第7話「ピュアケンジ」は、シリーズ全体の核心を射抜く回でした。匿名であることの意味、嘘と誠実の境界、そして“誰かを想うこと”の代償と救い。

ハナ(ハン・ヒョジュ)が自らの秘密を暴かれ、壮亮(小栗旬)が彼女を追って海を越える——。
二人がこれまで積み上げてきた〈匿名の優しさ〉が、一度壊れて、名前と名前で繋がり直す物語です。
ここでは、匿名という設計が崩れたその先に見えた“人を愛するということ”を、筆者の視点で丁寧に掘り下げていきます。
匿名の恋人たち7話のあらすじ&ネタバレ

第6話のラストでは、ハナが酔いつぶれた寛(赤西仁)を介抱しようとして、逆に寛に抱き寄せられキスされそうになる現場を壮亮(小栗旬)が目撃するという衝撃展開でした。
それを受けて迎えた第7話では、物語が一気に動き出し、ハナの秘密が明かされる大きな山場となります。
ル・ソベール閉店の危機とマスターズへの挑戦
双子製菓会長の俊太郎から、ル・ソベール(壮亮が新社長を務めるチョコレートショップ)を閉店させる考えを告げられた壮亮は、店を存続させるため世界的なチョコレート大会「ワールドショコラマスターズ」での優勝を目指す決意をします。
しかし、その大会で優勝するためには“匿名ショコラティエ”が作った伝説のボンボンショコラ「ピュアケンジ」が不可欠でした。ピュアケンジは亡き黒岩健二が残した幻のレシピとも言われ、現在は匿名ショコラティエとしてハナが受け継いでいる特別なチョコです。
壮亮は早速ハナに大会出場への協力を依頼しますが、当のハナは自分が匿名ショコラティエであることを同僚たちに隠したままでいることに心を痛めていました。
大会に向けチーム一丸となろうとする中、自分だけが嘘をついている状況に耐えられなくなったハナは、意を決して店長の元美や仲間たちに真実を打ち明けようとします。
匿名ショコラティエの正体発覚とハナの退職
ハナは自分が匿名ショコラティエであることを告白しようとしましたが、なかなかタイミングが合わず言い出せませんでした。そんな中、壮亮の従兄弟で右腕的存在の孝がいち早くハナの嘘に気づき、みんなの前でその正体を明かしてしまいます。
突然のカミングアウトに、壮亮や元美たちは驚きと言葉を失ってハナを見つめます。
店の仲間たちの視線が一斉に自分に注がれ、視線恐怖症のトラウマを刺激されたハナは、その場にいられなくなり店を飛び出してしまいました。
ハナは後日、皆に謝罪の手紙を残し、ル・ソベールを退職する道を選びます。才能あるショコラティエでありながら嘘をついていた罪悪感と、大好きな店のみんなを裏切ってしまったという後悔で、ハナは深く落ち込むのでした。
しかし残されたル・ソベールのスタッフたちは、ハナの不在に寂しさを感じつつも彼女を責める者は誰もいませんでした。
むしろ「チョコレート作りに必要なのは心だ」と元美が力強く語り、ハナが戻ってきてくれることを一同が望みます。
仲間たちは、匿名であっても心を込めてチョコを作り続けてきたハナの情熱と優しさを知っていたのです。
このスタッフの温かい想いがハナ本人に直接伝わる描写はありませんが、彼らの結束とハナへの信頼が感じられる感動的なシーンとなりました。
幻のカカオ探しと壮亮の決意
一方ハナは身を隠すように店を去りましたが、その目的は逃避ではなく“ピュアケンジ”の材料探しでした。
ハナはピュアケンジの再現に不可欠な「幻のカカオ」を求めて単身コイタ共和国へ飛んでいたのです。コイタ共和国はかつて黒岩健二が特別なカカオ豆を発見した地とされ、ハナは健二の足跡を追って極上の素材を手に入れようとしていました。
ハナの行き先に気づいた壮亮は、彼女の身を案じて後を追う決心をします。
その背中を押したのは親友の寛でした。寛は壮亮に対し、「ハナが本当に好きなのは壮亮お前だ」と核心を突く一言を伝えます。第6話では酔った勢いでハナに迫った寛でしたが、彼自身ハナの気持ちがどこに向いているか察して身を引いたのでしょう。
親友から背中を押された壮亮は急ぎコイタへ飛び立ち、ついに現地でハナと再会することに成功します。
幻のカカオの真実とハナの覚悟
異国の地で再会を果たした壮亮とハナは、手分けして幻のカカオを探し始めます。しかし苦労の末に彼らが辿り着いた真実は意外なものでした。
かつて健二が使用していたという“幻のカカオ”は、実は特別な品種などではなく、単に傷んで本来は廃棄されるはずだったカカオ豆に過ぎなかったのです。
