第4話で明らかになった“内通者=三笠署長”という衝撃の真実。

『小さな巨人』第5話は、その推理を「確証」へと変える最終局面を描きます。証拠の欠片、科学の立証、時間制限――。
香坂真一郎(長谷川博己)は、わずかな糸口を掴み、警察という巨大組織の“矛盾と正義の境界”に挑む。芝署編の集大成として、情報戦・物証戦・政治戦のすべてが交錯した、
圧巻のクライマックス「第5話」の全貌を振り返ります。
2017年5月14日(日)夜9時放送のドラマ「小さな巨人」5話のあらすじ(ネタバレ)と5話の感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
ドラマ「小さな巨人」5話のあらすじ&ネタバレ

芝署編の決着となる第5話は、“99%の推理を100%の証拠に変える”ための執念が燃え上がる回でした。
構成は三段階——情報戦、証拠保全、時間制限突破。
内通者の正体は突き止めたものの、「確証がなければ動けない」という組織の壁が立ちはだかる。
香坂(長谷川博己)は、動かない証拠を「動かせる状況」に追い込み、巨悪の手口を暴く罠を仕掛けていきます。
罠は成功、しかし“100%”には届かず
前話の偽情報——「アリサが明朝自首する」という囮作戦は成功し、別荘に現れたのは芝署署長・三笠(春風亭昇太)。
香坂と山田(岡田将生)はその場で対峙し、ついに“内通者の正体”を確信します。
しかし三笠は居直り、「証拠はあるのか」と切り返して去っていく。
真実は見えたが、証拠は掴めない。この“1%の欠落”が、芝署編ラストの焦点となります。
「所轄は待機」——机上に残された“わずかな糸”
小野田(香川照之)は「トップが敵なら情報は漏れる。所轄は動くな」と命令。
香坂は“待機でも動けること”を模索し、資料の洗い直しを開始。
その中で、アリサ(佐々木希)が提出したUSBメモリの異変に気づく。
端が欠けたそのUSBは、転落死した風見京子(富永沙織)の私物。現場で破片は発見されず、鑑識報告もない。
誰かが鑑識前に持ち去ったとすれば、それができるのは三笠だけ。香坂はここに突破口を見出します。
「動かせ」——証拠を動かす“二重作戦”
香坂は、証拠を隠した三笠に“動かざるを得ない状況”を作り出す。
同時に、小野田から隆一(加藤晴彦)の逮捕許可を取り付け、「明朝5時までに決定的な物証を掴む」というデッドラインを設定。
“時間制限付きの証拠奪取戦”が幕を開けます。
香坂たちは、動く証拠を追いながら“動かぬ真実”を掘り起こす覚悟を決めました。
隠された証拠は“警察の心臓”
張り込みの結果、三笠が証拠を「証拠品保管室」に紛れ込ませたことが判明。
5000点を超える証拠品の山の中から、香坂たちは一課の協力も得て“記録にないUSBの破片”を探す総力戦を展開します。
所轄と本庁が肩を並べ、同じ棚を漁る姿はシリーズ随一の熱量。そして午前5時直前、ついに“欠けた破片”が発見される。
科学が語る“高さ”と“血”——USBが繋ぐ事件の線
鑑識の解析で、破片から風見京子の血痕を検出。
さらに損傷状態から、転落現場ビル相当の高さから落下したことが立証される。
この瞬間、USBは“事件現場と同一線上”に結びつき、破片を持ち去った三笠の“証拠隠匿”が可視化されたのです。
池沢菜穂の“最終供述”——真実の連鎖
決定的証拠を突きつけられ、池沢菜穂(吉田羊)はすべてを語ります。
京子のUSBを隆一が奪い、屋上で返還交渉が決裂。
もみ合いの末、隆一が突き飛ばして転落。
のちに勤怠データと監視映像を改ざんし、アリサの偽証でアリバイを構築——。
言葉と物証が、完全に重なった瞬間でした。
真犯人・中田隆一、逮捕
USB破片、鑑識の科学的立証、池沢の供述、そしてアリサの証言。
全ての線が交わり、中田隆一は逮捕される。第2〜3話で積み上げた“アリバイ崩し”が、一点の物証によって“逮捕可能な証拠”へ昇華。
香坂たちの“地の足”が導いた論理の勝利でした。
それでも“巨人”は倒れない——三笠の処分と香坂の異動
三笠の罪は明白。
殺人証拠隠匿・情報漏洩・逃亡幇助という重罪ながら、実際の処分は“異動”という名の温情。
対照的に香坂は、報道リークという“手続違反”を理由に豊洲署へ異動。「正義は通っても、手続は通らない」——この皮肉こそ本作の骨格です。
芝署編はここで幕を閉じ、舞台はいよいよ豊洲署編へ。
正義と組織、その矛盾を抱えた“小さな巨人”の戦いは続きます。
ドラマ「小さな巨人」5話の感想&考察

