
文菜が怒る。「私たちのことは私たちにしかわかんない」
ここで、文菜が静かに、でもはっきり怒ります。
「私と彼氏の何を知ってるのか」「余裕があるとか決めつけないでほしい」「この人でいいのかどうか、そんなこと他人にとやかく言われたくない」。文菜が敬語まじりに言葉を返すのが、逆に本気度を感じさせる場面でした。
“恋愛はこうあるべき”みたいな価値観を、他人に押しつけられること。
そして、自分の恋が自分でも説明できない状態のときに、その部分を外から雑に触れられること。文菜が怒ったのは、その両方だったと思います。
文菜は最後、和地くんの言葉を遮るようにその場を去ります。
喧嘩の結末が派手な修羅場じゃないぶん、余計に、日常の中で心が裂けていく感じが残りました。
店を出た文菜。早足になるのは、涙がこぼれないように
文菜は店を出て、街を歩きます。
和地くんの「そんな恋愛、楽しいですか?」という言葉が残り、文菜は自分でもよく分からない悔しさに飲まれそうになる。歩くスピードが上がっていくのは、感情が追いつかれないようにするためみたいに見えます。
そして文菜は、和地くんの“まっすぐさ”に対して、どこかで嫉妬している自分に気づきます。
恋をして、痛くて、それでも相手を好きだと言える強さ。自分にないものを見せつけられたような感覚が、文菜の中に残っていきます。
ゆきおからの電話。「送って行こうか」—断る文菜
家に着くと、ゆきおから電話が来ます。
「明日帰るんだよね。送って行こうか」とゆきおは提案しますが、文菜は「午前中から帰るから」とやんわり断ります。
優しさを受け取らない、というより、受け取れない。
この“受け取れなさ”が、ゆきおの同棲提案に即答できなかったこととも地続きで、文菜の恋がどこへ向かうのかがますます不穏になります。
文菜はこの時、「もしゆきおに別れを告げられても、自分は悲しめないかもしれない」と考えてしまう。
それは冷酷な発言というより、“本気になれない自分”を自分が一番わかっているから出てくる怖さでした。
その夜、小太郎から呼び出し。失恋した男の“逃げ方”が、しんどい
その夜、文菜は小太郎から連絡を受けます。
小太郎も恋人に振られたばかりで、文菜に話を聞いてほしかった。けれど文菜は、小太郎の“失恋の夜の逃げ方”にきつい言葉を投げます。「振られたのに、好きな女に会いに来るのは違う」と。
文菜は小太郎に告白されたことがあるし、小太郎の気持ちも知っている。
だからこそ、小太郎の“逃げ”が、そのまま文菜を巻き込む形になるのが見えてしまって、先に棘のある言葉が出てしまうんだと思います。
それでも文菜は、小太郎を突き放しきれない。
「小太郎とは付き合えない」と線は引きながら、流れのまま“ホテルへ行こう”と誘ってしまいます。
ホテルへ行くのに、起きない。小太郎が選ぶ“触れない”という答え
ふたりはホテルへ行きます。
だけど小太郎は、ソファから動かず、謝るばかり。文菜のことが好きだと認めながらも、“これは違う”と、身体の関係には進まない道を選びます。
小太郎は、文菜を「特別」にしてしまったことを謝ります。
会えると嬉しくて、それだけで満たされてしまって、勝手に期待して、勝手に傷つく――その循環の中に自分がいることを、小太郎自身も分かっているように見えました。
文菜がふと、何か言いかけて飲み込む。
その時に出てくるのが、あの言葉です。「なんかさ、なんかね」。言いたいことはあるのに言えない、でも言えない自分を笑ってごまかすみたいな、文菜の癖がここに濃く出ます。
文菜は小太郎に「聞かないの?」と投げかけ、小太郎は「言いたくないなら聞かない」と返します。
問い詰めない優しさが、逆に痛い。ここは“優しさが正解じゃない瞬間”が、静かに描かれた場面でした。
布団の中、文菜の思考がぐるぐる回り続けて2話は終わる
ベッドに入り、布団に包まった文菜は、頭の中でいろんな関係を並べていきます。
ゆきおという恋人。小説家の先輩。自分を好きだと言う小太郎。ロマンティック・アセクシュアルのエンちゃん。
“性的なことが絡むか絡まないか”で、人間関係が変わってしまうこと。
“本当に大切なこと”を話せるか話せないかで、距離が決まってしまうこと。文菜はそれを整理しようとして、整理できないまま、さらに深く考えてしまいます。
