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CRISIS(クライシス)2話のネタバレ&感想考察。“正義の運用”と“正義の衝動”がぶつかる社会の暗部

CRISIS(クライシス)2話のネタバレ&感想考察。“正義の運用”と“正義の衝動”がぶつかる社会の暗部

第1話で国家と市民の“正義のズレ”を浮かび上がらせた『CRISIS(クライシス)』。

続く第2話では、その抽象的なテーマが一気に現実へと降りてきます。

田丸のもとに届いた一通の連絡――それは、国家の闇を追うジャーナリストの“死の予告”でもありました。

最後に残された言葉は「アリス」。

彼が遺した一枚の写真を手に、特捜班はメディア・警察・政治が結託して隠してきた“少女たちの真実”に迫っていく。

2017年4月18日(火)夜9時放送のドラマ「CRISIS〜公安機動捜査隊特捜班〜」2話のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。

※以後ネタバレ注意

目次

CRISIS(クライシス)2話のあらすじ&ネタバレ

CRISIS(クライシス)2話のあらすじ&ネタバレ

第2話「暗殺の真相を暴け」は、“国家の危機”という言葉の正体が、実は〈社会の底に隠された搾取〉であることを突き付ける回です。

特捜班の5人は、ひとりのジャーナリストが遺した「写真」と「アリス」という言葉を手掛かりに動き出し、政治・メディア・警察までを巻き込む巨大な闇の入口にたどり着きます。

以下、まずは事実の流れを整理します。

導入――ダイイングメッセージは「アリス」

外事警察時代の知己であるフリージャーナリスト・古垣伸一郎から「国家の危機に関する重要な話がある」と連絡を受けた田丸(三郎/西島秀俊)。

しかし待ち合わせ場所で古垣は、何者かに毒物を注射され絶命。

田丸の耳に残ったのは、彼の最後の言葉――「アリス」。

古垣が事前に送っていたのは、ありふれた一軒家の写真が1枚だけ。特捜班はその2つの手掛かりから非公式の捜査に着手します。

非公式の内偵――写真の家、侵入者、そして格闘

吉永(田中哲司)の采配で、大山(新木優子)が写真の位置情報を解析し、樫井(野間口徹)が現地の痕跡を洗う一方、田丸と稲見(小栗旬)は古垣の自宅を捜索。

すると何者かが先回りして遺品を回収しようとしており、田丸は侵入者と鉢合わせて格闘に。

遅れて駆けつけた稲見が相手の“殺しの所作”を見切って応戦するが、男は逃走。

ジャーナリストの死を「心筋梗塞」で片づけようとする圧力の気配が漂い、何者かが死因と証拠を隠蔽していることが見えてきます。

「アリス」と「ドロレス」――一軒家の正体と、病院での再会

写真の家は、中年女性と少女2人が暮らしていたという近隣証言が取れ、数日前に救急搬送があった事実も判明。

病院を割り出した特捜班は、そこで昏睡状態の少女「アリス」(偽名)と、怯え切ったもう一人の少女「ドロレス」(偽名)の存在に突き当たります。

2人は家出少女で、あの一軒家は著名人・政治家・評論家らが出入りする“少女売春の拠点”だった――ドロレスの震える証言が、構図を一気に反転させます。アリスは“とても乱暴な客”に傷つけられ、以来意識が戻らない。

USBの映像――入れ替わる“被害者”と“加害者”の顔

古垣の部屋からはUSBメモリが見つかり、そこには“あの家”に出入りする与野党の大物やメディア関係者の映像が。

古垣はこの事実と、さらにその背後にいる“国のかたちを動かす権力”の存在に触れてしまったために殺された――田丸はそう確信し、「アリスをここまでにした“客”を必ず特定する」と暴走しかけます。

鍛冶の政治的現実主義――「監視か、殲滅か」

そこに立ちはだかるのが、警備局長・鍛冶大輝(長塚京三)。

「同種の施設は、公安が把握しているだけで都内に13カ所。ひとつ潰せば、より巧妙な別の穴が生まれる。だから現状は監視下に置くのが最善だ」として、特捜班の徹底捜査にブレーキをかけます。

さらに鍛冶は、“犯人”に少女の生涯の治療費支払いを約束させたと明かし、「正義の旗を振り回す自己満足で、本人の救済(現実)を潰すのか」と田丸を諭す。この“運用としての正義”を巡る対話は、第2話の思想的な中核です。

稲見の選択――「目の前の命」を救う

一方で稲見は、証拠隠滅のためにドロレスが口封じの標的になると直感。

単独で動き、彼女を追う刺客を退けて命をつなぐ。国家やシステムの議論の手前で、「まず目の前の人間を守る」という彼の現場倫理が、乾いた画面のなかで強く光ります。

ラスト――「神谷透」という名と、テレビの中の笑顔

事件は「公式には」動かないまま、翌日、人気政治家・神谷透(石黒賢)が官房長官に就任したとのニュース。

鍛冶はその映像を見てテレビを消す。視線の先には、あの“車内の顔”――権力と“あの家”の線が示唆され、画面は冷たくフェードアウトします。誰も逮捕されず、真実は公共の記録に残らない。第2話は、「国家の危機」を〈国家が温存する危機〉として描き切って幕を閉じます。

