第1話では、宗教団体による要人暗殺計画を未然に防いだ直後、都心で前代未聞の“首輪爆弾事件”が勃発します。
外務大臣の息子という“守られた存在”が爆弾を巻かれ、国家と個人、加害と被害の境界が一気に揺らぐ。
追い詰められる現場の中で、稲見と田丸が見つめるのは「法」と「復讐」の狭間。
2017年4月11日(火)夜9時放送のドラマ「CRISIS〜公安機動捜査隊特捜班〜」1話のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
CRISIS(クライシス)1話のあらすじ&ネタバレ

第1話は、「国家を揺さぶる規格外の事件」と「それでも現場で選ぶ倫理」を同時に突きつける幕開けだった。
稲見朗(小栗旬)と田丸三郎(西島秀俊)を擁する“公安機動捜査隊特捜班”は、警察庁警備局長・鍛冶大輝(長塚京三)直轄の極秘部隊。
政治・宗教・スパイが絡む“表に出せない案件”を、5人のスペシャリストが秘密裏に処理していく。
導入:宗教団体の要人暗殺を“先に”潰す
物語は宗教法人「神の光教」による岡本文科大臣暗殺計画の未然防止から始まる。
新幹線内での一斉確保——田丸は静かに容疑者を落とし、稲見は暴れる実行犯を制圧。派手で流麗なアクションを通して、特捜班の“即応力”が可視化される。
ここで提示されるのは、第1話全体のトーンである「タイムリミット」と「肉迫の編集感覚」だ。
首輪爆弾事件:外務大臣の御曹司に突きつけられた“公開処刑”
直後、都心の広場に首に爆弾を巻かれた大学生・宇田川圭介(白洲迅)が現れる。
彼は現職外務大臣の息子で、薬物や傷害などの不祥事を父の権力で揉み消してきた人物。犯人の要求は「夜のニュースで大臣が公開謝罪せよ。さもなくば息子を処刑する」。
鍛冶の指示で特捜班が現場へ走り、班長・吉永(三成)=田中哲司のもと、稲見・田丸・樫井(爆発物処理)・大山(ハッカー)がそれぞれの持ち場で動く。
5人の分業と現場の“制御”:稲見の間合い、田丸の聴取、大山の電脳
現場では「半径1m以内に近づけば爆破」「不審を感知すると赤ランプ点灯」という凶悪仕様の爆弾が確認され、時間は19時のニュースまで。
稲見は動揺する宇田川を抑え、田丸は拉致現場と交友関係から“実行線”を掘り起こす。大山は電波妨害・発火トリガーの特定へ、樫井は爆弾の構造解析へ——それぞれの専門が“爆発しないための世界”を広げていく。
揺らぐ同情:被害者は“100回殺されても自業自得”なのか
捜査の過程で明らかになるのは、宇田川が複数の女性に犯してきた加害の歴史。
もみ消しを重ねさせた“父の権力”の構図まで掘り起こされる。特捜班の内部にも嫌悪が走るが、「誰であれ、目の前の爆発は止める」——現場の矜持が優先され、彼を生かすことが“事件の真相”へとつながっていく。
反転:犯人は“警察官の父親”——復讐のロジック
やがて浮上する犯人像は、事件現場の警備に就いていた現職警察官・鳥越(桜井聖)。
彼の娘は宇田川らに暴行され、自死へ追い込まれた——なのに権力はその事実を隠した。
鳥越は「法が守らないなら自分が裁く」と宇田川に首輪爆弾を装着。復讐の論理が“国家の正義”と衝突し、タイムリミットが削れていく。
間一髪の解除:起爆指令、そして“もう一人”の影
宇田川が暴れ、鳥越が起爆ボタンに触れる——しかし樫井が構造を見切って解除、吉永の采配が生きる。
取り押さえられた鳥越は語る。「爆弾を用意し、宇田川をさらったのは俺じゃない。指示は他にいた」。事件は“市民VS警察”でも“被害者家族VS加害者”でもなく、背後に“組織的企図”が立ち上がる。
事件の“公式記録”と現実の乖離——平成維新軍という名
マスコミは事件を「大学生の悪ふざけ」と報じ、宇田川は逮捕されない。
だが同時に官公庁のサイトがハッキングされ、「平成維新軍」を名乗る声明が掲出される。国家は善悪の名のもとに嘘をつく——そんな文言が、特捜班と視聴者の胸を冷たく刺す。第1話はこの“乖離”を焼き付けて幕を下ろした。
特捜班の立ち位置:誰のための極秘部隊か
稲見(元自衛官)と田丸(元公安)、樫井(爆発物)・大山(サイバー)・吉永(情報と采配)が、鍛冶局長の下で“公にならない”事件に対処する。
彼らは秩序(国家)に仕えるが、目の前の個人を捨てない。その張力こそが、以後の各話を駆動する燃料になる。第1話はその“装置の説明”を、アクションで提示した回だった。
CRISIS(クライシス)1話の感想&考察