文菜の中には、埋まらない穴みたいな感覚があって、その正体が分からない。
それが“人”で埋まるものなのかどうかすら分からない。人のことはすぐ好きになるのに、本気にならないようにしてしまう自分がいる。
そして2話は、「何かが起きた」よりも、「何も決められないまま、少しずつズレていった」後味を残して終わります。
クリスマスは終わったのに、文菜の心だけがまだ“冬の途中”に取り残されているようでした。
ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」2話の伏線

※この記事は「冬のなんかさ、春のなんかね」2話のネタバレを含みます。
2話は大事件が起きる回というより、会話と沈黙の中に“引っかかり”が積み重なる回でした。だから伏線も、ミステリーの謎というより「この先、心がほどける(または壊れる)きっかけ」みたいな形で散らばっている印象です。
物(小道具・場所)に残ったサイン
小道具や場所は、この作品の“温度差”をそのまま写します。2話は「一緒に過ごした事実」と「一緒に進めない心」が同じ画面に並ぶから、余計に刺さるんですよね。
- 椅子:クリスマスの日にふたりで椅子を買いに行くのは、“生活を一緒に作る”未来の象徴。でも、椅子が届くのは少し先で、その時間差が「ふたりの未来も、まだ手元に来ていない」感じに見えました。
- 喫茶店「イスニキャク」:文菜が日常の悩みを言葉にできる場所。恋愛の話を“他人と安全に”できる場所があること自体が救いで、同時に恋人に話せていないことの裏返しにもなっています。
- 出版社と新作原稿:文菜が“自分の恋”を真正面から語れない時、代わりに動き出すのが執筆。原稿の相談は仕事の話なのに、感情の棚卸しでもあって、ここがこの先ずっと効いてきそうです。
- 小説の登場人物(梢):エンちゃんをモデルにした人物を描くこと自体が、文菜の中の「憧れ」と「嫉妬」を言語化する装置。現実で言えないことを、物語の中で先に言ってしまう流れが伏線になっています。
- ホテル:文菜が小太郎をホテルに誘う展開は、“肉体の関係”を簡単に結びつけるためというより、感情のやり場をなくした夜の選択として残ります。ここを境に、文菜の線引きがさらに曖昧になりそうです。
セリフに混ざった、未来へのトゲ
このドラマは、やさしい会話が多いぶん、刺さる言葉が出た時に破壊力がすごい。2話は特に「正論じゃない本音」が何度も飛び出して、そこがそのまま伏線になっていました。
- 「クリスマスは恋人と過ごしたい?」:ここで“価値観の違い”が可視化されます。文菜はこだわらない派だけど、ゆきおは記念日を大切にする人。小さな差が、同棲提案の場面で一気に大きく見えてくる流れです。
- 「夏くらいに一緒に住まない?」:言葉としては優しいのに、受け取る側には覚悟を迫る。文菜が即答できない事実が、ふたりの“テンポの違い”として残ります。
- 和地くんの「クソじゃん」:失恋の痛みが、羨ましさと混ざって攻撃に変わる瞬間。文菜の恋が「安定して見える」ことへの苛立ちは、文菜自身が一番触れられたくない部分を突いてきます。
- 「余裕がある恋愛って楽しい?」系の追及:安定=幸せとは限らない、という揺さぶり。ここで文菜の中の“薄い罪悪感”が反応してしまうのが、次の夜の選択にも繋がっていきます。
- 「(小太郎とは)付き合えないけど、それでもいいならホテルに行こう」:線引きを言葉にしたうえで、線の外側へ行く。文菜の中の矛盾が、言葉として一番分かりやすく出た場面です。
- 「勝手に特別にしてしまってごめんなさい」:小太郎の謝罪は、“好き”の暴走を自分で止めようとする言葉。ここで関係が決定的に変わる予感がします。
タイトル・副題が示すテーマの伏線
2話の副題は「考えすぎてしまう人たち」。まさに、答えを出すより先に、気持ちが渋滞してしまう人たちの回でした。
それから、作品全体で繰り返されるのが「他者との関係性は、大きく分けると二種類ある」という考え方。性的なことが絡むかどうか、そして大切なことが話せるかどうか――この二軸で人間関係を見てしまう文菜の視点が、2話の出来事を全部つないでいきます。
