ドラマ「小さな巨人」の7話が終了しましたね。

第8話は、豊洲署編を一気に“臨界点”へ押し上げる怒涛の展開だった。
富永を追い詰めたはずの香坂の前に突きつけられる“新証拠”、横沢確保をめぐる所轄と一課の静かな綱引き、そしてラスト数分の横沢&山田の同時消失。
シリーズの標語「敵は味方のフリをする。」が最も強烈に機能し、真相のベクトルが180度ねじれる衝撃回だった。
2017年6月4日(日)夜9時放送のドラマ「小さな巨人」7話のあらすじ(ネタバレ)と8話の感想を紹介していきます。
※以後ネタバレ注意
ドラマ「小さな巨人」8話のあらすじ&ネタバレ

豊洲署編は、一気に“盤面の総仕上げ”へ突入。
第8話は、早明学園の不正を追う香坂(長谷川博己)が、江口殺害の真犯人=富永(梅沢富美男)説を論理的に突きつけながらも、手続と政治という“二枚舌”に翻弄される回でした。
所轄は表向き「一課の方針」に飲み込まれるものの、香坂は“情報を動かせば、人も動く”という戦術に舵を切り、ついに“鍵”を握る横沢(井上芳雄)を視界に捉えます。
しかしラスト数分で、取調室から横沢が消え、山田(岡田将生)も忽然と姿を消す――シリーズ標語「敵は味方のフリをする。」が最大濃度で画面に降り注ぐ、衝撃の幕引きでした。
釈放の理由――“新証拠”という切り札と、手続の壁
第7話の末尾で“富永=真犯人”の輪郭を掴んだ香坂。しかし一課長・小野田(香川照之)は、富永の任意同行→即・釈放の采配を下します。
理由は、早明学園の裏口カメラ映像という“新証拠”。そこには事件当夜、横沢が業者の搬入トラックに潜り込み現場から逃走する姿が映っていました。さらに映像には、学生たちが大麻を吸う様子と、警察幹部の息子の姿も写っており、学園側がこれまで提出を渋っていた理由にも説明がつく構図。
もっともらしい“新証拠”が提示されたことで、富永の疑義は押し流され、焦点は再び横沢へと回帰していきます。
一課の方針転換――「殺人の捜査に集中」。所轄も本部合流へ
小野田は横沢を江口殺害の容疑で改めて指名手配し、捜査一課を再稼働させます。
所轄・豊洲署へも「まず横沢を捕まえろ」という一本化したゴールが示され、現場は“手続”のレールに沿って動員されていく。
表向きのストーリーだけ見れば、筋は通っている。しかし、その“滑らかさ”そのものが香坂には引っかかる――第8話の緊張はまさにここに宿ります。
亜美を“鍵”に――囮作戦と“偽リーク”戦術
どこに潜伏しても、横沢が最終的に妻・亜美(中村アン)へ接触するのは確実――その読みで、香坂は祐里(芳根京子)を亜美の見張りに配置し、さらに「横沢以外の新容疑者が浮上した」という偽情報をマスコミに流します。
狙いはただ一つ、横沢の警戒心を解いて“会いに来させる”こと。所轄と一課が連携し、豊洲エリア一帯で包囲網が敷かれていきます。
初回接触の失敗――“情報漏洩”の影が忍び寄る
読みは当たり、横沢らしき送信者から亜美へ再会のメールが届きます。
ところが待ち合わせ場所には誰も現れず、配置が読まれていることが判明。警察内部から情報が漏れているとしか考えられない状況に――ここで香坂は、シリーズの象徴である“敵は味方のフリをする”を、学園側だけでなく警察内部へ向け直す覚悟を固めます。
祐里が下した“わざと騙される”判断
二通目のメールが届いた際、祐里は亜美が“自分のスマホ”を使って横沢とやり取りしていることに気づきつつ、あえて気づかないふりをして同行。
実は祐里の端末は香坂へ自動転送される設定になっており、「逮捕する前にまず会わせる」という香坂の意図とぴたりと噛み合う作戦でした。
冷たい捜査の中にも、二人の“会わせてあげたい”という温度が宿っていることが胸を打ちます。
“会わせてから捕る”――温情と合理を両立させた一手
祐里の判断が奏功し、横沢と亜美は再会。香坂は二人の時間を確保しつつ、周辺を固めていきます。
横沢自身も出頭を決意。
しかし、そこへ捜査一課の部隊が乱入し、“横取り”の形で横沢を連行してしまう。所轄と一課の静かな綱引きは、この瞬間いったん“一課優勢”で決着します。
同期・藤倉の一手――横沢は豊洲署に“戻される”
ただし、ここで終わらないのが同期の矜持。
藤倉(駿河太郎)の計らいで横沢は豊洲署に引き渡されます。現場の空気を知る人間が一課の中にもいる――その小さな温度差が、物語を次へと押し上げる“酸素”になっていました。
取調室の“空白”――横沢と山田が同時消失
いよいよ横沢から裏帳簿の所在を聞き出すはずだった矢先。
香坂がわずかに席を外した数分の間に、横沢は取調室から消え、見張りだったはずの山田も同時に行方を絶ちます。
出来すぎた同時消失。“内部にもう一人内通者がいる”という疑念が最高潮に達し、「山田なのか?」という問いを残したまま第8話は幕を閉じます。
シリーズ屈指のクリフハンガーが炸裂した瞬間でした。
ドラマ「小さな巨人」8話の感想&考察