第1話を見てまず思うのは、本作が“アクションの快感”と“制度への懐疑”を同じ編集台に載せている点の鋭さだ。以下、論点を分けて掘り下げていく。
1)「正義」の三層:法/復讐/国家
鳥越の動機は、法が守らなかった“穴”を埋めるための復讐であり、倫理的には理解できる。
しかし特捜班は、その復讐を止めなければならない職責を持つ。一方で国家の側も事件を“なかったこと”にしようとする。
法の正義(現場)/復讐の正義(個人)/国家の正義(統治)の三層がぶつかり、どれも“完全には正しくない”。この構造が本作の骨格を形づくっている。
2)“時間”の演出:19時へ向けての収束
19時のニュースという明確なデッドラインに、交渉・解析・聴取の三線が同時進行する。
稲見が“間合い”で時間を稼ぎ、樫井が“仕組み”を見切り、大山が“電波”を狭める。身体×仕組み×情報の三位一体で“爆発しない世界”を作る描き方が秀逸だ。
アクションは派手だが作戦は地味、その落差が作品の信頼度を押し上げている。
3)稲見と田丸の対照:肉体と規律
稲見(元自衛官)は“機を見るに敏”な行動で局面を割るタイプ。
田丸(元公安)は“聴き取り”と“配置”で網を縮める。1話ではこの対比を、冒頭のテロ未然阻止で示し、爆弾事件では互いの弱みを補完する構図を取る。のちの連携に説得力を与える仕掛けだ。
4)平成維新軍=“正義の窃盗”の告発
事件後に掲出される平成維新軍の声明は、「国家は嘘をつく」という露悪的な言葉で正義の位置を反転させる。
国家が“物語”を編むのは当然だが、問題は“どこまでが許容か”。
この一撃は、「法を信じたい視聴者」と「法に裏切られた当事者」の距離を測る試金石になっている。1話を“ただのプロローグ”にしない力がここにある。
5)宇田川という“装置”
宇田川は典型的な“社会の傷”の凝縮体だ。
被害者であり、同時に加害者。彼が生かされることで、復讐のロジックは剥がれ、“真犯人(鳥越)”と“黒幕(維新軍)”の二層へバトンが渡る。国家はその“真相”を封じる。「救った命」が「見えない真実」の象徴になる構図は、シリーズ全体の問いを先導している。
6)“装置としての特捜班”が抱える矛盾
特捜班は国家の器に入ったチームだが、1話のやり口(隠蔽や政治的配慮)を見ると、「現場は誰のために働くのか」という根本が揺れる。
彼らが最終的に従うのは“鍛冶の命令”なのか、“市民の安全”なのか。シリーズ全体の背骨になる問いを、1話は説明ではなく体感で立ち上げた。
7)総括:アクションで観客を掴み、制度批評へ引きずり込む
1話は、新幹線テロ阻止→首輪爆弾→維新軍声明と、三段階でスケールを拡大しながら、最後に「国家VS市民」という抽象度へジャンプする。
アクションの快感で心拍を上げ、“法と正義のズレ”という思考に観客を導く構成が秀逸だった。第2話以降、平成維新軍の実像や、稲見・田丸それぞれの過去が掘られていくほどに、第1話の“起点の重さ”はさらに増していくだろう。

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