第8話の『嘘の戦争』は、「正義の配置」と「恩の裏切り」を描いた衝撃の回だ。
隆(藤木直人)が提案した“金による終戦”を退け、浩一(草彅剛)は公の謝罪を求める。
晃(安田顕)と楓(山本美月)を交渉の場に呼び寄せ、家族の“盾”で守られてきた者たちに真実を直送する。
一方、六車(神保悟志)との廃ホテルでの対決は、最小の物理と最大の設計で暴力を制する知の勝利。だが、六車の口から語られた“第三の真実”が、恩人・三瓶守(大杉漣)へ矢を向ける引き金となる。
嘘の配置が、人間の倫理を試す。この回で復讐は“快楽”から“責任”へ、静かに相を変えた。
2017年2月28日(火)夜9時スタートの新ドラマ「嘘の戦争」8話のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
ドラマ「嘘の戦争」8話のあらすじ&ネタバレ

第8話は、“情報戦”と“暴力の言語”が初めて真正面から噛み合う回。
復讐の矢はふたつに分岐する。
(A)二科家に対する真実の露呈(=隆との交渉の席に晃と楓を“あえて”立ち会わせる)
(B)六車(神保悟志)への実力反撃(=ハルカ救出と逆トラップ)。
さらに終盤では、三瓶守(大杉漣)に関する“もう一つの真実”が浮上し、物語は「恩と裏切り」という非情な問いへと雪崩れ込む。
序盤──隆の“金での終戦”提案と、浩一の逆提示
興三(市村正親)の容体が回復し、「浩一=千葉陽一」という事実が隆(藤木直人)に共有される。
隆は「録音(=30年前の隠蔽を語る興三の肉声)」と引き換えに、金と“手打ち”を提案するが、浩一(草彅剛)は「謝罪会見(公の場での告白)」を逆要求。
私的な和解ではなく、公的な記録を求める方向に舵を切る。
浩一は交渉の場に盗聴器が仕込まれていることを承知で、声量と語彙を操作し、“外の耳”にも届くよう会話を設計していた。
仕掛け①──晃と楓を“立会人”にする、守られてきた家族への真実の直送
浩一は晃(安田顕)を呼び出し、隆との交渉を“外側”で聞かせる構図を作る。
その結果、楓(山本美月)も同席。
晃が「事故だった」と反射的に弁明すると、浩一は録音を再生し、“事故ではなく殺し”であり、もみ消しの指示が興三から出ていたことを突きつける。
さらに楓に対しては、「好きも、キスも、結婚も、全部“会長に近づくための嘘”」と残酷な真相を告げ、隆の庇護の外に二人を押し出す。二科家という“家の内部”の崩壊は、ここで既成事実化された。
サイド線──隆→ハルカの“協力要請”、百田の撤退宣言
隆はハルカ(水原希子)に接触し、「録音さえ手に入れば千葉陽一を傷つけない」と取引を持ちかける。
それを目撃した百田(マギー)は、「これ以上は危険だ。ビジネスでなく復讐には付き合えない」と撤退を宣言。
仲間側にも温度差が生まれ、チームの内部にも綻びが走る。
仕掛け②──六車の“暴力の言語”、ハルカ拉致から廃ホテルへ
六車は盗聴器で情報優位を取りつつ、ハルカを拉致・監禁する。
ハルカは辛うじてスマホの電源を入れ、カズキ(菊池風磨)が電波から位置を特定。場所は山奥の廃ホテル。罠の匂いしかしないが、浩一は「それならそれで面白い」と現地へ向かう。
“理の罠” vs “力の包囲”、二つの言語の正面衝突が始まる。
廃ホテル──餌と罠の入れ子構造、「相棒だろ、たった一人の」
廃ホテル内部で、浩一はわざと姿を見せ囮になる。
猪用の鋼鉄トラップに六車の脚を誘導し、その隙にカズキがハルカを救出。
六車は銃を手に抵抗し、発砲。ハルカに銃口を向けた瞬間、浩一が身を投じて被弾するが、防弾ベストで生還。
「相棒だろ。たった一人の」という一言に、仕事の倫理(詐欺)とケアの倫理(仲間を守る情)が重なった。
六車は脚に重傷を負いながらも逃走。
暴力に対し、“最小限の物理×最大限の設計”で勝ち切った。
六車が吐いた“第三の真実”──三瓶守という影
六車は浩一に「お前の父は“OL殺害の証拠”を“友人”に託した」と語る。
「だが誰も声を上げなかった。二科家には関わらない方がいいと皆が考えた」と続け、重要な示唆を残す。
浩一は即座に、“友人”=三瓶守(養護施設の園長)に直感的に辿り着く。30年前、父が託した証拠を“握りつぶした”のは誰か。矢印は家の外周から、恩人の胸へと向かっていく。
告発と土下座──二科家の崩落は“身内の言葉”から始まる
同じ頃、二科家では晃が楓に土下座し、隆は社長就任時から真相を知っていたことを明かす。
楓は「許せない」と涙ながらに家を飛び出す。
“守られてきた側”が初めて、“守ってきた沈黙”を拒む瞬間だった。
夜の施設──三瓶守との対面、恩と裏切りのねじれ
浩一は宮森わかばの家を訪ね、三瓶に「父から証拠を託されたのは、あなたですね」と問い詰める。