第8話は、“法的整合”と“物語上の正義”が徹底的に噛み合わないまま疾走していく、そのスリルが最高に面白い回でした。
証拠(監視カメラ・DNA)という“硬いログ”も、置かれ方・提示される順番によって意味が180度変わる。そして香坂は、“証拠を集める”のではなく“証拠が語れる状態を設計する”ことで歪んだ流れを修正しようとする。以下、論点を7つに整理します。
1|“新証拠”は何を正当化したのか──富永釈放のロジック
学園裏口カメラ映像は、横沢が現場にいたことを補強し、富永釈放の“法的根拠”となりました。
しかも警察幹部の息子が映っていることで提出が遅れた説明にもつながり、手続上は理路整然。しかし、“誰が・どのタイミングで・何のために出した証拠か”という文脈で見れば不自然さは残り、富永という提出者の属性が物語を濃くする部分です。
2|「まず横沢を捕まえろ」──最短であり最悪の袋小路
殺人の容疑者を捕まえることが優先、という一課の主張は正論です。
しかし横沢は「学園不正を暴こうとしていた側」の人間。裏帳簿の所在を知りうる貴重な証人でもある。捕まえる順序と話を聞く順序が逆になるだけで、情報の流路は閉じる。
香坂の「会わせてから捕る」は、情ではなく理にかなった刑事の判断でした。
3|偽リーク×囮作戦──香坂メソッドのアップデート
芝署編でのリーク戦術が、より精密にアップデートされて再登場。
“世間”を動かすリークから、“一人の心理”を狙い撃つリークへ。情報→人物→現場という順序を香坂が設計することで、動けない状況を突破する。
“情報は行動を誘発する装置”であることを改めて証明した回でした。
4|祐里の“わざと騙される”判断──所轄の現場美学
祐里が亜美の作為に気づきながらあえて騙される姿は、本作が持つ“現場の間(ま)”の美しさでした。
規則通りに固めれば二人は会えない。
だが、背後で香坂へ転送できる設定にしておくことで、人への温度と捜査の合理性を両立させる。こうした選択に“所轄の矜持”が宿っていると感じました。
5|藤倉の“橋渡し”──組織の中の体温
横沢を豊洲署へ戻した藤倉の判断には、同期としての矜持が漂っていました。“組織のルール”と“現場の体温”のズレをほんの少しだけ埋める橋。これがなければ第8話の緊張は“閉じた世界”になっていたはずで、藤倉の存在は物語の酸素でした。
6|“消失”の真意──裏切りか、忠義か
横沢と山田の同時消失は二つの可能性を提示します。
- A:山田=内通者説
横沢逃走の導線をすべて握っていた線。 - B:山田=独自捜査説
裏帳簿へ向かうため、正規手続を外れ“保護”した線。
どちらに転んでも、“敵は味方のフリをする/味方は敵のフリをする”というシリーズの主題に沿う。疑いと信頼が揺れ続ける構図が、第8話の緊張を最大化していました。
7|総括──レールの上を歩きながら、レールの外側を設計するドラマ
第8話の香坂は、手続のレール(新証拠→釈放→指名手配)から外れずに、レールの外側(偽リーク、再会の設計、人情の余白)を構築しました。
「100%の証拠」だけでは勝てない時、「情報の順序」を設計することで行き止まりを突破する。芝署編で得た学びが、制度スケールの戦いへとそのまま拡張された回でした。
次回は、
- 横沢の口
- 裏帳簿の現物
- 山田の真意
この三点が“可視化の臨界”をつくるはずです。
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