黒幕の影がついに輪郭を帯びた第4話。
その余韻を引き継ぐように始まる第5話「亡霊」は、〈蠱毒〉という死の遊戯の奥深くに潜んでいた“国家の闇”が静かに姿を現し始める回だった。
明治という新時代の中で、侍は本当に“過去の亡霊”なのか。愁二郎たちが守ろうとするもの、奪われようとしているもの。その境界が揺らぎ、物語の温度が一段上がる——そんな“転換の息”をはらんだ第5話だった。
ドラマ「イクサガミ」5話のあらすじ&ネタバレ

Netflixシリーズ『イクサガミ』第5話「亡霊」では、物語がいよいよ核心へ迫り始める。
幕末から続く因縁、政府による蠱毒の裏側、そして主人公・愁二郎が直面する新たな危機。クライマックス直前らしい緊張感に満ちたエピソードだった。以下では、第5話のストーリーをネタバレ込みで詳しく整理していく。
川路利良の正体と“10年前の因縁”
物語は10年前の戊辰戦争の回想から始まる。そこで描かれたのは、後に〈蠱毒〉の黒幕となる川路利良の過去だ。
新政府軍の指揮官として旧幕府軍を追い詰めた川路は、大砲と銃撃で武士たちを徹底的に壊滅させていく。
第一話で愁二郎達が既に相手の首を打ったのにもかかわらず、敵味方関係なく大砲を撃っていたのはこの川路達だった。
川路は維新後も「武士は新時代にふさわしくない亡霊だ」と考え、侍そのものを新国家から排除すべき存在として捉えていた。
かつて同志の多くを侍によって失ったことで、その憎悪はより強まり、武士階級を根絶する計画——すなわち〈蠱毒〉を仕組むに至ったことが示される。
一方、現代(明治11年5月頃)の物語では、柘植響陣(東出昌大)が警察署から脱出し、警視庁が蠱毒に関わっている可能性を悟り始めていた。
主人公たちはまだ川路が黒幕だと知らないものの、響陣だけは警察の動きに何か異様なものを感じ始めている。
愁二郎 VS 櫻の死闘と、彩八の機転
第5話冒頭、愁二郎(岡田准一)は槐(えんじゅ/二宮和也)の部下である櫻(淵上泰史)と激突する。櫻は冷酷無比な剣士で、愁二郎は圧倒されるような猛攻を受け一時窮地へ追い込まれる。
その瞬間、衣笠彩八(清原果耶)が駆けつけ、煙幕弾を投げて視界を奪うことで愁二郎の退路を確保。愁二郎は死闘の末、彩八の救援によって辛くも櫻から逃れ、一命を取り留めた。
愁二郎は彩八、響陣、そして守っている少女・香月双葉(藤﨑ゆみあ)と再合流。
ここで彼らは〈蠱毒〉が賞金目当ての生存ゲームではなく、より大きな思惑によって動かされている可能性を強く意識し始める。愁二郎にとって、当初の目的「妻志乃を救うための賞金」以上に、このゲームの真実を暴く必要性が芽生えていく。
三つ目の関所「池鯉鮒」と、双葉の決断
愁二郎一行(愁二郎、双葉、彩八、響陣、そして途中から加わった狭山進之介/城桧吏)は、三つ目の関所「池鯉鮒(ちりゅう)」へ到着する。通過条件は“木札5点”。だが、進之介だけが必要点数に満たず、関所の役人から通過を拒まれる。
木札を分ければ自分たちの点数が減り、後の関門で不利になる。愁二郎と彩八は、進之介を見捨てざるを得ないという判断に傾きつつあった。
しかし、この状況を変えたのは双葉だった。
双葉は泣きながら「人を見捨てたまま母上のもとへ帰れない」と訴え、自分の木札を差し出す。
双葉の行動に心を動かされ、彩八、響陣、愁二郎もそれぞれ1点ずつ提供。結果、進之介を含む全員が条件を満たし、六人全員で関所を突破することができた。
さらに双葉の行動には思わぬ副産物があった。木札を渡すやり取りの最中、関所の運営スタッフ・橡(とち)が「最後の9人に残れば生き残れる可能性がある」と口を滑らせたのだ。
これは蠱毒の“本当のルール”に近づく重大なヒントだった。
前島密への電報と、黒幕の妨害
関所を通過した愁二郎たちは作戦を練り、二手に分かれて行動することを決める。
警察に追われている可能性がある響陣は進之介と行動し、独自の情報網で蠱毒の背後を探る方針をとる。一方、愁二郎・双葉・彩八の3人は政府へ直接訴え出る危険な作戦に踏み切った。
愁二郎は旧知の内務卿・前島密(田中哲司)へ電報を打ち、「岡崎で会いたい」と面会の約束を取りつける。また電報には「双葉を保護すること」を条件に蠱毒の情報を提供すると記し、少女の安全を守ろうと必死に動く。
だが、その裏で黒幕・川路利良も動く。
大久保側の秘書・永瀬心平(中島歩)が、蠱毒主催者たちの暗号電報の解読に迫っていたが、その動きを察知した槐によって永瀬は殺害されてしまう。
川路は証拠を掴まれる前に政府内部の関係者すら容赦なく排除し始め、蠱毒の裏で進む計画が国家規模であることが明白となる。