クリスマスは、恋人同士が“正解っぽく”振る舞う日でもあります。そこに同棲提案が来るのは、季節のイベントが背中を押すというより、文菜に「決めなきゃいけない」を突きつける仕掛けに見えました。
沈黙(言わなかったこと/保留したこと)が一番怖い
この回で何度も残るのが、「言わない」ことで守ってきた自分が、逆に追い詰められていく感じです。沈黙は優しさにもなるけれど、2話では“遅延”として響いていました。
- 文菜の“即答できない”理由:同棲が嫌というより、好きの温度に追いつけない怖さ。理由を言語化できないまま保留したことが、次のすれ違いの種になります。
- エンちゃんの悩みに対して、文菜は自分の話をしない:聞き役に徹することで優しくしているのに、自分の心は置き去り。ここが後から爆発しそうです。
- 帰省前夜、ゆきおの「見送りたい」をやんわり断る文菜:本心を言わずに距離を取る癖が、恋人相手にも出てしまう。断った理由を説明しないことが、次の不安を呼びます。
- 「別れを告げられても、悲しまないかも」という心の声:自分の感情に自信がないことの証拠。これが“予言”みたいに響くのが怖いです。
- ホテルで、文菜が言いかけてやめる:言えないまま夜が過ぎると、関係は勝手に定義されてしまう。ここは次回以降、必ず尾を引く沈黙だと思います。
人物の配置がつくった“鏡”も伏線
2話は、文菜がいろんな相手と1対1で向き合うことで、感情の角度が少しずつ変わっていく回でした。恋の悩みを抱えた人たちが周りに集まるのは偶然というより、文菜の「考え方の癖」を照らすための配置にも見えます。
- 編集者・多田:決めつけずに問いを返してくれる相手がいることで、文菜は“答えを急がなくていい”空気を吸える。恋愛でも、この姿勢が必要になる予感があります。
- エンちゃん:まっすぐさの眩しさが、文菜の逃げ癖を浮かび上がらせる存在。羨ましさが強いほど、文菜の中の何かが動きそうです。
- 和地くん:他人の恋に石を投げたくなる夜がある、と教えてくれる役割。文菜が自分の恋を“安全地帯”だと思い込むほど、この刺し方は効きます。
- 小太郎:特別にしない/されたい、の綱引きを極端な形で見せてくる存在。文菜の境界線がどこまで保てるか、試される相手です。
2話の伏線をまとめると
2話の伏線は、「何が起きたか」より「何を言えなかったか」に残っています。
椅子・原稿・ホテル――生活と仕事と夜の選択が並ぶことで、文菜の“恋愛の癖”が、いよいよ動き出した回でした。
ドラマ「冬のなんかさ、春のなんかね」2話の感想&考察

2話を見終わったあと、派手な展開よりも先に、胸の奥に小さな針が残る感じがありました。誰も極悪人じゃないのに、ちゃんと傷つけ合ってしまう。それが一番リアルで、一番しんどい。
※ここからは2話の感想・考察です(ネタバレを含みます)。
「一緒に住まない?」は、幸福のドアじゃなく“覚悟のドア”だった
同棲の提案って、ロマンティックに聞こえるのに、言われた側には現実が一気に立ち上がります。文菜が即答できなかったのは、気持ちがないからというより、気持ちの置き場所が定まっていないからに見えました。
私が切なくなったのは、ゆきおの提案が“試す”じゃなく“信じる”からこそ出てくる言葉だったこと。真っ直ぐな人に真っ直ぐ向けない時、人は一番罪悪感で黙ってしまうんだなって。
編集者・多田さんの会話が、恋愛にも刺さる
文菜は出版社で新作小説の打ち合わせをして、「今の原稿をこのまま進めていいのか」と迷いを打ち明けます。多田さんは否定せずに受け止めて、文菜の心を少し軽くする。あのやり取りが、私は2話の“静かなハイライト”でした。
人って、恋愛の話になると急に「正しいラベル」で整理したくなるけれど、本当は“一人の個人”として見てほしいだけだったりする。文菜が書こうとしている人物(エンちゃんをモデルにした人物)も、文菜自身も、誰かの代表じゃなく「その人」として見られたい。そう考えると、多田さんの姿勢は、文菜がゆきおと向き合うための練習にも見えました。
エンちゃんの恋は、優しさがそのまま痛みになる
エンちゃんは自分のセクシュアリティを言葉にしながら、好きな人との関係を「相手に我慢させるだけかもしれない」と悩みます。好きだからこそ手放したい、みたいな優しさがあって、優しいのに苦しいんです。
