母の死をきっかけに壊れかけた阿須田家に、無表情の家政婦・三田灯(松嶋菜々子)が現れてから数日。

第2話では、次男・海斗(綾部守人)が抱える“学校の外の闇”――いじめ問題が浮かび上がる。
「三田さんに頼めば何でもできる」という妹の無邪気な一言が、家の外にまで命令の連鎖を広げてしまう。そして、海斗の口から放たれた「殺してよ」という言葉に対し、三田は迷いなく「承知しました」と答える。
命令をそのまま実行しようとする彼女の姿が、阿須田家に“言葉の責任”を突きつける。
家族が“他人任せ”から“自分たちの選択”へと歩き出す第2話は、命令と倫理の境界線を問う、異様に静かで強烈な回だった。
家政婦のミタ2話のあらすじ&ネタバレ

「秘密」と「指示」――火種は静かに燃え始める
母・凪子を失ってもなお、立て直れない阿須田家。
前夜に「妻は自分のせいで自殺した」と三田灯(松嶋菜々子)へ告白した父・恵一(長谷川博己)は、子どもたちには当面伏せてほしいと頼む。
三田は「承知しました」とだけ答え、完璧な朝食を整える。一方、長女・結(忽那汐里)は「母はなぜ川に?」とこぼし、家族の間に沈殿した“言えないこと”の重さが、朝の食卓にひびのように走っていく。
次男・海斗の「助けて」――いじめは家の外で進行していた
帰り道で三田と出会った次男・海斗(綾部守人)は、妹・希衣の「三田さんに頼めば何でもできる」という無邪気な言葉に背中を押され、胸の内のSOSを飲み込めなくなる。
彼を追い詰めるのは、同級生・古田(大朏岳優)たちによる執拗ないじめだった。やがて古田はおもちゃ店での万引きを海斗に強要。実行役として動いた瞬間、三田が現れ、無言で古田を取り押さえる。
学校に呼び出された恵一は担任の前で事情を聴かれるが、三田は「海斗様からの依頼を遂行しました」と淡々と述べるのみ。海斗の「いじめ」は“証拠がない”の一言で押し流され、恵一の謝罪だけが教室に取り残された。
うららの“正義”は空回り――火に油を注いだ教室介入
心配した叔母・うらら(相武紗季)が「勇気を出せばいじめはなくなる」と教室に乗り込み、檄を飛ばす。
しかし挑発に逆上した古田たちの“帰れコール”で教室は騒然。海斗の靴箱には泥を塗られた上履きと中傷の張り紙が増える一方だった。海斗は「塾だけ行く」と学校から距離を取り始め、孤立は深まっていく。
「殺してよ」――言葉は境目を越える
塾からの帰路、海斗は三田に「責任を取れ。あいつ(古田)を殺してよ」と口走る。
三田は微動だにせず「承知しました」。体育倉庫で待ち構える古田たちはエアガンで三田を撃つが、彼女は怯まず古田の首を締め上げる。
追いついた海斗が「死んだらどうするの!」と叫ぶと、三田は「死んでもかまいません」と即答。
命じられたことは何でもやる――その極端な忠実さを目の当たりにし、海斗は初めて“自分の言葉の重さ”と向き合う。殴られながらも「相手が死んだらもう会えない」と言い続けた海斗に、古田は気圧され、捨て台詞を残して退いた。
「辞めさせません」――父の責任、家の責任
三田の“暴力沙汰”を聞きつけた義父・結城義之(平泉成)が乗り込み、家政婦の解雇を迫る。
しかし恵一は「辞めさせません。この家で何かあったら、それは私の責任です」と静かに言い切る。海斗と希衣も三田の継続を懇願し、家族は初めて“外”ではなく“内”に向かって意思を共有する。
遺書を焼く朝――秘密は家の中で生き続ける
翌朝、恵一は「子どもたちには言わない」と決意し、凪子の遺書を三田に焼却するよう命じる。
その会話を偶然、結が聞いてしまい、母の死が自殺だった事実が長女の胸に落ちる。第2話ラストは、家の中に封じられた「真実」と、それでも動き出した「対話」を並べ、次話への波紋を残して幕を閉じた。
家政婦のミタ2話の感想&考察