響陣の邂逅と、京八流兄弟再集結の兆し
別行動に移った響陣は、偶然祇園三助と化野四蔵という浪人二人組と遭遇する。
彼らは彩八と同じ京八流の義兄弟であり、響陣は彼らへ「彩八と仇敵・岡部幻刀斎が、近く開催される祭りに姿を現す」という情報を伝える。
この一言により、散り散りとなっていた京八流の兄弟たちが再び集結する流れが動き出す。
彩八の宿敵である幻刀斎も蠱毒の混乱に乗じて動いており、第6話での激突を予想させる展開となった。
黒幕の魔手が愁二郎に迫る——物語は最終局面へ
第5話ラストでは、愁二郎たちのもとにも不穏な影が忍び寄る。川路は大久保への電報を察知し、愁二郎たちを抹殺しようと動き始めていた。
国家権力の魔手が主人公たちのすぐそばに迫る中、物語は最終局面へ向けて一気に加速していく。
第5話は、
- 川路という“国家の亡霊”の正体
- 双葉の選択がもたらす希望
- 響陣の策略と独自の動き
- 幻刀斎再登場の予兆
- 国家 vs 侍という物語構造の明確化
が一気に描かれた濃密なエピソードだった。
次回、愁二郎たちはついに蠱毒の核心へと踏み込むことになる。
ドラマ「イクサガミ」5話の感想&考察

ここからは第5話を視聴し終えて感じた点、そして物語の考察ポイントをライターとして整理していきたい。
クライマックス直前ということもあり、アクションの迫力、物語のテーマ性、伏線の提示、そして今後の展開予測まで語る材料は非常に豊富だ。
第5話「亡霊」 が残した印象と考察を、論点ごとに読み解いていく。
圧巻の殺陣シーンとアクション演出——シリーズ屈指の“間合いの攻防”
まず真っ先に触れたいのは、第5話のアクションの完成度だ。
序盤の愁二郎VS櫻の剣戟は、シーズン全体を通しても屈指の名勝負だった。間合いの読み合い、踏み込みの鋭さ、斬撃の重さ。そのすべてが映像に宿り、視聴中は思わず息を止めてしまうほどの緊迫感があった。
第5話のアクションは圧倒的な没入感を誇る。ネットでも
「岡田准一×淵上泰史の殺陣はシリーズベスト」
という評価が相次ぎ、視聴者の間でも第5話はアクション回として大きく支持されている。
主演・岡田准一がアクションプランナーを務めているだけあり、刀が“軽く見えない”演出が徹底されているのが特徴だ。
斬り結ぶ際の金属音や身体のぶつかり方がリアルで、レビューでも
「刀の重量がちゃんと伝わる。チャンバラになっていない」という声が多い。
また、単なる斬り合いだけでなく、彩八が煙幕で愁二郎を救い撤退するシーンなど、戦術的な要素を組み込んだアクション演出も秀逸だった。乱戦シーンでは多数のキャストが入り乱れ、暗いライティングと重厚なカメラワークが相まって“Netflixの世界基準”を感じさせる迫力があった。
海外からの評価も高く、アジア圏でも第5話のアクションは絶賛されているとの報道もあり、世界向け作品としての完成度を示す回だったと言える。
川路の目的と「亡霊」が象徴するテーマ性——武士の終焉と国家の闇
第5話のサブタイトル「亡霊」は、物語のテーマを象徴する重要なキーワードだ。
川路利良は劇中で“侍は新時代に不要な亡霊だ”と語り、武士階級を徹底的に排除しようと暗躍していた。明治維新によって武士の社会的役割は急速に失われ、政府は廃刀令や俸禄の廃止など、武士階級の解体を進めた。
『イクサガミ』の世界では、この史実が〈蠱毒〉として極端な形で具現化されている。
さらに物語の時代設定は明治11年。大久保利通が史実で暗殺された年であり、劇中でも大久保の秘書が暗殺される展開が描かれたことで、川路の冷酷な意思と国家の闇がより濃厚に描かれている。
川路にとって武士とは「亡霊」であり、自らの“新国家構想”の妨げとなる存在。だからこそ彼は蠱毒を通じて武士たちを一掃しようとしており、その狂気と正義が複雑に絡み合っている。
愁二郎たちから見れば理不尽で恐ろしい暴虐だが、川路自身には川路なりの“過去の傷”と“国家観”があり、そこが単なる勧善懲悪とは異なる深みを生んでいる。
ただし一方で、物語上の粗さも感じられた。蠱毒というデスゲームが戦略性に乏しく、参加者たちが“ただ戦って死んでいく”描写に寄ってしまう部分がある。キャラの掘り下げが浅く感じるという意見もあり、特に敵側キャラが「背景の薄いモンスター」として消費されがちな点は惜しい。
とはいえ、第5話で描かれた“武士の終焉”というテーマは作品の核であり、川路の狂気を通して明治政府の“光と影”が丁寧に浮かび上がっていた。
こどくゲームに潜む伏線——「最後の9人」の意味とは?