第5話は、シリーズ序盤で積み上げてきた三つの命題――
① 証拠は“見つける”だけでなく“守る/動かす瞬間を押さえる”もの、
② 99%の推理と100%の証拠の断絶、
③ 組織は倫理と手続の“二枚舌”で動く――
これらをUSBの欠片というたった一粒の物証に集約してみせた回でした。
論理のチェーンが美しく、刑事ドラマとしての完成度が非常に高い一話です。
“動かぬ証拠”に“動く瞬間”を作る
香坂の狙いは、証拠保全の逆算。
三笠が動かざるを得ない外的条件(逮捕状の期限・明朝まで)を設定し、証拠品保管室=警察の心臓部で待ち伏せる。
保管は安全ではなく、同時に“危殆化のリスク”でもある。だからこそ動かす瞬間を押さえる。
この思考の鮮烈さが第5話最大の見せ場でした。時間制限(朝5時)と捜査設計の精度が、刑事ドラマとして極上の緊張を生んでいます。
科学が“最後の1%”を埋める
位置エネルギーが生む損傷、血痕の一致。
物理と法医学が推理を真実へと橋渡しする。人の証言は揺れるが、素材は嘘をつかない。
第2話の「映像は加工できる/だから外部ログで詰める」から発展し、今度は“素材(USB破片)そのもの”を証人に仕立てた。
科学の結果が池沢の供述とアリサの証言を束ね、推理を“法廷で通用する真実”に変えた構成が見事です。
“処分なき処分”の政治
三笠=横滑り、香坂=横滑り。
功罪の帰結が対称なのは、組織が“手続きの安定”を最優先するから。
ここで描かれるのは、正義と悪の対立ではなく、制度そのものの自己保存という冷たい現実です。
小野田(香川照之)は悪ではなく現実主義者。
香坂の成果を認めながらも、“リーク”という手続違反を見逃さない。
「正義への踏み込み」と「規律の担保」の非対称こそ、このシリーズが放つリアリズムの源泉でした。
所轄×一課の“共闘”——現場の矜持が生む熱
5000点の証拠品を、午前5時までに探すという無謀な任務。
所轄と一課が肩を並べ、同じ棚を掻き分ける姿は圧巻でした。普段は対立する両者が、“点数”ではなく“使命”でつながる瞬間。
「同じ棚に手を突っ込む」だけで熱が伝わる――
この一枚絵こそ、“小さな巨人”のタイトルに込められたもう一つの意味、現場の連帯と誇りを象徴しています。
山田春彦=“可変抵抗”の完成形
山田(岡田将生)は、香坂の方法論には付き合うが、評価の流路はあくまで本庁に通す。
彼は悪ではない、評価関数が違うだけ。
成果の帰属先が誰になるかという冷徹な現実の中で、協力と監視のあわいを漂う存在感が際立つ。
第5話でそのキャラクター設計が完成し、次章(豊洲署編)では“どちらに振れるか”という新たな緊張を生みます。
“名推理”では終わらせない脚本の強度
推理で勝たず、“物”で突き刺す。
USBの欠片という小さな一点が、人の嘘・制度の嘘・手続の嘘を貫く錐となる構図。
日曜劇場らしい知的で泥臭い王道を貫いた脚本でした。
理屈で倒すのではなく、現場の汗と科学の作法で突破する――そこにこそ、このドラマの魂があります。
総括——芝署編の学びは“方法論”
芝署編が残した教訓は三つ。
①証拠は“ある→守る→奪う”で初めて意味を持つ。
②99%の推理は悪を揺さぶるが、1%の物証が悪を倒す。
③正義が勝っても、政治は別のスコアで決着する。
香坂は報道リークという代償を背負い、豊洲署へ異動。
次に立ちはだかるのは、さらに巨大な“制度の巨人”。
私としては、ここからの“方法論の進化”にこそ期待しています。
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