“命じる側”の責任――言葉が現実を動かす
第2話を見終えて胸に残ったのは、“命じる側”の責任の重さだった。
三田は「承知しました」とだけ言い、倫理を外に置いて、言葉どおりに世界を動かしてしまう。
だからこそ、軽々しく投げた「殺してよ」という一言がどれほど危ういかを、海斗も、そして私たち視聴者も同時に思い知らされる。体育倉庫で殴られながらも「死んだらもう会えない」と叫ぶ海斗の姿には、復讐の衝動と“関係を壊さないでほしい”という祈りが同居していた。
「承知しました」は鏡――命令の発信源は誰か
三田は“悪を挫くヒーロー”でも“共感で包む賢者”でもない。
彼女は依頼の鏡であり、投げた言葉の痛みを依頼者に跳ね返す装置だ。第1話の川、第2話の体育倉庫――どちらも彼女は自分の正義では動かない。
だから海斗の「殺してよ」が、そのまま本人に突き刺さる。描かれたのは“命令の所在”。子どもの衝動であっても言葉は現実を動かし、その責任は“言わせた環境”にも及ぶ。
うららの正論、現実の迷子
うららの教室介入は善意に満ちていたが、結果は逆効果だった。
「勇気を出せばいじめはなくなる」という正しさは、時に当事者の居場所を奪う。彼女を責めることはできない。だが、“正しさは誰のための正しさか”を問われる瞬間だった。泥まみれの靴箱を前にした海斗の孤独が、現実の痛みとして突き刺さる。
三田の「死んでもかまいません」――無感情の奥の倫理
エアガンを浴びても怯まず、首を締め上げる三田。
止めに入った海斗へ返した「死んでもかまいません」は、一見冷酷だが、むしろ“死”を軽く口にする危うさを暴くための言葉だった。極端な返答によって、海斗は自分の口から出た願いと直面せざるを得なくなる。
三田の感情のない行動は、冷たく見えて誠実でもある。
父の「辞めさせません」――はじめて家に生まれた“主語”
義父に辞職を迫られた際の恵一の「この家で何かあったら、それは私の責任です」という一言が印象的だった。
外に責任を押し出してきた阿須田家に初めて“主語=私たち”が立った瞬間である。
完璧な父ではない彼が、“家として引き受ける”と宣言したその言葉に、ようやく家族の輪郭が生まれた。第2話の静かな転換点だった。
「秘密」を燃やすということ――封印は救いか、爆弾か
恵一は遺書の焼却を三田に命じ、結は偶然それを聞いてしまう。
真実を“燃やす”ことは、短期的には家族を守るかもしれない。しかし、それは“遅延装置付きの爆弾”にも見える。
知ってしまった長女と、知らない3人。その温度差が次の歪みを生む。第2話は、“封印こそが未来の火種になる”という不穏をきっちり残して終わった。
いじめ描写のリアリティ――“証拠がない”の暴力
担任の「いじめなどない」という一蹴。学校という場での“証拠主義”のから回りが生々しかった。
いじめは“なかったこと”にされやすく、被害者に立証責任がのしかかる。だからこそ、海斗が殴られながらも言葉を手放さない場面は、物語の均衡が変わる瞬間だった。三田の反撃ではなく、海斗自身の“声”が状況をひっくり返す。そこに第2話の希望が宿っていた。
余韻――白い上履きが物語ったもの
ラスト近く、泥だらけだった上履きが白く洗い戻されるモチーフも印象的だった。
行為をやり直すことはできないが、汚れは落とせる。三田は慰めの言葉を一切使わない代わりに、“結果”という形で小さな希望を置いていく。
家政婦という職能の範囲でできる最大限の祈り――その静かな美しさに、この作品の品格が宿っていた。

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