拍子抜けする二人でしたが、健二はどんな豆でも工夫次第で最高の一粒に変える職人魂を示していたのでしょう。大切なのは素材そのものより、それに込める愛情と情熱だと悟らされるエピソードです。
この経験を経てハナは吹っ切れたように顔を上げ、「ワールドショコラマスターズに自分も出場しよう」と決意を固めます。匿名ショコラティエ・イ・ハナとしてではなく、素顔のイ・ハナとして世界に挑戦しようという強い意志が感じられます。
壮亮の「サラン」に込めた想い
大会への出場を決めたハナに対し、壮亮はこれまで抑えてきた自分の想いを静かに伝えます。
それは日本語でも英語でもなく、韓国語の「サラン(愛)」という一言でした。
緊張するハナを励まし勇気づけるように、壮亮は「サラン」と優しく囁き、彼女への愛を示したのです。韓国人であるハナにとって母国語で伝えられた愛の言葉は、何よりも心に響いたに違いありません。
互いに人を愛することに臆病だった壮亮とハナが、言葉の壁すら越えて心を通わせたこの瞬間は、第7話のクライマックスとして胸に刻まれるシーンとなりました。
壮亮の真摯な告白を受けて、ハナもまた目に涙を浮かべながら微笑み返します。こうして2人の関係は大きく前進し、物語はいよいよ最終話へと続いていきます。
匿名の恋人たち7話の感想&考察

第7話は物語全体のクライマックスと言える怒涛の展開で、思わず息を呑みながら視聴しました。
ハナの正体暴露から幻のカカオ探し、そして壮亮の愛の告白まで盛りだくさんでしたが、不思議と駆け足の印象はなく、それぞれのシーンがしっかり心に響きました。
ここからは、一視聴者である筆者の目線で、第7話を見終えて感じたことや考えたことを綴ってみたいと思います。
ハナの勇気と孤独:明かされた正体
まず何と言っても、ハナが匿名ショコラティエであると明かされてしまうシーンは手に汗を握りました。
自ら打ち明けようと決心していたとはいえ、孝に突然暴かれてしまった形ですから、ハナの驚きと不安は計り知れません。ずっと人の目を見ることができなかった彼女が、一斉に向けられる好奇と困惑の視線に晒される恐怖は想像以上だったでしょう。
事実、彼女はその場から逃げ出すしかありませんでしたが、その胸中を思うと切なくなります。
ハナは職場の仲間を信頼していたからこそ、自分の正体を打ち明けようとしたのでしょう。
しかし「裏切られた」と感じさせてしまったかもしれない罪悪感や、今まで隠し通してきた秘密が露呈した恥ずかしさで心が押し潰されそうになったのだと思います。
視線恐怖症というハナの抱える痛みが、まさに極限まで突きつけられた場面でした。彼女が店を飛び出してしまったのは残念ですが、「もう戻れないかもしれない」という絶望に襲われていただろうと考えると胸が痛みました。
「チョコレート作りに必要なのは心」仲間たちの温かな支え
そんなハナに対し、店の仲間たちが見せた反応は感動的でした。
普通なら「騙されていた」と怒る人がいてもおかしくないのに、ル・ソベールのスタッフは誰もハナを責めず、むしろ彼女の不在を寂しがり復帰を望んでくれたのです。
特に店長の元美が発した「チョコレート作りに必要なのは心だ」という言葉には、思わず涙がこぼれました。
ハナがどれだけ心を込めてチョコを作り、お客様や仲間に愛情を注いできたかを、一番近くで見ていた仲間だからこそのセリフです。
チョコレートのレシピや技術以上に、大切なのは作り手の真心だというこのドラマのテーマが端的に表れていて、とても胸が熱くなりました。
ハナ自身は退職という選択をしてしまいましたが、仲間たちの気持ちはきっと彼女にも伝わっていると信じたいです。
実際、ハナが幻のカカオを探しに行ったのは、店のみんなの期待に応えたい気持ちもあったからではないでしょうか。
自分を受け入れてくれる場所があるという安心感があったからこそ、一度は店を離れても諦めずに行動できたのだと感じました。
仲間の存在の大きさと、人との絆の尊さを改めて実感するエピソードでした。
壮亮の成長と覚悟にじんときた
第7話で特に印象深かったのは、壮亮の行動力と成長ぶりです。
序盤では父・俊太郎に店を閉めると言われ、一度は絶望しかけた壮亮でしたが、すぐに大会優勝という打開策を見出しました。その背後には、「ハナと出会って自分が変われたこの店を守りたい」という強い想いがあったのでしょう。
