前話では、弁護士・六反田を追い詰めた浩一が、“二科の傘”の外側へと矛先を伸ばした。

第3話では、いよいよ復讐が“制度の入口”──警察へと踏み込む。
かつて父を“殺人犯”に仕立てた刑事・三輪との再会。
浩一は、嘘を積み重ねることで真実を暴くという逆説の方法で、30年越しの報復を仕掛けていく。しかし、その嘘の先に待っていたのは、罪と愛情が入り混じるひとりの父の告白だった。
“嘘はいけないよ”という言葉が、再び心を刺す――倫理の境界が揺れる一話である。
2017年1月24日(火)夜9時スタートの新ドラマ「嘘の戦争」3話のあらすじ(ネタバレ)と感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
ドラマ「嘘の戦争」3話のあらすじ&ネタバレ

第3話のサブタイトルは「嘘の強要 刑事に30年分の復讐」。
ターゲットは、30年前に“父の無理心中”という偽りの筋書きを作り、9歳の少年・陽一(=のちの浩一)に「お父さんがやったと証言しろ」と強いた担当刑事・三輪郁夫(六平直政)。
第1〜2話で五十嵐・六反田を倒した浩一は、いよいよ“制度の入口”に刃を向けます。まずは全体の骨子から。
三輪を“持ち上げてから落とす”──公園の爆発騒ぎ
序盤、三輪は休日の公園で子どもたちに空手を指導中、ベンチに置かれたバッグの中に時限爆弾を見つけます。
周囲を冷静に避難させ、自らバッグを噴水へ投げ込み、直後に爆発。負傷者はゼロ。
現場映像はネットに拡散し、三輪は一躍“正義のヒーロー”に。だがこれは、褒めたあとで叩くために浩一が仕込んだ“序の口”でした。
偽名「一色祐一」と“娘・沙織”──同情の導線を張る
浩一は「一色祐一」と名乗り三輪に接近。
ハルカ(水原希子)を“妻役”に据え、「1歳の娘・沙織がいる」と語り、三輪の心に“引っ掛かり”を残します。やがてわかるのは、三輪にも“沙織”という名の娘がいたという事実。浩一はこの偶然を“大きな同情”に変換していきます。
携帯すり替え→“盗撮魔”の汚名──信用を奪う第一手
一緒に飲みに出た帰り、浩一はカズキ(菊池風磨)に三輪の携帯をすり替えさせ、少年たちの着替え写真が入っているように偽装。
携帯は新聞社に匿名で送りつけられ、さらに「爆弾騒ぎは自作自演では?」という噂も流布されます。ヒーローから一転、三輪は“倫理を欠いた中年警官”へと貶められました。
眠らせない張り込み→記者への暴力──判断を鈍らせる第二手
「逮捕したストーカーの逆恨みだ」と“味方のふり”で寄り添う浩一は、徹夜の張り込みに三輪を付き合わせ、“睡眠負債”で判断力を削っていきます。
疲労困憊の三輪は、追い回してきた週刊誌記者に手を上げてしまう。その瞬間をしっかり撮られており、社会的信用は崩落。浩一の“配置した嘘”が、次々と現実を動かしていきます。
エスカレーターの罠──「嘘はいけないよ」の記憶が甦る
止めを刺す仕掛けは、商業施設のエスカレーター。ハルカが“被害者”を名乗り、「この人に盗撮された」と警備員の前で三輪を糾弾。三輪の携帯からは、当然“盗撮画像”が“発見”されます。
警備員が放った「嘘はいけないよ、あんた」という一言で、三輪の脳裏に30年前、少年に向けて自分が吐いた言葉が蘇る。柱の陰に身を潜める浩一を見つけ、「あの少年=一色祐一」だと繋がる瞬間です。
“三輪の嘘”の理由──娘・沙織と心臓移植の約束
三輪が崩れ落ちる中、二科隆(藤木直人)は楓(山本美月)を同席させて浩一を呼び出し、三者の関係を暴こうとします。
そこへ入ってきた三輪は、隆の思惑を裏切り、「この人には会ったことがない」と言い張ります。
続けて、30年前に偽証を強いた理由を自ら告白。
生まれつき心疾患の娘・沙織に“アメリカで心臓移植させる”という二科の約束があり、そのために罪を犯したのだと。しかし手術は間に合わず、沙織は1歳で亡くなった——三輪は「これは自分の報いだ」と涙ながらに頭を下げます。
楓との急接近、晃の“容認”、隆の不信──二科三きょうだいの温度差
一方、晃(安田顕)は浩一を“まともな人間”として見ようとし、「楓と真剣に向き合うなら応援する」と受け止める懐の深さを見せます。
浩一も「結婚を考えている」とまで言い切り、楓との距離はさらに近づく。
対照的に隆は、浩一の周辺で関係者が連続破滅している状況から疑念を深めます。“善意の長男/倫理の長女/統治の次男”という温度差が、物語を立体化させていきます。
結末──「嘘は許されない」のブーメラン
三輪はかつて「嘘はいけない」と少年に言いながら、最も重い嘘で彼を追い込んだ張本人でした。
だからこそ最後は、自分の嘘を真っ向から引き受けることで、浩一を庇う嘘を選ぶ。
復讐の手を緩めない浩一ですが、“嘘の負債”を背負った大人の顔を、ほんの一瞬だけ見つめ返す——第3話はそんな余韻で幕を下ろします。
ドラマ「嘘の戦争」3話を見た後の感想&考察