三瓶は「家族が怖かった。娘が同じ目に遭うのが」と涙ながらに告白。浩一は怒りを呑み込み、「相手が悪すぎました」と引き取る……が、施設を出るや否やハルカに「アイツにも復讐を。昔から弱点は知ってる」と告げ、黒い笑みを浮かべる。
恩人が次の標的へ変わるという倫理的急降下で、8話は幕を閉じる。
ドラマ「嘘の戦争」8話の感想&考察

第8話は、「嘘は量ではなく配置」というシリーズの作法を、“家族の破綻”と“恩の裏切り”という極限状態で試した回。
ここでは五つの論点で深掘りします。
私的な手打ち vs 公共の告白──“記憶”ではなく“記録”を残す戦い
隆の“金による終戦”は合理的だが非公開。
対して浩一が求めたのは“謝罪会見”という公共の記録だった。
一家心中という虚構は、世間の記憶に埋め込まれた“誤史”である。
ゆえに浩一の復讐は、感情の昇華ではなく「歴史の修正」。復讐の目的が“癒し”ではなく“更新”であることを、8話は明確に描き出した。
六車という暴力の言語──最小の物理と最大の設計
罠の噛ませ方、囮の動かし方、救出と回避の同時進行。
浩一は暴力に対し、最小の物理と最大の設計で応戦した。
防弾ベストの存在も、単なるアクションではなく“生き延びる前提”としての理性の象徴。
「相棒だろ、たった一人の」という言葉には、詐欺師の職能と人としての情が共存していた。
復讐の理屈に人間味を注ぐ、シリーズの心臓部がここにある。
家の“盾”を壊す──晃と楓に“真実”を直接届ける残酷さ
浩一は、晃と楓に録音を直接聞かせることで隆の庇護を越えた。
「好きもキスも結婚も嘘」という言葉は、彼らを守っていた“嘘の膜”を剥ぎ取る。その残酷さは、構造的加害を家族の内部で自覚させるための必然だった。
楓の怒りや動揺は、守られてきた側が初めて現実に触れた反応として自然だ。真実は破壊を伴う——それをこの回は冷徹に示した。
三瓶の涙は赦しではない──恩と裏切りのねじれ
「家族が怖かった」という三瓶の言葉は、個の臆病と構造的暴力が交差する地点を示す。
恩人が真実を握り潰していた——このねじれは重い。浩一が一度は退きながらも「アイツにも復讐を」と笑む展開は、単なる逆恨みではなく、
“正義の回路を断った存在”への報復という新しい問いを提示している。
この矢がどこへ折り返すのか(=9話の逡巡)を考えるうえで、8話は倫理的な踏み絵となった。
隆の統治と“受容の刃”──正しさを装備した敵の誕生
隆は排除ではなく受容を選ぶ。
私的和解による家族維持という正攻法を取りながら、家族の盾が外れた瞬間、その受容が刃に変わる。
「受け入れて見極める」——この姿勢は、暴力よりも厄介な支配の形だ。
隆は正当性という鎧をまとった敵へと変化し、企業統治 vs 私的復讐というスリラーの中心がここに生まれた。
“配置”の妙──誰に、何を、いつ“聴かせる”か
・盗聴を承知で、隆の前で興三の罪と晃の関与を語り、晃と楓に届かせる。
・囮(自分)/救出(カズキ)/逆罠(猪罠)を同時に走らせ、六車の暴力を分割する。
・六車の“第三の真実”を施設の夜に接続し、三瓶=恩の裏切りを感情の最深部で突き付ける。
すべては「誰に、何を、いつ聴かせるか」という配置の勝利。嘘は量ではなく配置——シリーズの核心命題が最も精密に体現された回だった。
視点の高さ──“歴史の修正”と“人間の回復”の二重構造
8話の優秀さは、復讐を個人のカタルシスに留めなかった点にある。
歴史(社会の記録)の修正と、人間(関係性)の回復。この二つの目標はしばしば矛盾する。
楓への告白は残酷でも必要であり、ハルカ救出は甘さではなく希望の手触りだった。正しい言葉が届くための“雑音”を意図的に作る——それが今回の設計思想だ。
8話の印象的な言葉
「相棒だろ、たった一人の」——職能と情の両立宣言。
「許せない、父さんを」——守られてきた側の最初の叫び。
(三瓶)「娘が同じ目に遭うと思って…」——恩と裏切りが同居する人間の弱さ。
総括
私的な手打ちを拒み、公共の告白へ。復讐は“歴史の修正”へと進化した。暴力を“最小の物理×最大の設計”で制御し、ダークヒーローの理性を証明。
家族の盾を壊し、恩を裏切る——倫理の踏み絵を踏んだ第8話。
「嘘は量ではなく配置」という命題が、最も血の通った形で結実した。
この回で物語は“快楽の復讐譚”を抜け出し、
「誰が、どこで、どの記録に、どう責任を負うのか」という社会的テーマへ到達。
矢が次に三瓶へ向かう時、浩一は自分の“人間”を守れるのか。第9話の正念場は、8話の倫理的余熱からしか立ち上がらないはずだ。
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