CRISIS(クライシス)2話の感想&考察

CRISIS(クライシス)2話の感想&考察

第2話は、アクションの快感で押し切る物語ではありません。

“正義の運用(鍛冶)”と“正義の衝動(田丸/稲見)”の摩擦を、社会の底面に横たわる搾取と突き合わせ、「誰のために、何を守るのか」を観客に返す回でした。

ここからは、論点ごとに深掘りします。

法の正義 vs. 運用の正義――ブレーキを踏むことは“裏切り”か

鍛冶の言葉は、耳障りのいい現実主義です。

①同種の施設が多数ある
②一斉摘発は地中のモグラ叩き
③監視のほうが被害抑止に資する

理屈は通っている。さらに彼は“少女の生涯治療費”という確かな救済まで取り付けた、と語る。

〈正義=即制裁〉ではなく、〈正義=被害者の利益最大化〉という枠組みは、法執行の現場では確かに説得力があるのです。

ただし、その運用が長期にわたって搾取の構造を温存する危険(“弱者の沈黙を制度に組み込む”危険)も同時に孕む。“抑止のための監視”と“温存のための監視”は紙一重――ここに本話の最大の刺があります。

田丸と稲見――“理念の正義”と“現場の倫理”は対立しない

田丸は「犯人を特定する」という理念の正義を手放したくない。

稲見は「目の前の命を守る」という現場の倫理を最優先する。描かれるのは対立ではなく、時間軸の違いです

短期(救命)と中長期(再発防止)。特捜班という「極秘の器」がこの二つを内包したとき、物語は“正義の総和”を探り始めます。稲見が救った命は、田丸の“いつか変える”という誓いの前提でもあるのです。

アリス/ドロレス――“名付け”が可視化する構造的被害

少女たちの偽名「アリス」「ドロレス」は、個人情報の保護であると同時に、個人が“物語に溶かされる”危うさでもあります。

名前が記号化される瞬間、被害は統計へ、痛みは概念へ。USBに映る“著名人の顔”は鮮明なのに、被害者の素顔はあえてぼかされる。

“誰を守り、誰を匿名化するか”という映像の倫理が、静かな怒りとして画面に滲みます。

テレビの中の笑顔――“結果の不在”が残すもの

ラストの官房長官就任ニュースは、手続きとしての勝利(権力)と正義としての敗北(真実の黙殺)を同時に映します。逮捕劇も会見もない。しかし、本話は「敗北のドラマ」ではありません。被害者の治療費という現実的な救済が一方にあり、ドロレスの生存という確かな成果がもう一方にある。“結果が見えない”のではなく、“複数の結果が併存”している――そのグレーを視聴者に残す構図が、クライシスの気骨です。

第1話からの地続き――“平成維新軍”の外側で起きていること

第1話は“平成維新軍”の声明で国家と正義のズレを高い抽象度で叩きつけましたが、第2話はそのズレの生活実装を見せます。

声明やテロではなく、誰もニュースにしない“日常の闇”。この落差(マクロ/ミクロの往復)がシリーズの推進力であり、「国家の危機」とは、国家が見ないふりをする危機であることを、丹念に証明していく。

演出とアクション――“間合い”で語る説得力

絵作りは1話同様に身体×情報×仕組みの三位一体。

田丸が侵入者と交錯する狭い室内の格闘、稲見の体重移動で崩すクリンチ、大山の端末越しの捜査。

派手な爆破を避け、位置取りと“間”で手に汗をかかせる。実務感の高いアクション設計が、重たい社会批評を受け止める“地面”になっています。

セリフの設計――「自己満足」という刃

鍛冶の「それはお前の自己満足だ」という一撃は、視聴者の胸にもブーメランのように返ってきます。

SNSで“正義”を語ることは簡単ですが、誰かの治療費を実際に担うことは難しい。行為のコストを誰が、どの制度で負担するのか――第2話は“口の正義”から一歩外へ連れ出す脚本でした。

第2話の“問い”のまとめ

被害者の利益最大化は、加害構造の温存とどう両立させるか。
短期(救命)と長期(構造変革)の正義を、誰が・どの順番で担うか。
匿名/可視化の線引きは、誰にとっての安全・誰にとっての暴力か。
合理の運用と儀礼としての正義(謝罪・断罪)の線引きはどこか。

クライシスは、“勧善懲悪の快楽”を与えない代わりに、“考え続ける快楽”を置いていきます。

第2話はその優れた標本。田丸の「いつかこの腐ったシステムを変える」という台詞は、視聴後の僕らに“いつか”を“いま”に変える想像力を要求している、と受け取りました。

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