第3話は、「嘘の配置」と「赦しの形」が正面衝突する回でした。
手口の華麗さはいつも通りながら、三輪の“告白”がもたらす倫理の重さが深く刺さります。以下、いくつかの軸で掘り下げます。
メディア心理を踏んだ“持ち上げて落とす”の圧力
ヒーロー化から不祥事露呈へ——“期待の裏切り”は社会的制裁を最大化する装置です。
先に“共同体の信任”を与えておくことで、裏切られた側の怒りは倍増する。爆弾でのヒーロー演出、携帯の仕込み、徹夜の張り込み、エスカレーターでの糾弾。全工程が“感情の高低差”を作るための配置になっており、詐欺=設計のドラマとして見事でした。
三輪の“悪”は個人か、構造か──「家族の救済」と「正義の逸脱」
三輪は最悪の嘘で少年を壊した。しかし彼は、心疾患の娘を救いたい父でもあった。
権力者が医療の“希望”をちらつかせ、警察の良心をねじ曲げる——この構図は個人の堕落を超えた構造の悪でもあります。断罪しきれない後味は、個の倫理と制度の歪みが正面衝突した結果でした。
「嘘で触れる恋」の危うさ──楓という“秤”
楓は医の倫理で世界を見る人。浩一は復讐の規範で世界を動かす人。
第3話での“結婚まで視野”という発言は、ふたりの間に“嘘でできた階段”をもう一段積み上げました。楓のケアのまなざしが、いつしか浩一の“嘘の副作用”を映す鏡になる。この恋は、物語の感情的コストを最終盤で回収するはずです。
“庇う嘘”と“傷つける嘘”──ブーメランとしての言葉
エスカレーターでの「嘘はいけないよ」は、三輪自身へのブーメラン。
少年に向けた“躾の言葉”が、年月を経て自分へ返ってくる。ラストで三輪が選んだ「この人は知らない」という嘘は、誰かを救うための嘘でした。嘘の質の違いを具体的な行為で示した脚本の緻密さに唸ります。
二科三きょうだいの“温度差”が物語の呼吸になる
隆=統治、晃=善意、楓=倫理。この三方向の張力が、浩一の“侵入角度”を毎回変える。
第3話は、晃の容認で楓線を温め、隆の不信で緊張を上げる回でした。以降、隆のカウンターは確実に厳しくなる。“統治の言語”で戦ってくる相手に、浩一はどんな“設計”で応えるのか——期待が高まります。
第2話との対照──“記録で締める”から“印象で崩す”へ
第2話はテープという“記録”で勝ち切る章。第3話は“印象”を積み上げて信用を崩す章です。証拠の硬度と世評の熱量、二種類の武器を連続配置することで、復讐劇が一面的な必殺物語にならない。「嘘は量ではなく配置」というこのシリーズの作法が、より鮮明になりました。
次話への布石──“大学生OL殺し”の政治線へ
三輪の告白は、30年前のOL殺害に関する政治・財界の線を太くしました。
ここから四条(代議士)や九島(銀行)側へ踏み込むのが次章の射程。“二科の傘”の外に広がる利害の環とどう対峙するのか。浩一の“詐欺の設計力”が、次回さらに試されることになります。
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