そして文菜がエンちゃんに向ける“羨ましさ”が、ただの憧れじゃないのが刺さりました。文菜は人を好きになれるのに、真剣に向き合うことが怖い。だから、まっすぐ悩める人が眩しい。あの感情って、誰にでも少し心当たりがあるからこそ、静かに痛い。
和地くんの「クソじゃん」は、失恋の毒が漏れた音だった
失恋って、ただ悲しいだけじゃなくて、世界が不公平に見える瞬間があります。和地くんが文菜にぶつけた言葉は、綺麗じゃないけど、ものすごく正直でした。
しかも和地くんは、クリスマスを別の人と過ごした彼女に振られたばかり。自分の夜が崩れている時に、誰かの安定が眩しくて憎い…あの感情のリアルさが、見ていて苦しくなるんです。
「相手に好かれてて、安定してて、余裕があって、それ楽しい?」みたいな問いは、外から見える“幸せそう”を疑ってくる。文菜が一番触れられたくないところを、失恋の勢いでえぐってしまうんですよね。視聴者が絶句したと言われるのも分かるし、でも私は、あれを言ってしまうほど和地くんが壊れていたんだとも感じました。
小太郎の夜は、触れないことでしか守れないものがあった
文菜が小太郎をホテルに誘う流れ、怖かったです。文菜は“好き”で行くというより、心の空洞を埋めに行くみたいで、見ている側が落ち着かない。
でも小太郎は、そこで踏み込まない。触れないまま、「勝手に特別にしてしまってごめん」と謝る。あれは、情けなさじゃなくて、好きだからこそ“これ以上壊したくない”の選択に見えました。
そしてこの夜の小太郎に「健気で愛しい」という声が上がったのも、正直すごく分かります。報われない気持ちを、他人を傷つける形で使わなかったところが、切ないのに美しかった。
考察:「恋愛」と「性愛」を切り分ける視点が、このドラマの芯
2話を見て改めて思ったのは、この作品は“恋愛ドラマ”でありながら、恋愛と性愛を同じものとして扱っていないことです。エンちゃんの悩み、小太郎の夜、そして同棲提案で固まる文菜――全部が「身体が絡むかどうか」で関係が変わってしまう現実に繋がっていました。
もうひとつの軸が、「大切なことが話せるか」。文菜は、喫茶店や編集者とは話せるのに、恋人には話せない。だから“正しそうな関係”を積み上げるほど、心だけが置いていかれる。2話はその矛盾が一気に表面化した回だと思います。
文菜は冷たいんじゃなくて、自分の感情を信用できていない
帰省前夜、ゆきおの申し出を断ってしまう文菜。
さらに「別れを告げられても悲しまないかも」と思ってしまう文菜。これって冷たさじゃなくて、自分の感情を“当てにできない”怖さなんじゃないかな、と私は感じました。
好きになってしまえる。でも、好きが続くかは分からない。
その不確かさを知っている人ほど、関係を深める言葉に、うまく返事ができなくなる。
一対一の会話劇が、文菜の心の輪郭を削っていく
2話は、文菜がいろんな相手と“1対1”で話す場面が連続して、まるで会話そのものがドリルみたいに心の奥へ入っていく感覚がありました。
喫茶店の軽い雑談から始まって、編集者との打ち合わせ、恋人との朝、友だちとの相談、失恋した人の怒り、そしてホテルの夜まで…全部「対話」で進んでいくのがこの作品らしい。
会話って本来、気持ちを分かり合うためのものなのに、文菜は会話を重ねるほど“分からなさ”が増えていく。だけどそれは後退じゃなくて、今まで見ないふりをしていたものを見てしまった結果なのかもしれません。考えすぎてしまう人が、考えないで済む恋なんてないから。
「考えすぎてしまう」ことを、作品が否定しないのが救い
副題が示す通り、2話の登場人物たちはみんな考えすぎるし、勝手に傷つくし、言いすぎる。だけどドラマは「そんな自分はダメ」と断罪しないで、ただ“そうなってしまう夜”を丁寧に置いていきます。だから見ている私たちも、自分の面倒くささを少しだけ許せる気がしました。
椅子が届く頃、ふたりはどこにいるんだろう
クリスマスに買った椅子は、生活の未来の象徴です。だけど、未来の家具を買っても、気持ちは未来に連れて行けない時がある。椅子が届くタイミングで、ふたりの関係がどんな形になっているのか――私はそこが一番気になっています。
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