潔癖症ゆえ他人に触れられなかった壮亮が、自ら積極的に人と向き合い始めた姿にグッときました。
ハナの秘密が明らかになった場面でも、壮亮は怒りや失望より先に彼女の心配をしていたように見えました。目の前で飛び出して行ったハナを追いかけたい気持ちを必死に抑えていたのではないでしょうか。
その後、ハナが行方をくらましたと知っても決して見捨てず、彼女を追って海外まで飛んでいく行動力には驚かされました。壮亮自身も人混みや他者との接触が苦手なはずなのに、ハナを支えるためなら恐れず行動できるようになっていることに愛の力を感じます。
さらに、親友の寛からハナの本心を聞かされた壮亮が、素直に受け止めて行動に移した点も彼の成長を物語っていました。
第6話までの壮亮なら、もし寛とハナのキス未遂を見たら誤解して拗ねてしまったかもしれません。
しかし今回は寛の言葉を信じ、自らハナの元へ向かったのです。
好きな女性のためにプライドや迷いを捨てて一直線に動く壮亮はとてもかっこよく、頼もしく映りました。
恋のライバル・寛の切ない優しさ
寛とアイリーンの関係にも触れておきたいです。
第6話ではアイリーンから「普通の恋愛は無理」と告げられ傷ついていた寛でしたが、それでもアイリーンが長野に出張と聞けば同行するほど想いは一途でした。
そんな彼がハナにキスを迫ったのは正直驚きましたが(お酒の勢いもあったのでしょう)、第7話ではしっかり身を引いて壮亮を後押ししてくれたことで、筆者は寛の優しさと男気を感じました。
自分も寂しさや恋心を抱えているはずなのに、親友の恋を応援できるなんて簡単なようでなかなかできることではありません。寛自身、アイリーンへの叶わぬ想いを抱え孤独なはずですが、彼の存在があったからこそ壮亮とハナは再び結ばれる方向へ動き出せたのだと思います。
恋のライバルでありながら憎めない寛のキャラクターに、切なくも暖かい気持ちになりました。今後アイリーンとの関係もうまくいってほしいと願わずにはいられません。
「サラン」に込められた愛の重み
壮亮が紡いだ「サラン」という言葉は、たった一言なのにものすごい破壊力でした。日本人の壮亮があえて韓国語で愛を伝えたことに、筆者は思わず胸が高鳴りました。
普段クールで不器用な壮亮が、ハナの母国語という一番ストレートに響く方法で気持ちを伝えるなんて反則です。
言葉の選び方にも彼の真剣さと優しさが表れていて、「この人は本当にハナを大事に想っているんだな」と強く感じました。
ハナも驚きつつ、本当に嬉しそうに笑っていて、その表情がまた愛おしかったです。
長らくもどかしい距離感が続いていた2人でしたが、このシーンで一気に心が通じ合ったように見えました。まさに視聴者の筆者まで抱きしめられたような温かい気持ちになれる告白シーンで、第7話一番の名場面だと思います。
ラブストーリーとしての魅力と今後への期待
ネット上では一部に「もっとベタベタな甘いロマンスを期待してたけど全然違った」といった声もあるようです。
確かに、小栗旬さんとハン・ヒョジュさんという華やかな顔合わせから想像する王道ラブストーリーとは一味違い、トラウマや心理描写に重きが置かれた大人の恋物語になっています。
また「8話に内容を詰め込みすぎて薄っぺらく感じる」という指摘も耳にしました。しかし筆者自身は、第7話まで観てこのドラマの丁寧な心情描写とテーマ性にすっかり引き込まれています。
確かに展開はスピーディーでしたが、その分無駄なシーンがなく登場人物それぞれの感情が凝縮されていたように感じました。
特に今回のハナと壮亮の関係深化は見応えがあり、「人に触れられない男」と「人と目を合わせられない女」という2人の克服すべき課題が、愛情によって少しずつ乗り越えられていく様子に胸を打たれました。
最終話を前にして、壮亮とハナがしっかり想いを通わせたのは本当に良かったです。これで心置きなくマスターズの舞台に挑めますし、きっとハナなら仲間たちの期待に応えて素晴らしいチョコレートを作ってくれるでしょう。
寛やアイリーンといったサブキャラクターたちの行方も含め、ハッピーエンドに向けてラストがどう描かれるのか楽しみでなりません。
第7話は涙あり胸キュンありの大満足な内容でしたので、最終8話でどんな甘い結末が待っているのか、期待と寂しさを感じつつ見届けたいと思います。
匿名の恋人たちの関連記事
匿名の恋人たちの全話ネタバレと原作についてはこちら↓



コメント