第5話で最も視聴者の考察を刺激したのは、関所で運営側が漏らした
「最後の9人に残れば生き残れる可能性がある」
という衝撃の一言だ。
通常のバトルロワイヤルであれば勝者は1名だが、蠱毒では“9名”という謎の数字が示された。ここに主催者側の意図が隠されていると考えられる。
考察の一例としては、
- 危険度の高い侍トップ9をあぶり出す選別
- 9名を国家のある役割に利用する計画
- 恐怖と希望をバランスさせる“生存枠”としての9
などが考えられる。
双葉の行動がこの情報のきっかけとなったが、この“9名”という要素は最終話に向けた非常に大きな布石である可能性が高い。
響陣の企みと“表と裏の表情”——最も読めない男の伏線
第5話で特に存在感を示したのが、柘植響陣だ。元伊賀忍者という設定から、諜報・心理操作・変装など全方位に強い彼は、物語の“情報線”を担う重要キャラだ。
彼が赤山を囮に使った作戦は、成功すれば情報が手に入り、失敗すれば赤山が死ぬという極めて冷徹な判断だった。だがこれは響陣が“ただ冷たい男”なのではなく、彼自身が大切な人を人質に取られているという事情があるからこそ取った選択であり、後半の伏線にも繋がる。
第5話の時点では視聴者も愁二郎も彼を完全には信用できず、
“味方なのか、敵なのか”
という不安がつきまとう。
この“不気味さ”が物語に深みを与えている。
また、彩八の義兄弟との再会、そして幻刀斎が祭りに現れるという情報を響陣が伝えたことで、京八流編も最終局面に入り始めた。
登場人物の魅力と気になる点——人間ドラマの密度が高まる一方で……
第5話では多くの主要キャラが大きく動いた。
- 愁二郎:家族・双葉を守るために行動し、主人公としての信念が明確化
- 双葉:善意が仲間を救い、物語の倫理軸となる
- 彩八:愁二郎を救い、幻刀斎との因縁に向けて動き始める
- 響陣:最も読めない男として物語をかき回す
しかし、キャラクター数が非常に多く、尺の都合もあって描写が追いついていない部分もある。視聴者の一部からは
- キャラ掘り下げが浅い
- 敵側が記号的
という声も出ていた。
ただ、“退場の早さ”はデスゲームの残酷さでもあり、次が誰かわからないスリルが作品の魅力となっている。
最終話へ向けて——次に待つのは“宿敵との決着”と“国家の闇”
第5話ラストでは川路側が愁二郎の電報を察知し、主人公たちに刺客を差し向け始めた。これは物語が最終局面へ突入した合図でもある。
今後予想される展開は、
- 無骨との再戦
- 幻刀斎との決着(彩八の宿命)
- “9人ルール”の真相
- 大久保利通の運命
- 川路と愁二郎の対決
など、多岐にわたる。
特に川路という“国家権力の象徴”が敵となった以上、愁二郎の戦いは単なる復讐ではなく “時代そのものとどう向き合うか” というテーマに発展していく。
総じて、第5話は人間ドラマ・アクション・伏線のすべてが濃密に詰め込まれた重要回だった。
最終話を前にここまで盛り上がる作品は珍しく、「続きが気になって仕方がない」という声が多いのも納得だ。この勢いのまま、物語がどのような結末を迎えるのか——プロのドラマライターとしても胸が高鳴るエピソードだった。
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